136 / 151
反省
しおりを挟む
「まさか、本当に十二支獣を倒してしまうとは……」
「ワン!!」
「やめてくれ……倒したのは1番下っ端だし、牛には手も足も出なかった……あれだけ大口を叩いておきながらこのザマだ」
「いえいえ……こちらからすれば、鼠だけでも倒してくれるだけで大金星ですよ!! これはそのお礼、1000万です……どうかお納めを」
「ああ……」
次の日、俺は黒スーツに会いに行くため、できるだけ人目の少ない喫茶店に集合場所を決めた後、ブラックを連れて黒スーツと落ち合っていた。
「さて、こちら側の話はこれで以上になりますが……何か聞きたいことはありますか?」
「ああ……まぁな」
俺はただ、黒スーツに報酬をもらうために会いに来たわけでもない。しっかりと聞きたい事もある。というか、それがメインと言ってもいい。
「俺は今回、大阪本部に乗り込んだわけだが……俺が狙われる可能性はあるか?」
この質問。この質問の答えによって、俺のこれからの生活が大きく変わってくる。
正直、足音が聞こえたあの日から、嫌な予感が消えないのだ。オカルト染みた話だが、予感と言うのは、意外にもよく当たる。さすがの俺でも、予感は対策できない。
俺にできるのは、この予感が外れていることを願うだけだ。
「……申し訳ありませんが」
しかし、俺の願いは。
「狙われないと言う保証はありません」
無情にも、届く事はなかった。
「…………」
「申し訳ありません……任務を受けてもらった方には、こちら側でできるだけの個人情報のブロックをさせてもらっているのですが……だからといって、狙われない保証は無いかと……」
「……そうか、悪かったな。変なこと聞いちゃって」
俺は黒スーツの回答に対してそう答えると、足早に会計を済ませ、喫茶店を出た。
(まずいことになったな……)
いくら"千斬"が大きな闇サイトだとは言え、相手は名高い大派閥の一角である大阪派閥。いくら個人情報を守った所で、何らかの手段でばれるのがオチだろう。わかっていた事だが、興味を持たれない事を願うしかない。
(こんなことになるなんて……)
調子に乗っていたのだ。東京と神奈川といった大阪に負けずとも劣らない大派閥の手からくぐり抜け、用心すると考えていても、自分の心のどこかで、「何とかなる」と考えてしまっていたのだ。
今思えば、ただ特訓になると言う事だけで大阪本部に乗り込むなんて、昔の俺なら絶対にしない行為。
駄目だ。いくら反射を手に入れたところで、他のスキル保持者とはスキルを持っていた年数が違う。自分のスキルへの開拓が既に済んでいるのだ。それに比べれば、俺はまだまだ劣等。自分のスキルへの理解もまだ足りていない。
自分はまだ弱いと、頭の中に刻み込まなければ。
しかし、やってしまった事はやってしまった事。自分の過ちを認め、次のステップに進まなければならない。
(できれば、できるだけ大阪にはいたい……とりあえず、何かしら異常が起きない限りは大阪にいてもいいだろう。
しかし、問題は異常が起きた後の話だ……)
そう、起きた後の話。問題はそこなのだ。
(さすがに相手も大阪派閥……マンションを十二支獣で襲撃するなんて、人に見られれば話題になるような事はしないだろうが……だとすればどういう可能性がある? 人質? それとも不意をついての拉致で自分たちの陣地に引き込んで、見られないように殺す事も考えられるな……)
広がる無限の可能性。無限の可能性と聞くと、良いことのように聞こえるが、なんとあら不思議。今この状況でその言葉を聞くと絶望しか感じない。
(とりあえず、何かしらの対策はしておかないとな)
――――
「帰ったぞ~」
「おかえりなさい~」
俺はあの後、言うまでもないが我が家へと帰るために帰り道を歩き、我が家に到着した。
それにしても、袖女との生活も慣れたものだ。人と言うのは密接な関係になっても時間が経てば慣れるらしい。
俺と袖女の関係は、敵同士でありながら同居の相手と言う複雑なものだが、それでも人間と言うのは、時間が経てば適応する。
(最近は驚かされる事ばかりだな……)
「さて……今日もゲームするか」
「やりましょう! 今回は全勝しますからね!」
