12 / 57
act.12
しおりを挟む
羽柴の住むC市は、ニューヨークと比べ、時間の経過が緩やかな街だ。
全米の中でもここ数十年の間に急速に発展した都市で、貧富の差が激しいとのことだが、ニューヨークほど雑多な印象は感じない。
新しく整備された街特有の棲み分けがきちんとできていて、都市の中がうまい具合にエリアで別れている。
官公庁が並ぶメインストリート沿いを過ぎると、企業のオフィスが立ち並ぶブロックが現れ、それに付随した商店がぽつぽつと間を埋めている。一番賑やかなショッピング街は、商業地より運河を挟んで南側、ホテル街もその周辺にある。住宅地は新興のものと旧市街のものとがあり、いずれも中心地から車で十五分程度だ。大きな違いは、新興住宅地は街の南側にあり、旧市街は街の北側にある。旧市街の隣には、低所得者層の暮らす悪名高いクラウン地区が広がっている。
街の郊外には、企業が抱える大規模な製造工場が建ち並び、街の外からも労働者がやってくる。
ショーンの生まれ故郷である小さな町も、工場地帯の周辺に位置していた。
C市は道路交通網も発達しているが、鉄道や地下鉄など公共の交通手段も充実している。比較的商業地が一点に集中しているので、公共の乗り物で街の中心地に出れば、後は徒歩でも十分目的を達成することができる。街中に住んでいる人々は車を持たなくても十分生活ができた。
街の中心には緑深い公園がある。
規模はニューヨークのセントラルパークには及ばないが、街のシンボルとして重要な役割を果たしてる。
公園は運河まで広がっており、公園からショッピング街に抜ける橋は、休日ともなると多くの人々でごった返した。
その日も、気温はやっと冬本番らしく冷え込んだが、目の前にクリスマスと新年というビッグイベントを控え、多くの人が街へ繰り出していた。
旧市街に住んでいる羽柴も、ショーンと連れだって地下鉄で街の中心に出た。
今日のショーンは、ジーンズの上に羽柴に借りたビリジアン色のトレーナーを着込み、ざっくりとしたグレイの長いマフラーを首もとでグルグル巻きにして、頭にはマフラーと揃いのニット帽を被っている。もちろん、鼻の下には付け髭だ。
付け髭は大きな効果を発揮している。
ショーンはいきなり人混みの中に入っていくことに少し怯えていたが、羽柴の思惑通り、ショーンに気付く人はまったくいなかった。
皆、一瞬付け髭に目をやるが、髭が余りに目立ち過ぎて、ショーンの顔全体に目がいかないようである。髪の毛も全て帽子の中に入れているので、彼が目の覚めるような赤毛の青年であることも気付かない。
地下鉄の中で、二人して出口付近に立ったままガタンガタンと揺られながら、ショーンは驚いたという顔つきで羽柴を見上げてきた。羽柴は、「な? つけてきてよかったろ、髭」と小声で囁いて、コミカルに肩を竦める。
ショーンは、普通の人のように地下鉄を利用したことが随分と久しぶりだったらしい。
羽柴の身体越し、キョロキョロと楽しそうに車中の様子を見物している。
「降りるよ」
電車が止まり、ドアが開くと、ショーンは名残惜しそうに電車を降りた。
公園を抜けてショッピング街に向かう道すがら、随分ショーンは一般人としての休日を楽しんでいるようだった。
公園では鳩を追い回し、路肩で店を開いているクレープ屋に寄りたいと言って(というかジェスチャーで主張して)、無謀にも持参したクレジットカードで支払いをしようとしたところを羽柴が止めた。
途中三輪車と玩具のバギーカーに乗っている小さな兄弟と遭遇し、真剣に三輪車とバギーカーで競争を始めた。
結局、長い脚が三輪車を漕ぐ上で非常に邪魔になってバギーカーの男の子に負けた訳だが、それでもショーンは楽しくて仕方ないらしく、声が出なくても大きな口を開けて笑っていた。
途中、兄弟がショーンの顔を両方から掴み込み、頬にキスをした際に口髭がペロリと捲れた。ギョッとする母親に羽柴は慌てて礼を言い、ショーンをかっさらうようにその場を離れた。
公園の中にあるスケート場では、地元のちびっ子スケーターがいっちょ前にヒラヒラと風に靡く衣装を着て、くるくると回っている。
ショーンは寒さに晒された頬や鼻先を赤くしながら、それを熱心に眺めていた。
「滑るかい? スケート靴、レンタルできるよ」
