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最終章 その後の話
104話・会いたい
しおりを挟む異世界から元の世界に送還された勇者一行は、それぞれの自宅で意識を取り戻した。即座にテレビや携帯電話で日時を確認する。
──再召喚された日、時間に戻っている。
諒真は急いでSNSのトークルームにログインした。
もしかしたら今までのことは全て長い夢だったのでは、などという気持ちも心のどこかにあった。四人のアイコンがアクティブ状態になるのを見て、ホッと息をつく。
『みんな家に帰れたか?』
『だいじょーぶ!将子はー?』
『私も無事よ。部屋にいるわ』
『僕もです。良かった、うまくいきましたね』
召喚の逆、送還魔法を使ったのは諒真と創吾だ。ふたりの転移魔法と空間魔法を合わせ、ぶっつけ本番で発動したのだ。教皇のサポートできちんと時間も巻き戻っている。おかげでこちらの生活に支障は出ない。
『大聖堂が壊れたらオレたちの能力も消えるんだよな』
『ルノー様がそう言ってたね』
『こんな能力あっても仕方ないもの』
『元に戻るだけですから、すぐ慣れますよ』
勇者一行の能力は大聖堂で集めた信仰心を魔力に変換して付与されている。はるか昔にルノーが作った仕組みだが、もう再現出来ないらしい。異種族がたくさん居た時代の失われた技術なのだろう。
『あーあ、また会えなくなっちゃうね』
由宇斗の言葉に諒真の胸が痛む。
四人の居住地は離れており、易々と行き来できるような距離ではない。
由宇斗は滋賀県。
将子は宮城県。
諒真は愛知県。
創吾は佐賀県。
初めて異世界に召喚されるまで互いの存在すら知らなかったのに今は違う。様々な苦難を共に乗り越えた、かけがえの無い仲間だ。
しかし、それぞれ生活があり、元々の交友関係がある。どんなに大切な仲間でも共に過ごすことが出来なければ疎遠となり、次第に記憶も薄れていく。
『寂しくなるな』
諒真がぽつりとこぼした言葉に、他の三人はしばらく無言となった。なんだか居た堪れなくなって話題を逸らそうとするが、その前に返事がきた。
『俺も寂しい!離れるのヤだよ!』
『SNSが無かったら泣いてたわ』
『僕も寂しいです』
四人の気持ちは同じ。例え能力が消え、異世界での冒険が遠い昔の話になっても、家族や友だちとは違う絆で結ばれている。
明日も学校や仕事がある。
こまめに連絡を取り合うことを約束し、取り敢えずトークルームからログアウトした。
諒真の目に涙が浮かび、スマホの画面が歪んで見えなくなった。手の甲で雑に涙を拭う。
「……はは、やばい。泣けてきた」
体内の魔力もそのうち消える。勇者一行を送り出した後、教皇ザクルドの命が尽きれば大聖堂どころか聖都ハイドラが崩落し、勇者一行に付与された能力は使えなくなる。
再召喚前、魔王の呪いがあると信じていた頃は三日に一度は創吾の元で過ごした。魔力過多に苦しみ、発散させるために苦労をしたが、楽しさのほうが勝っていた。
支えてくれる存在が居たからだ。
「……ッ」
両手で顔を覆い、諒真はその場に蹲った。
あれほど望んだ元の世界への帰還が叶ったというのに、凄まじいほどの喪失感に襲われ、涙が止まらなくなる。
「り、諒真くん……?」
すぐ側で創吾の声が聞こえた。
トークルームのログアウトが出来ていなかったのか、スピーカーがオンになったままだったかと焦って顔を上げると、目の前に創吾の姿があった。驚きと戸惑いの表情を浮かべ、蹲る諒真を見下ろしている。
「あ、……えっ?なんで?」
「さっき君が急に現れたんですよ。転移してきたんですか?」
「いや、そんな覚えは──」
周りを見回すと、そこは諒真のアパートの部屋ではなく創吾のマンションのリビングだった。無意識のうちに転移魔法を使い、創吾のところに来てしまったのだろう。
諒真は涙を拭い、慌てて立ち上がった。
「ご、ごめん。すぐ戻る!」
魔法の発動を創吾が阻んだ。室内の空間を僅かに歪め、転移できないようにする。
「せっかく来てくれたんですから、急いで帰らなくてもいいじゃないですか」
「う、でも」
「こんなに泣いて。目が赤くなってますよ」
す、と指先で目元をなぞり、創吾は諒真の涙を拭った。
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