底辺男のミセカタ 〜ゴミスキルのせいで蔑まれていた俺はスキル『反射』を手に入れて憎い奴らに魅せつける〜

筋肉重太郎

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何もないこと、あるはずもなく

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 俺はあの後、朝ごはんを食べ終え、10時ごろに家を出た。

 集合場所等はちゃんと設定されていたため、十分に歩いて到着する事ができた。
 集合場所に到着すると、怪しげな人物が4.5人見受けられた。おそらく、同じく護衛任務を担当するやつだろう。

 しかし、俺以外にも任務を了承した奴がいるとは。

(まぁ……そりゃそうか。普通、護衛を1人にするわけないもんな)

 俺は勝手に自分の中で自己完結し、怪しげな人物たちの中に紛れて依頼主を待つ。周りの奴らはスマホをいじっていたり、おやつらしき物を食べていたりしたが、俺はスマホどころか、あの袖女のせいで今はおやつを買う金すらない。

 なんか、思い出すとイライラしてきた。

 そんな事を思いながら、手持ち無沙汰なので、連れてきたブラックを撫でていた。



 そうして10分後。

 ついに1人の男が現れる。
 高級そうな赤黒いスーツを身に付け、腕にはスーツとは真反対のキラキラした装飾が取り付けてある腕時計。
 明らかに富裕層とわかるその男は、悠々と俺たちに近づいてきていた。

「やぁ。君たちが今回の護衛を受けてくれた人たちかな?今日はよろしく頼むよ」

「よろしくお願いします」

「どうも」

「うす」

「おーす」

「よろしくお願いいたします」

 ……何か、みんな見たまんまのイメージの態度だな。

 基本みんな態度が悪い。態度が良い人間なんてほんの一握りだ。事実、態度が良さそうな人間も、俺を含めて2人だけ。こういった裏の人間はどうして口も態度も悪いのだろうか。人間は不思議である。

「今回の任務は私を守ってくれるだけで大丈夫です。私を囲むように私と一緒に歩いてもらえれば、結構ですので………ご協力をよろしくお願いします」

「……おい、そんな簡単なことでいいのかい?」

「……ふむ。簡単なこととは?」

「今まで護衛をしてくれって言ってきた奴らは、護衛だとバレないようにしろだの、心配だから常に武器を自分に見せるようにしろだの、無茶苦茶なことを言ってきやがったからな。そういう条件はないのかと驚いただけだ」

 ふむ、そんな事があるのか。

 ……となると、今回の依頼主は当たりなのか。ラッキーだったな。

「……ふむ、そうだったのですか……通りで、今までもこのことを話すと、怪訝な顔をされたわけだ……なるほどなるほど、ですがご心配いりません。本当にそれだけですよ」

「……本当だな? 後から言ったら追加料金を要求するぜ?」

「ええ、かまいませんよ……おっと、このままでは遅れてしまう。案内も私がしますので、早く出発いたしましょう」

 そう依頼主が言い、皆が怪しげな視線を向けながら、気まずい雰囲気で今回の任務はスタートした。








 ――――








「…………はい! お疲れ様でした! これにて終了となります! 報酬はサイトの方から受け取って下さい」

 何かのトラブルも何事もなく、目的地と思われるビルに辿り着き、任務は終了となった。しかも、終了時間は午後1時。余裕を持って終わったのである。

 しかし、どうしよう。思ったより早くに終わってしまった。自宅から離れてしまったため、確かに帰る時間はかかるが、それでもスキルをつかえば、1時半には家に着いてしまうだろう。

(さて、どうするか……)

 久々にできた自由時間。できれば有効活用したい。家に帰ったら、すぐにトレーニングに入るか?闇サイトで明日の任務を探しておくのも良い。これからの計画を立てるのも悪くないな。

 そんな事を思いながら、後ろを振り向き、帰路につこうとすると……

「あ! ちょっと!」

「……ん?」

 急に依頼主に呼び止められる。何かヘマでもしただろうか?

「えっと……何かしましたかね? 俺」

「いえいえ……実は私、あなたに会いたいと言う方をここに待たせておりまして……会っていただけると助かるんですが……」

(……俺に会いたいやつ?)

 誰だろうか。全く心当たりがない。大阪にくるのは初めてだし、親に大阪での知り合いがいるなんて話も聞いたことがない。そもそも、いたとしても、俺だとはわからないだろう。

「……一体誰ですか?」

「実はそれが、闇サイトの運営の方でして……」

「闇サイトの運営?」

(何か違反でもしたかな……)

「はい。実は…………」

 依頼主が言うには、護衛任務を俺が了承したすぐ後、運営から連絡がかかってきたらしく、内容は、俺と当日送られてくる代表者を会わせること。とだけ言われ、電話を切られたらしい。

 ……なんとも奇妙な話だ。

「それをオッケーしちゃったんですか?」

「私だってオッケーするつもりはありませんでしたよ!! ただのいたずら電話だと思っていましたし、集合場所もいないから、「ああ、本当にいたずらだったんだな」思っていたら、到着した先にいるんですもん! 困っちゃいますよ……本当に……」

 そういうタイプは非常に厄介だ。粘着するセールスマンみたいなもん。正直出会いたくない。

 が、拒否してしまえば、この人は幻滅し、二度とあの闇サイトに任務を出してくれなくなるかもしれない。

 この依頼主は当たり依頼主なのだ。これからもあの闇サイトを使って欲しい。

 そうなってしまえば、俺に残された選択肢はたった1つしかなかった。

「…………はぁ、仕方がありませんね……その方はどこですか?」

「……!! 助かります!!! 闇サイトの代表者の方はあちらに……」

 そう言われ、言われた方向に視線を受けると、明らかに違和感のある人物が1人。

(てかあれって……)

「…………黒スーツ?」

 そう、依頼主が言っていた闇サイトの代表者と言うのは、黒スーツの事だったのだ。

 俺が初めて闇サイトで任務を受け取った後、噴水前で取引をしたあの人物。あの特徴的な全身黒スーツを覚えないわけがなかった。

 それならば、変に気を使う必要も無い。さっさと用件を聞いて、退散するとしよう。

 俺は足早に黒スーツに近づき、距離を詰めていく。

 自分に近づいてきているのがわかったのか、俺に対して手を振ってきた。任務達成後の疲れた人間に対して何をしているのだ。

「……おい、お前何しに来た?」

「いやいや、お久しぶりですねぇ、田中伸太さん」

「言っても4日ぶりだけどな……ん?」

 瞬間、俺の体をめぐる違和感。なんだ、何かがおかしい。喉の奥にこぼれが引っかかったかのような感じだ。

 この違和感の正体は――――

「……どうしましたか? 田中伸太さん?」

「……っ!!!!」

 黒スーツの言葉を聞いた瞬間、俺の黒スーツに対する警戒度がマックスまで跳ね上がった。
 久しぶりの緊張感。レベルダウンと戦った時と同じ位の心臓の鼓動音。そのすべてが、目の前の男に注意しろと。警戒しろとブザーを鳴らしていた。

「…………お前、なぜ俺の名前を知っている?」






 その瞬間。







 黒スーツの口元がわずかに、ニヤついたような気がした。
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