羽柴がそう訊くと、ショーンはウンウンと頷いた。
どうやらショーンはスケートの経験がないらしく、おっかなびっくり氷の上に立った。
羽柴は、毎年スケートを楽しんでいるので割と得意だ。
ショーンの手を引いて、ゆっくりと氷の上を滑り出すと、不安げな瞳が羽柴を捉える。
「おどおどしてたら、余計転けるよ」
そう言ってる矢先、ショーンがドテッとひっくり返る。
ショーンは笑いながら、氷の上で腰を押さえた。
羽柴が、その上に覆い被さるようにショーンを見る。
「ハハハ、大丈夫か? 起きられる?」
ショーンは羽柴の腕に捕まりながら何とか立ち上がるが、また足が前と後ろに同時に滑って、咄嗟にショーンは羽柴の身体にしがみいてきた。羽柴は反射的にショーンの身体を抱き上げる。
その拍子に、ショーンの茜色に輝く瞳が間近に迫った。
まるで、甘いあめ玉のような瞳。
こんなに身近で見てもルビー色に輝いてるだなんて、本当に信じられない瞳の色だ。
フウフウと荒く吐き出されるショーンの白い息が、羽柴の頬に当たる。
内心羽柴はドキリとしながらも、努めてそれを表に出さず、「大丈夫か?」と訊いた。
ショーンはフゥと一息ついて、コクリと頷く。
羽柴がショーンの腰元に手をやると、少しショーンは身じろぎして、額をコツンと羽柴の喉元にくっつけてくる。
まるで恋人にでも甘えるような仕草に、また羽柴はドキリとした。
ショーンには、あくまで親子のような感覚で接しているが、時折見せるショーンの表情や仕草が羽柴を戸惑わせる。
── 子ども相手に何を思ってるんだ、俺は・・・。
少し自己嫌悪に陥りながら、羽柴はショーンの身体を放して、彼の手を引いた。
最初はおっかなびっくりだったショーンも、運動神経はいい方なのか、すぐにコツを掴む。
十分もしない間に、様になったスケーティングをし始めた。
「手、放すぞ」
スピードにのった頃、羽柴はそっとショーンの手を放した。
最初目を剥いていたショーンも、すぐに笑顔を向け、羽柴に手を振ってくる。
羽柴はスケート場の壁に凭れ、ショーンが滑る様を眺めた。
彼がいつかまた自分の元から姿を消す時のことを考えると何とも寂しい気分になるが、彼のためにはそれがいいのだと思った。
── 彼の心の病が早く回復して、俺の元を笑顔で旅立てる日が、なるだけ早く来るように・・・。
羽柴は胸元に手をやりながら、そう内心願い事をした。
そうこうしていたら、向こうから滑ってきたショーンが、今度は顔を引きつらせながら何かジェスチャーを見せた。
「何?」
羽柴が顔を顰めると、ショーンは思ったことをうまく伝えられずに目の前を通り過ぎていく。
結局ショーンは、ポケットからメモ用紙を取り出して、滑りながら必死の形相でメモに書き付けると(初めてとは思えないような芸当だ)、それを羽柴に向かって投げつけてきた。
そこにはぐちゃぐちゃの字でこう書いていた。
『止まれないんだよ!』
「ハハハハハ」
羽柴は大笑いすると、またぐるりと滑ってきたショーンの滑走ラインに入り、まるで腕の中に飛び込んできたかのようなショーンの身体を逞しい腕でしっかりと抱き留めたのだった。
『ねぇ、ハシバ コウゾウって、どんな意味があるの?』
ハンバーガーショップで昼食を取る最中、ショーンはメモ帳にそう書き記した。
「意味?」
巨大な紙コップに入っているジンジャエールをストローで啜りながら、羽柴が眉を引き上げる。
『そ。字の意味』
ショーンは左手でポテトを頬張り、右手でメモにペンを走らせる。
「字の意味?って、これのこと?」
羽柴が、ショーンのペンを取り、メモに漢字で『羽柴耕造』と書き付ける。それを見てショーンは頷いた。
よもやそんなことを訊かれるとは思わなかったが、羽柴は嬉しくなって微笑んだ。
近頃、アメリカ人の間で漢字をタトゥーすることが流行っているが、中には「こんな馬鹿馬鹿しい字を?」と思う若者もいる。大抵は、その漢字の意味より字の形のイメージ優先で彫っているのだ。だからこうして漢字の意味を訊かれるのは、正直嬉しく思う。
「ええとね・・・」
羽柴は、それぞれの漢字に引き出し線を引っ張り、意味を書き付ける。
「羽はfeatherかな・・・気持ちとしては、wingだけど。柴はまぁ、brushwood。耕は・・・plowっていうよりは、cultivateかな。造は、creationって感じ」