「無理無理、お前は俺には勝てんよ」
家に帰ると、最近の日課のゲームに洒落込む。袖女は基本的に家事スキルが高いので、1時間位で全部の家事を終わらせてしまう。
その間の時間を埋めるために袖女自身が考案したものだが、俺も意外とハマってしまった。1人でのびのびとゲームをするのも良いが、2人で毎日のようにゲームするのも楽しいものである。
(あ、そういえば……)
「おい」
「なんですか~」
袖女はゲームに夢中なのか、こちらに目線を向けず、テレビ画面をじっと見つめながら返答してきた。ゲームをしながらだからしょうがないが、こちら側を見ずに口だけで返答するとは、礼儀と言うのを知らないらしい。
「お前、これからも任務についてくるのか?」
「…………」
袖女とは、重要な任務には同行すると言う約束を結んでいる。
しかし、今回。袖女は牛に見るも無残に蹴散らされた。正直、俺が助けなければ間違いなく死んでいた。
1番最初にこんな目にあったのだ。袖女に少なからずトラウマを与えたはず。
そんな状態で同行されても、こちらが困るのだ。
なのでこちら側からすれば、同行しないでもらった方がありがたいのだが……
「…………何を言ってるんですか、行きますよ、もちろん」
「……そうか」
袖女は俺に対して、行くと言う決断をした。
少し意外である。袖女は俺に大阪で遭遇した時、重要な任務の内容を除いて全てを話した。なので結構ドライだと思っていたが、俺の考えは違っていたらしい。神奈川のチェス隊の意地かはわからないが、こればっかりは譲れない様だ。
「なら、次は足引っ張らないでくれよ」
「……わかってますよ」
そう言った後、テレビのゲーム画面には、袖女のキャラクターが敗北した画面が写っていた。
「ワン!!」
「やめてくれ……倒したのは1番下っ端だし、牛には手も足も出なかった……あれだけ大口を叩いておきながらこのザマだ」
「いえいえ……こちらからすれば、鼠だけでも倒してくれるだけで大金星ですよ!! これはそのお礼、1000万です……どうかお納めを」
「ああ……」
次の日、俺は黒スーツに会いに行くため、できるだけ人目の少ない喫茶店に集合場所を決めた後、ブラックを連れて黒スーツと落ち合っていた。
「さて、こちら側の話はこれで以上になりますが……何か聞きたいことはありますか?」
「ああ……まぁな」
俺はただ、黒スーツに報酬をもらうために会いに来たわけでもない。しっかりと聞きたい事もある。というか、それがメインと言ってもいい。
「俺は今回、大阪本部に乗り込んだわけだが……俺が狙われる可能性はあるか?」
この質問。この質問の答えによって、俺のこれからの生活が大きく変わってくる。
正直、足音が聞こえたあの日から、嫌な予感が消えないのだ。オカルト染みた話だが、予感と言うのは、意外にもよく当たる。さすがの俺でも、予感は対策できない。
俺にできるのは、この予感が外れていることを願うだけだ。
「……申し訳ありませんが」
しかし、俺の願いは。
「狙われないと言う保証はありません」
無情にも、届く事はなかった。
「…………」
「申し訳ありません……任務を受けてもらった方には、こちら側でできるだけの個人情報のブロックをさせてもらっているのですが……だからといって、狙われない保証は無いかと……」
「……そうか、悪かったな。変なこと聞いちゃって」
俺は黒スーツの回答に対してそう答えると、足早に会計を済ませ、喫茶店を出た。
(まずいことになったな……)
いくら"千斬"が大きな闇サイトだとは言え、相手は名高い大派閥の一角である大阪派閥。いくら個人情報を守った所で、何らかの手段でばれるのがオチだろう。わかっていた事だが、興味を持たれない事を願うしかない。
(こんなことになるなんて……)
調子に乗っていたのだ。東京と神奈川といった大阪に負けずとも劣らない大派閥の手からくぐり抜け、用心すると考えていても、自分の心のどこかで、「何とかなる」と考えてしまっていたのだ。
今思えば、ただ特訓になると言う事だけで大阪本部に乗り込むなんて、昔の俺なら絶対にしない行為。
