陽気な吸血鬼との日々

波根 潤

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お墓参りへ

二十四、

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 「そうだ、そういえばポメラニアン飼い始めたって一ヶ月くらい前にメッセージきた」

湧きあがる感情に戸惑って、少し話題を変える。テテを可愛がっているし、きっと小動物も好きだろうと美恵子さんからのメッセージの話をする。

「ポメラニアン!あのもっふもふのワンちゃん?」
「そう。名前はしのびらしい」
「……なんか渋くない?」
「よく隠れてるんだって。今もそうなのかはわからないけど。確か写真が……あ」
「どうしたの?」

 スマホを取り出して画面をつけると美恵子さんからメッセージが入っていた。思わずすぐに閉じたが、一瞬だけ見えた画面には「墓参りくるの?来るなら……」という文字があった。写真を見ようと画面を覗き込んでいたケリーも気付いたようで、「今のって」と俺に視線をむけた。少し気まずいが、隠すほどのことではない。

「うん、叔母」
「返信しなくていいの?何か用事があるんじゃ」
「大丈夫」

どうせ顔を見せろと言われるだけなので放っておこうとする。墓参りに行くのは察せられているが、アパートに帰ってから、スマホを持って行かなかったと連絡すれば良い。

「いつものことだか……」

ところが、気にするなと言おうとした所で今度は着信が入った。タイミングが悪い。驚いたが、自然と切られるのを待つ。

(今回はしつこいな。)

暫くすると留守番電話に切り替わり、後から聞いてみると「あんたメッセージ読まないから、留守電残しとくわね!墓参り来るなら顔出しなさい!正月っきり会ってないけど元気なの?ちゃんと食べてるの?これ聞いたらすぐに電話でもメッセージでもいいから連絡するように!」と矢継ぎ早に語りかけられた。声が大きく、思わず耳からスマホを少し離して聞いていたのだがケリーにも少し聞こえていたようで、なんだがどぎまぎしている。
 聞き終わったあと、スマホの画面を閉じてポケットに入れた。何か言いたげな様子でケリーが俺の顔を見るので「なに?」と尋ねる。

「連絡、しないの?」
「うん、叔母も別に期待してないと思うし、家には行かないってわかってるだろうし」
「会いたくならない?」
「……ならない」

ほんの少しだけ言葉に詰まったが、本当に会いたい訳ではない。会いたいのならそもそも一人暮らしなんてせず、そのまま一緒に暮らしていれば良かったのだ。嫌になってあの家を出たのだから、正月以外帰らなくてもいいだろう。どうせ進路について口煩く言われるだけだ。
 それ以上言うのは諦めたように、ケリーは頷いた。

「そっか。でも、声を聞く限り本当に嫌な人ではないんだね」
「うん。お母さんに似てて、元気な人だよ」

叔母のことは別に嫌いではないのでそう言われると嬉しい。

「墓参り来るならって、住んでた所近いの?」
「ちょっと歩くけど、徒歩圏内」
「そっか、どんな場所にお墓があるのか気になってたけど、住んでた所だったんだね」

 「行かない」と名言してもケリーはなぜか気になるようだった。

「そんなに気になる?」
「うん、というより清飛がどんな場所で暮らしてたのかが気になるかな」

 なんでそんなことが気になるのかわからず、首を傾げる。お墓の場所はアパートのある場所とそう変わらない田舎だと言ったはずだ。特に面白いものはない。
 だが、そこまで言うならその場所に行くだけならありかと思った。俺はどうしても行きたくないというのではなくて、行くのは気が進まないという思いでいたため、妥協案を出すことにした。

「行ってみる?」
「え?」
「俺が住んでた所」
「いいの?行きたくないんじゃ」
「そのかわり、家の中には入らない。」

 それには興味ないと断われたらそれで良い。だが、ケリーの反応は肯定的であった。

「行ってみたい!」
「……面白くないと思うけど」
「清飛が住んでた場所だよ!興味ある!」

 墓参りに着いてきたり、家にまで行こうとしたり、何がケリーをそうさせているのかわからない。だが、自分自身もケリーを振り回していなかと少し不安な気持ちが沸いていたが、当の本人が嬉しそうにしているのでホッとしたのも事実だった。

 そろそろ終点に着く。二人でいると時間が経つのがあっという間だった。

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