ショーンはしばらくそれを眺めた後、ページを捲ってこう書いた。
『凄く、夢のある名前だ』
「それは光栄です。名前負けしてそうで怖いんだけど」
羽柴が苦い表情を浮かべると、ショーンは首を横に振って見せた。
「ショーンは? ショーンはどうしてつけられたの?」
『ジョン・レノンの子どもの名前』
「へぇ」
『本当の父さんがビートルズの大ファンだった』
「そうなんだ。その・・・例の早くに亡くしたお父さん?」
ショーンは頷く。そして更にペンを走らせた。
『遠慮せずに何でも訊いていいよ』
羽柴はジュースを啜るのを止め、ショーンの目を覗き見た。
「いいのか? いろいろ辛くない?」
ショーンは首を横に振る。
『色々訊かれるのは、へっちゃら、アンタになら』
そう書いて、ふいに『アンタ』の部分をグチャグチャとペンで塗り潰す。
そして新たに『どうやってアンタのこと呼んだらいいの? いつまでも“アンタ”はいやだ』と書いた。
「そりゃ、そうだ。そうだなぁ、“キング・ハシバ”とか、“東洋のハンサムガイ”とかいろいろ・・・」
ショーンが派手に顔を顰める。
真面目にしろ、というように足で羽柴の靴を蹴ってきた。
「や、だから、好きな風に呼んでいいよ。別に年上だからって畏まる必要もないし」
『コウ、とか?』
「うん。いいよ」
ショーンはにっこり微笑んで、『コウに色々訊かれるのは、へっちゃら』と改めて書く。
ようやく心のバリケードが取れ、気持ちの中に余裕ができてきたらしい。
「じゃ、いろいろ訊かせてもらおうかな。取り調べ」
羽柴の台詞に、ショーンがまた笑う。
「答えは短くていいからな。手が疲れない程度に」
ショーンが頷く。
「お父さんは有名なミュージシャンだったんだ」
『そう。一発屋のロックスター。でも凄く売れた。信じられないくらい』
「お母さんは?」
『グルーピーの一人。俺は、ママ似だって』
「へぇ、そうなんだ。そりゃ、大層美人だったんだろうな」
羽柴は、素直にそう言う。
それはお世辞でも何でもなく、本心からそう言った。
ショーンほど魅力的な容姿の子どもを生んだ人だ。
「で、お母さんは今どうしてる?」
『死んだ。ビルと一緒に。ビルはあっという間に落ちぶれて、ドラッグと酒に溺れた。その借金問題が元で売人に殺された。俺はその様子を見た』
羽柴は思わず言葉を失って、まじまじとショーンを見つめた。
こんなに才能にも容姿にも恵まれているショーンが、悲しく壮絶な幼少時代を送っていたとは、正直羽柴は驚いた。こうしてショーンが屈託のない笑顔を浮かべられていることが、驚異的に感じる。
だがショーンは、もうその点については既に乗り越えた壁なのか、いたって穏やかな顔つきをしていた。羽柴とショーンの表情は、いつもと正反対だった。
『その時も、今のように声を失った。どうやら失声症は俺の得意技みたい』
ショーンはそう書いて、肩を竦める。
流石の羽柴も、ショーンの自虐的な冗談に表情を取り繕うことができなかった。
羽柴の悲しげな表情を見て、ショーンは少し気まずくなったのか、スンと鼻を鳴らし、続きを書き付ける。
『でも、スコットに引き取られて、俺は世界一幸せな子どもになった』
「スコット? ああ、今のお父さんだね」
ショーンは頷く。
『とってもカッコイイ人。それに優しくて、泣き虫で。自動車整備とアメフトのコーチをしてる。俺の初恋の相手』
羽柴は思わずギョッと目を剥いた。
「初恋?」
ショーンはコミカルに微笑みながら、ウンと頷く。
── なんだ、冗談か。
羽柴もつられて微笑みを浮かべ、「随分過激なガキだったんだな」と毒舌を吐いた。ショーンが大きく笑う。
「じゃ、失声症治したのも、お父さんが?」
ショーンが頷く。
『スコットが凄い愛情を注いでくれたから、三ヶ月で治った』
── 三ヶ月かぁ・・・。
父親の愛情でそれだけかかるのなら、今回はもっと時間が必要だということか。
羽柴は些かショーンの仕事のことが気になる。
「それで・・・、今回のはどうしてなんだい? 仕事上のストレス?」
ショーンは少し考える素振りを見せて、やがてウンウンと頷いた。
『記者会見、見た?』
「ああ、見たよ」