駄目だ。いくら反射を手に入れたところで、他のスキル保持者とはスキルを持っていた年数が違う。自分のスキルへの開拓が既に済んでいるのだ。それに比べれば、俺はまだまだ劣等。自分のスキルへの理解もまだ足りていない。
自分はまだ弱いと、頭の中に刻み込まなければ。
しかし、やってしまった事はやってしまった事。自分の過ちを認め、次のステップに進まなければならない。
(できれば、できるだけ大阪にはいたい……とりあえず、何かしら異常が起きない限りは大阪にいてもいいだろう。
しかし、問題は異常が起きた後の話だ……)
そう、起きた後の話。問題はそこなのだ。
(さすがに相手も大阪派閥……マンションを十二支獣で襲撃するなんて、人に見られれば話題になるような事はしないだろうが……だとすればどういう可能性がある? 人質? それとも不意をついての拉致で自分たちの陣地に引き込んで、見られないように殺す事も考えられるな……)
広がる無限の可能性。無限の可能性と聞くと、良いことのように聞こえるが、なんとあら不思議。今この状況でその言葉を聞くと絶望しか感じない。
(とりあえず、何かしらの対策はしておかないとな)
――――
「帰ったぞ~」
「おかえりなさい~」
俺はあの後、言うまでもないが我が家へと帰るために帰り道を歩き、我が家に到着した。
それにしても、袖女との生活も慣れたものだ。人と言うのは密接な関係になっても時間が経てば慣れるらしい。
俺と袖女の関係は、敵同士でありながら同居の相手と言う複雑なものだが、それでも人間と言うのは、時間が経てば適応する。
(最近は驚かされる事ばかりだな……)
「さて……今日もゲームするか」
「やりましょう! 今回は全勝しますからね!」
「無理無理、お前は俺には勝てんよ」
家に帰ると、最近の日課のゲームに洒落込む。袖女は基本的に家事スキルが高いので、1時間位で全部の家事を終わらせてしまう。
その間の時間を埋めるために袖女自身が考案したものだが、俺も意外とハマってしまった。1人でのびのびとゲームをするのも良いが、2人で毎日のようにゲームするのも楽しいものである。
(あ、そういえば……)
「おい」
「なんですか~」
袖女はゲームに夢中なのか、こちらに目線を向けず、テレビ画面をじっと見つめながら返答してきた。ゲームをしながらだからしょうがないが、こちら側を見ずに口だけで返答するとは、礼儀と言うのを知らないらしい。
「お前、これからも任務についてくるのか?」
「…………」
袖女とは、重要な任務には同行すると言う約束を結んでいる。
しかし、今回。袖女は牛に見るも無残に蹴散らされた。正直、俺が助けなければ間違いなく死んでいた。
1番最初にこんな目にあったのだ。袖女に少なからずトラウマを与えたはず。
そんな状態で同行されても、こちらが困るのだ。
なのでこちら側からすれば、同行しないでもらった方がありがたいのだが……
「…………何を言ってるんですか、行きますよ、もちろん」
「……そうか」
袖女は俺に対して、行くと言う決断をした。
少し意外である。袖女は俺に大阪で遭遇した時、重要な任務の内容を除いて全てを話した。なので結構ドライだと思っていたが、俺の考えは違っていたらしい。神奈川のチェス隊の意地かはわからないが、こればっかりは譲れない様だ。
「なら、次は足引っ張らないでくれよ」
「……わかってますよ」
そう言った後、テレビのゲーム画面には、袖女のキャラクターが敗北した画面が写っていた。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります
まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。
そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。
選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。
あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。
鈴木のハーレム生活が始まる!
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる