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第13章 大聖堂の真実
95話・揺らぐ信仰
しおりを挟む平伏するリエロ、ハルク、イルダートに、諒真が呆れたように溜め息をつく。
ハイデルベルド教国で最も尊い存在である教皇が目の前にいるのだ。大聖堂を守る聖騎士団に所属し、敬虔な信者でもある彼らが膝をつき、頭を垂れるのは当然。
だが、いつまでもこうしていては話が進まない。
「由宇斗と将子は?」
「それが、リョウマ殿が転移された後すぐに大司教さまが姿を消されまして、お二人は追い掛けていってしまわれました」
「それで仕方なく我らだけがこちらに……。団長は後から地下に来られると思います」
「そっか……」
答える間も三人は頭を下げたままだ。
エルヴィダは年配の女性だ。高位貴族の出で聖騎士団の団長位に就いているが、前線には出ない。ハルクたちのように走ってくるような体力はないのだろう。
「逃げられたなら仕方ないな。説得も無理だったし、色々協力してもらったのに悪い」
「いえっ、我らは頼まれたことも出来ず……申し訳ない」
「謝んなくていいってば!」
エルヴィダの足止め失敗を悔い、ハルクが項垂れている。こればかりは彼女が上手だっただけだ。
「それより、今後どうするかが重要だ」
大司教ルノーとは分かり合うことが出来ない。
原初の竜を盲信し、他の存在が崇められることを忌み嫌い、他の宗派を毛嫌いしている。新たな魔王が生まれたら他国の神殿を潰すと言っていた。放置できない危険な存在だが、不死身ゆえに倒すことは不可能。
諒真たちの望みは全員で元の世界に戻ること。
しかし、唯一召喚魔法が使える教皇は身体が弱り切っていて、もう次元を渡るような大魔法は使えない。勇者一行のうちの誰かが教皇位を継げば召喚魔法が使えるようになるが、教皇となった者は大聖堂に残らねばならない。教皇がいなくなれば聖都ハイドラが壊滅するからだ。
しかも、教皇と同時に魔王が誕生してしまう。今はともかく数十年後に再び暴れ回り、人々の暮らしを脅やかす存在となる。
誰かひとりを犠牲にしても、異世界の平和は百年も保たない。同じことを繰り返すだけで何の意味もない。
ざっくり事情を説明し、教皇からも事実であると証言してもらう。全てを聞いたハルクたちは、ただただ呆然とするばかりだった。
「わ、我らは一体どうすれば……」
「しかし、このままでは聖都が」
大聖堂に寄せていた信頼と忠誠心が揺らぎ、ハルクとイルダートは動揺を隠せない様子だった。
原初の竜が悪いのではない。信仰を集めるために魔王と教皇を生み出し、約百年ごとに魔王討伐というイベントを繰り返してきたルノーこそが諸悪の根源。そうは言っても尊敬していた聖職者を急に憎むことなど出来ず、ふたりは心を悩ませた。
「とにかく、リョウマ様たちにこれ以上犠牲を強いることには反対です!そもそも、こちらの世界とは無縁なのですから、リョウマ様たちは元の世界に戻ることだけをお考えください!」
強い口調でリエロが訴えた。
諒真と離れたくない気持ちはあるが、もし異世界に残れば自由はない。大聖堂に囚われたまま余生を送る羽目になってしまう。目の前に横たわる教皇……先代勇者一行の魔法使いザクルドのように。
「寂しいこと言うなよ。知恵を出し合って最善策を探そう。な?」
「リョウマ様……」
リエロの肩に手を置き、笑顔を見せながらも、諒真はこれから何をすべきなのか分からずにいた。
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