── 何度もね。そこでショーンが話したことが暗唱できるぐらい何度も。
羽柴は、敢えてそれは言わず、ショーンが次のコメントを書き終わるまで待った。
『あれ、殆ど嘘。正しいのは、俺がビルの子どもってとこぐらい』
── ああ、やはり。
羽柴は思った。
だからこそ、テレビの中のショーンはあんなに奇妙な顔つきをしていたのだ。
『イアンのプレッシャーに負けて、俺、嘘つきになっちゃった。それがどうしても嫌で』
ショーンは今にも両目から雨が降り出しそうな顔つきで、それでも小さく笑みを浮かべた。
羽柴は溜息をつく。
こんなに自分の感情に正直に生きているショーンには、大衆の前で嘘をつくことは(それが例え罪のない嘘だとしても)相当キツイことだろう。
もちろん羽柴ぐらいの年齢になると、嘘なしで生きてきたとは言い切れない。
けれど羽柴だって、人を欺くような嘘はついてきたことはないと自負していた。自分の良心に反するような嘘は。
『その頃はまだ声は出てたんだけど、そしたら今度、ギターが弾けなくなって』
ショーンは、そこまで書いてペンを止めた。
遂にショーンの目からポロリと涙が落ちる。
どうやらこれが、直接の原因らしい。
ショーンは大きく息を吐き出して、続きを書こうとしたが、その手を羽柴が止めた。
ショーンが羽柴の顔を見る。
羽柴は緩く首を横に振った。
「もう、いいよ。分かったから。── こっちにおいで」
ショーンの顔が、目に見えてクシャクシャになった。
羽柴は、壁際に身体を寄せる。
ショーンが弾かれたように立ち上がって、羽柴の隣に身体を滑り込ませた。
その身体を、羽柴はギュッと抱き締める。
他の客がチラリと羽柴達を見たが、日本とは違ってアメリカでは街中でもハグしあうことは多いので、ジロジロと見つめてくることはない。
けれど、例え自分に好奇の目を向けられたとしても、羽柴は平気だった。
勝手に軽蔑するならすればいい。
そんなこと構うもんか。
今大切なのは、傷ついたショーンの心を温かく包んでやることなんだから。
全米の中でもここ数十年の間に急速に発展した都市で、貧富の差が激しいとのことだが、ニューヨークほど雑多な印象は感じない。
新しく整備された街特有の棲み分けがきちんとできていて、都市の中がうまい具合にエリアで別れている。
官公庁が並ぶメインストリート沿いを過ぎると、企業のオフィスが立ち並ぶブロックが現れ、それに付随した商店がぽつぽつと間を埋めている。一番賑やかなショッピング街は、商業地より運河を挟んで南側、ホテル街もその周辺にある。住宅地は新興のものと旧市街のものとがあり、いずれも中心地から車で十五分程度だ。大きな違いは、新興住宅地は街の南側にあり、旧市街は街の北側にある。旧市街の隣には、低所得者層の暮らす悪名高いクラウン地区が広がっている。
街の郊外には、企業が抱える大規模な製造工場が建ち並び、街の外からも労働者がやってくる。
ショーンの生まれ故郷である小さな町も、工場地帯の周辺に位置していた。
C市は道路交通網も発達しているが、鉄道や地下鉄など公共の交通手段も充実している。比較的商業地が一点に集中しているので、公共の乗り物で街の中心地に出れば、後は徒歩でも十分目的を達成することができる。街中に住んでいる人々は車を持たなくても十分生活ができた。
街の中心には緑深い公園がある。
規模はニューヨークのセントラルパークには及ばないが、街のシンボルとして重要な役割を果たしてる。
公園は運河まで広がっており、公園からショッピング街に抜ける橋は、休日ともなると多くの人々でごった返した。
その日も、気温はやっと冬本番らしく冷え込んだが、目の前にクリスマスと新年というビッグイベントを控え、多くの人が街へ繰り出していた。
旧市街に住んでいる羽柴も、ショーンと連れだって地下鉄で街の中心に出た。
今日のショーンは、ジーンズの上に羽柴に借りたビリジアン色のトレーナーを着込み、ざっくりとしたグレイの長いマフラーを首もとでグルグル巻きにして、頭にはマフラーと揃いのニット帽を被っている。もちろん、鼻の下には付け髭だ。
付け髭は大きな効果を発揮している。
ショーンはいきなり人混みの中に入っていくことに少し怯えていたが、羽柴の思惑通り、ショーンに気付く人はまったくいなかった。
