【完結】君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

みやこ嬢

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本編

第3話:自覚が無さ過ぎる男

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 育児に無関心かつ不参加だった謙太けんたは奥さんに見限られ、家出された。これは完全に自業自得である。しかし、一歳に満たない赤ん坊を置いていくとはどういうことなのか。

 寝室にあるベビーベッドに子どもを寝かせ、隣のリビングで再度聞き取りをする。

寧花ねいかさん、専業主婦だったっけ」
「うん」
「じゃあ昼間、保育園とかは」
「通ってないと思う」

 謙太はまったく当てにならない。
 許可を得てから龍之介りゅうのすけは部屋を漁った。目立つ場所に母子手帳ケースを見つけ、中を確認する。



雨戸 陽色あまと ひいろ



 これが子どもの名前だ。
 母子手帳を見れば、陽色は現在生後八ヶ月の男児であり、謙太が我が子の月齢すら正確に把握していないということが判明した。

 以前、龍之介がこのマンションを訪れたのは出産祝いを渡すためだった。当時のふたりは初めての子育てに悪戦苦闘していて、でも幸せそうだった、と思い出す。
 あれからたった数ヶ月後にこうなるとは当事者の誰も予想していなかっただろう。

「とにかく、ケンタは明日仕事休め」
「え、でもオレ明日は大事な会議があr」
「おまえは馬鹿か? 仕事と子ども、どっちが大事だと思ってんだ、ああ???」
「そ、そりゃ勿論子どもも大事だけどさ、でもオレがクビになったら路頭に迷うじゃん? それに、寧花だって子ども置いてくなんて育児放棄ってヤツじゃね? 母親なのに」
「……はぁ~~~……」

 龍之介はここに来てから何度目かの溜め息を洩らした。

 やはり駄目だ。ここまで来て完全にまだ理解していない。寧花の捨て身の意思表示は謙太に全く伝わっていない。

「おまえ、なんで寧花さんが子ども置いてったと思う?」
「わかんねーよ。急だったし」
「本当に急か? おまえ、男は仕事してりゃ子育てしなくていいと思ってないか? 嫁が専業主婦だからって子どもが出来る前と全く同じ生活が送れると思うなよ!!」
「……ッ」

 龍之介からひと息に叱り付けられ、謙太は見るからに落ち込んだ。
 明日からどうしたらいいか、そもそも今晩だって乗り切れるかどうか分からないから謙太は龍之介を頼った。

「おまえが一時間もしないうちに音をあげた子育て、今まで寧花さんは一人でやってきたんだぞ」
「……そりゃ、母親だから」
「今世紀最大のクソ馬鹿野郎か? 女には自動で育児機能が携わってるとでも? 寧花さんだって初めての育児で必死になって情報集めて頑張ってたんだよ! 見ろ」

 バン!とローテーブルに置かれた雑誌や本の山を見て、謙太は目を見開いた。
 それは育児関連のものばかりで、至る所に付箋が貼られていた。どれもページの端がヨレている。何度も何度も読み返された証だ。リビングの隅に置いてあったものを龍之介が見つけたのだ。

「…………オレ、どうしたら」

 少しは反省したのだろう。
 目の前の育児雑誌をぱらぱらと捲りながら、謙太は弱々しい声で呟いた。

「とにかく明日は仕事休め。な? 会社に事情を説明すりゃ一週間くらい休めるだろ。その間に寧花さんに謝って戻ってきてもらうかどうにかして……」
「う、うん」
「じゃあ俺は帰るから。しっかりやれよ」

 そう言って龍之介が立ち上がると、謙太は慌ててその脚に縋り付いた。

「帰んの? この状況で?? 嘘だろ???」
「当たり前だろ」
「夜中に陽色が起きたらどーすんだよ!」
「は?」
「朝メシなに食わしていいかもわからん」
「はあぁ!??」

 こうして、なし崩しに龍之介は謙太のマンションに泊まることとなった。
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《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。
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