皆、一瞬付け髭に目をやるが、髭が余りに目立ち過ぎて、ショーンの顔全体に目がいかないようである。髪の毛も全て帽子の中に入れているので、彼が目の覚めるような赤毛の青年であることも気付かない。
地下鉄の中で、二人して出口付近に立ったままガタンガタンと揺られながら、ショーンは驚いたという顔つきで羽柴を見上げてきた。羽柴は、「な? つけてきてよかったろ、髭」と小声で囁いて、コミカルに肩を竦める。
ショーンは、普通の人のように地下鉄を利用したことが随分と久しぶりだったらしい。
羽柴の身体越し、キョロキョロと楽しそうに車中の様子を見物している。
「降りるよ」
電車が止まり、ドアが開くと、ショーンは名残惜しそうに電車を降りた。
公園を抜けてショッピング街に向かう道すがら、随分ショーンは一般人としての休日を楽しんでいるようだった。
公園では鳩を追い回し、路肩で店を開いているクレープ屋に寄りたいと言って(というかジェスチャーで主張して)、無謀にも持参したクレジットカードで支払いをしようとしたところを羽柴が止めた。
途中三輪車と玩具のバギーカーに乗っている小さな兄弟と遭遇し、真剣に三輪車とバギーカーで競争を始めた。
結局、長い脚が三輪車を漕ぐ上で非常に邪魔になってバギーカーの男の子に負けた訳だが、それでもショーンは楽しくて仕方ないらしく、声が出なくても大きな口を開けて笑っていた。
途中、兄弟がショーンの顔を両方から掴み込み、頬にキスをした際に口髭がペロリと捲れた。ギョッとする母親に羽柴は慌てて礼を言い、ショーンをかっさらうようにその場を離れた。
公園の中にあるスケート場では、地元のちびっ子スケーターがいっちょ前にヒラヒラと風に靡く衣装を着て、くるくると回っている。
ショーンは寒さに晒された頬や鼻先を赤くしながら、それを熱心に眺めていた。
「滑るかい? スケート靴、レンタルできるよ」
羽柴がそう訊くと、ショーンはウンウンと頷いた。
どうやらショーンはスケートの経験がないらしく、おっかなびっくり氷の上に立った。
羽柴は、毎年スケートを楽しんでいるので割と得意だ。
ショーンの手を引いて、ゆっくりと氷の上を滑り出すと、不安げな瞳が羽柴を捉える。
「おどおどしてたら、余計転けるよ」
そう言ってる矢先、ショーンがドテッとひっくり返る。
ショーンは笑いながら、氷の上で腰を押さえた。
羽柴が、その上に覆い被さるようにショーンを見る。
「ハハハ、大丈夫か? 起きられる?」
ショーンは羽柴の腕に捕まりながら何とか立ち上がるが、また足が前と後ろに同時に滑って、咄嗟にショーンは羽柴の身体にしがみいてきた。羽柴は反射的にショーンの身体を抱き上げる。
その拍子に、ショーンの茜色に輝く瞳が間近に迫った。
まるで、甘いあめ玉のような瞳。
こんなに身近で見てもルビー色に輝いてるだなんて、本当に信じられない瞳の色だ。
フウフウと荒く吐き出されるショーンの白い息が、羽柴の頬に当たる。
内心羽柴はドキリとしながらも、努めてそれを表に出さず、「大丈夫か?」と訊いた。
ショーンはフゥと一息ついて、コクリと頷く。
羽柴がショーンの腰元に手をやると、少しショーンは身じろぎして、額をコツンと羽柴の喉元にくっつけてくる。
まるで恋人にでも甘えるような仕草に、また羽柴はドキリとした。
ショーンには、あくまで親子のような感覚で接しているが、時折見せるショーンの表情や仕草が羽柴を戸惑わせる。
── 子ども相手に何を思ってるんだ、俺は・・・。
少し自己嫌悪に陥りながら、羽柴はショーンの身体を放して、彼の手を引いた。
最初はおっかなびっくりだったショーンも、運動神経はいい方なのか、すぐにコツを掴む。
十分もしない間に、様になったスケーティングをし始めた。
「手、放すぞ」
スピードにのった頃、羽柴はそっとショーンの手を放した。
最初目を剥いていたショーンも、すぐに笑顔を向け、羽柴に手を振ってくる。
羽柴はスケート場の壁に凭れ、ショーンが滑る様を眺めた。
彼がいつかまた自分の元から姿を消す時のことを考えると何とも寂しい気分になるが、彼のためにはそれがいいのだと思った。
── 彼の心の病が早く回復して、俺の元を笑顔で旅立てる日が、なるだけ早く来るように・・・。
羽柴は胸元に手をやりながら、そう内心願い事をした。
そうこうしていたら、向こうから滑ってきたショーンが、今度は顔を引きつらせながら何かジェスチャーを見せた。
「何?」
羽柴が顔を顰めると、ショーンは思ったことをうまく伝えられずに目の前を通り過ぎていく。
結局ショーンは、ポケットからメモ用紙を取り出して、滑りながら必死の形相でメモに書き付けると(初めてとは思えないような芸当だ)、それを羽柴に向かって投げつけてきた。
そこにはぐちゃぐちゃの字でこう書いていた。
『止まれないんだよ!』
「ハハハハハ」
羽柴は大笑いすると、またぐるりと滑ってきたショーンの滑走ラインに入り、まるで腕の中に飛び込んできたかのようなショーンの身体を逞しい腕でしっかりと抱き留めたのだった。
『ねぇ、ハシバ コウゾウって、どんな意味があるの?』
ハンバーガーショップで昼食を取る最中、ショーンはメモ帳にそう書き記した。
「意味?」
巨大な紙コップに入っているジンジャエールをストローで啜りながら、羽柴が眉を引き上げる。
『そ。字の意味』
ショーンは左手でポテトを頬張り、右手でメモにペンを走らせる。
「字の意味?って、これのこと?」
羽柴が、ショーンのペンを取り、メモに漢字で『羽柴耕造』と書き付ける。それを見てショーンは頷いた。
よもやそんなことを訊かれるとは思わなかったが、羽柴は嬉しくなって微笑んだ。
近頃、アメリカ人の間で漢字をタトゥーすることが流行っているが、中には「こんな馬鹿馬鹿しい字を?」と思う若者もいる。大抵は、その漢字の意味より字の形のイメージ優先で彫っているのだ。だからこうして漢字の意味を訊かれるのは、正直嬉しく思う。
「ええとね・・・」
羽柴は、それぞれの漢字に引き出し線を引っ張り、意味を書き付ける。
「羽はfeatherかな・・・気持ちとしては、wingだけど。柴はまぁ、brushwood。耕は・・・plowっていうよりは、cultivateかな。造は、creationって感じ」
ショーンはしばらくそれを眺めた後、ページを捲ってこう書いた。
『凄く、夢のある名前だ』
「それは光栄です。名前負けしてそうで怖いんだけど」
羽柴が苦い表情を浮かべると、ショーンは首を横に振って見せた。
「ショーンは? ショーンはどうしてつけられたの?」
『ジョン・レノンの子どもの名前』
「へぇ」
『本当の父さんがビートルズの大ファンだった』
「そうなんだ。その・・・例の早くに亡くしたお父さん?」
ショーンは頷く。そして更にペンを走らせた。
『遠慮せずに何でも訊いていいよ』
羽柴はジュースを啜るのを止め、ショーンの目を覗き見た。
「いいのか? いろいろ辛くない?」
ショーンは首を横に振る。
『色々訊かれるのは、へっちゃら、アンタになら』
そう書いて、ふいに『アンタ』の部分をグチャグチャとペンで塗り潰す。
そして新たに『どうやってアンタのこと呼んだらいいの? いつまでも“アンタ”はいやだ』と書いた。
「そりゃ、そうだ。そうだなぁ、“キング・ハシバ”とか、“東洋のハンサムガイ”とかいろいろ・・・」
ショーンが派手に顔を顰める。
真面目にしろ、というように足で羽柴の靴を蹴ってきた。
「や、だから、好きな風に呼んでいいよ。別に年上だからって畏まる必要もないし」
『コウ、とか?』
「うん。いいよ」
ショーンはにっこり微笑んで、『コウに色々訊かれるのは、へっちゃら』と改めて書く。
ようやく心のバリケードが取れ、気持ちの中に余裕ができてきたらしい。
「じゃ、いろいろ訊かせてもらおうかな。取り調べ」
羽柴の台詞に、ショーンがまた笑う。
「答えは短くていいからな。手が疲れない程度に」
ショーンが頷く。
「お父さんは有名なミュージシャンだったんだ」
『そう。一発屋のロックスター。でも凄く売れた。信じられないくらい』
「お母さんは?」
『グルーピーの一人。俺は、ママ似だって』
「へぇ、そうなんだ。そりゃ、大層美人だったんだろうな」
羽柴は、素直にそう言う。
それはお世辞でも何でもなく、本心からそう言った。
ショーンほど魅力的な容姿の子どもを生んだ人だ。
「で、お母さんは今どうしてる?」
『死んだ。ビルと一緒に。ビルはあっという間に落ちぶれて、ドラッグと酒に溺れた。その借金問題が元で売人に殺された。俺はその様子を見た』
羽柴は思わず言葉を失って、まじまじとショーンを見つめた。
こんなに才能にも容姿にも恵まれているショーンが、悲しく壮絶な幼少時代を送っていたとは、正直羽柴は驚いた。こうしてショーンが屈託のない笑顔を浮かべられていることが、驚異的に感じる。
だがショーンは、もうその点については既に乗り越えた壁なのか、いたって穏やかな顔つきをしていた。羽柴とショーンの表情は、いつもと正反対だった。
『その時も、今のように声を失った。どうやら失声症は俺の得意技みたい』
ショーンはそう書いて、肩を竦める。
流石の羽柴も、ショーンの自虐的な冗談に表情を取り繕うことができなかった。
羽柴の悲しげな表情を見て、ショーンは少し気まずくなったのか、スンと鼻を鳴らし、続きを書き付ける。
『でも、スコットに引き取られて、俺は世界一幸せな子どもになった』
「スコット? ああ、今のお父さんだね」
ショーンは頷く。
『とってもカッコイイ人。それに優しくて、泣き虫で。自動車整備とアメフトのコーチをしてる。俺の初恋の相手』
羽柴は思わずギョッと目を剥いた。
「初恋?」
ショーンはコミカルに微笑みながら、ウンと頷く。
── なんだ、冗談か。
羽柴もつられて微笑みを浮かべ、「随分過激なガキだったんだな」と毒舌を吐いた。ショーンが大きく笑う。
「じゃ、失声症治したのも、お父さんが?」
ショーンが頷く。
『スコットが凄い愛情を注いでくれたから、三ヶ月で治った』
── 三ヶ月かぁ・・・。
父親の愛情でそれだけかかるのなら、今回はもっと時間が必要だということか。
羽柴は些かショーンの仕事のことが気になる。
「それで・・・、今回のはどうしてなんだい? 仕事上のストレス?」
ショーンは少し考える素振りを見せて、やがてウンウンと頷いた。
『記者会見、見た?』
「ああ、見たよ」
── 何度もね。そこでショーンが話したことが暗唱できるぐらい何度も。
羽柴は、敢えてそれは言わず、ショーンが次のコメントを書き終わるまで待った。
『あれ、殆ど嘘。正しいのは、俺がビルの子どもってとこぐらい』
── ああ、やはり。
羽柴は思った。
だからこそ、テレビの中のショーンはあんなに奇妙な顔つきをしていたのだ。
『イアンのプレッシャーに負けて、俺、嘘つきになっちゃった。それがどうしても嫌で』
ショーンは今にも両目から雨が降り出しそうな顔つきで、それでも小さく笑みを浮かべた。
羽柴は溜息をつく。
こんなに自分の感情に正直に生きているショーンには、大衆の前で嘘をつくことは(それが例え罪のない嘘だとしても)相当キツイことだろう。
もちろん羽柴ぐらいの年齢になると、嘘なしで生きてきたとは言い切れない。
けれど羽柴だって、人を欺くような嘘はついてきたことはないと自負していた。自分の良心に反するような嘘は。
『その頃はまだ声は出てたんだけど、そしたら今度、ギターが弾けなくなって』
ショーンは、そこまで書いてペンを止めた。
遂にショーンの目からポロリと涙が落ちる。
どうやらこれが、直接の原因らしい。
ショーンは大きく息を吐き出して、続きを書こうとしたが、その手を羽柴が止めた。
ショーンが羽柴の顔を見る。
羽柴は緩く首を横に振った。
「もう、いいよ。分かったから。── こっちにおいで」
ショーンの顔が、目に見えてクシャクシャになった。
羽柴は、壁際に身体を寄せる。
ショーンが弾かれたように立ち上がって、羽柴の隣に身体を滑り込ませた。
その身体を、羽柴はギュッと抱き締める。
他の客がチラリと羽柴達を見たが、日本とは違ってアメリカでは街中でもハグしあうことは多いので、ジロジロと見つめてくることはない。
けれど、例え自分に好奇の目を向けられたとしても、羽柴は平気だった。
勝手に軽蔑するならすればいい。
そんなこと構うもんか。
今大切なのは、傷ついたショーンの心を温かく包んでやることなんだから。
1
あなたにおすすめの小説
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
平民なのに王子の身代わりをすることになり、氷の従者に教育されることになりました
律子
BL
牢に捕まった平民のカイルが突然連れていかれた場所はなんと王宮!
そこで自分と瓜二つの顔を持つ第二王子に会い、病弱な彼の「身代わり」をさせられることになった!
突然始まった王子生活でカイルを導くのは、氷のように冷たい美貌の従者・アウレリオ。
礼儀作法から言葉遣い、歩き方まで──何もかもを厳しく“教育”される日々。
でも、そうして過ごすうちにアウレリオの厳しいだけではない一面が見えてくることに。
二人は「身代わり生活」の相棒となり、試練を乗り越えていくが…。
だんだんと相手に向ける感情が『相棒』に向ける信頼だけではなくなっていく…!?
【完結】毎日きみに恋してる
藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました!
応援ありがとうございました!
*******************
その日、澤下壱月は王子様に恋をした――
高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。
見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。
けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。
けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど――
このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。
翼が生えた王子は辺境伯令息に執心される
尾高志咲/しさ
BL
「ふわふわな翼が!背中に?」
慌てる僕の元にやってきたのは無表情な美形婚約者。どどどうする!?
――ファンタン王国の第五王子ミシューの背中に、ある朝目覚めたら真っ白な翼が生えていた。原因がわからずに慌てふためいていると、婚約者の辺境伯令息エドマンドが会いにやってくる。美形でいつも無表情なエドマンドは王都から離れた領地にいるが、二月に一度は必ずミシューに会いにくるのだ。翼が生えたことを知られたくないミシューは、何とかエドマンドを追い返そうとするのだが…。
◇辺境伯令息×王子
◇美形×美形
◆R18回には※マークが副題に入ります。
◆誰にも言えない秘密BLアンソロジー寄稿作品を改題・改稿しました。本編(寄稿分)を加筆し続編と番外編を追加。ほのぼの溺愛ファンタジーです。
僕がそばにいる理由
腐男子ミルク
BL
佐藤裕貴はΩとして生まれた21歳の男性。αの夫と結婚し、表向きは穏やかな夫婦生活を送っているが、その実態は不完全なものだった。夫は裕貴を愛していると口にしながらも、家事や家庭の負担はすべて裕貴に押し付け、自分は何もしない。それでいて、裕貴が他の誰かと関わることには異常なほど敏感で束縛が激しい。性的な関係もないまま、裕貴は愛情とは何か、本当に満たされるとはどういうことかを見失いつつあった。
そんな中、裕貴の職場に新人看護師・宮野歩夢が配属される。歩夢は裕貴がΩであることを本能的に察しながらも、その事実を意に介さず、ただ一人の人間として接してくれるαだった。歩夢の純粋な優しさと、裕貴をありのまま受け入れる態度に触れた裕貴は、心の奥底にしまい込んでいた孤独と向き合わざるを得なくなる。歩夢と過ごす時間を重ねるうちに、彼の存在が裕貴にとって特別なものとなっていくのを感じていた。
しかし、裕貴は既婚者であり、夫との関係や社会的な立場に縛られている。愛情、義務、そしてΩとしての本能――複雑に絡み合う感情の中で、裕貴は自分にとって「真実の幸せ」とは何なのか、そしてその幸せを追い求める覚悟があるのかを問い始める。
束縛の中で見失っていた自分を取り戻し、裕貴が選び取る未来とは――。
愛と本能、自由と束縛が交錯するオメガバースの物語。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる