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第1章 魔女の呪いと変わる世界
魔女との契約(2)
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それから俺はこの契約内容を十分に問いただした。
その内容はこうだ。
・俺の余命は1年
・1年以内に真実の愛とやらを手に入れられれば、生命は還され、このヘンテコな呪いは解ける。
・ヘンテコな呪いの内容は触れた相手を好きにさせてしまう。
・触れるという行為は、物を媒介する形でも伝わる。例えば衣服の上からでも効果がある。
・触れられると俺への警戒心は薄れ、服従したくなってしまう。
・離れれば効果はなくなる。しかし触れた時の感触や感情の記憶が消えるわけではなく、触れる度にその記憶は蓄積していく。
「それで、真実の愛って具体的にどうすればいいんだ?」
「それはもう、ワタシの心の若さ……つまり萌えを最大限に引き出してもらうしかないわ☆ ワタシの中で尊さが爆発した時、そのペンダントは壊れ、あなたの生命は戻り、呪いも解ける」
……この魔女、本当にダメだ。
あまりにバカげている。
「なぁ、ところでサムとラルフには何て説明をしたんだ?」
「彼らが話してくれた通りよ。あなたが1年で死ぬということだけ。この呪いのことは話していないわ。そしたらラブな展開も生まれないからね☆ これからラブな展開が生まれるように、あなたの生命はワタシを倒したら還るといったわ。ワタシを倒したら呪いはもう解けないから、もちろんウ・ソ・だけど☆」
「ふざけるなよ!!!」
俺が大声を上げると、辺りはしんとした。
まずい、ここは病院だった。
それに誰もいない中で声を荒げたら、変に思われてしまう。
静寂の中、ペンダントから今までのハイテンションとは違う、少し低い声が聞こえてきた。
「そうかしら? あなたにとっても少しは都合が良いと思うの」
……どういうことだ?
また俺の頭の中に新しい疑問が浮かぶ。
「生命を奪う時、あなたの中の記憶を見たわ。……あなた、あのお友達のイケメン君が好きなんでしょう」
―――頭が真っ白になった。
俺がサムのことを"好き"。
それは誰にも言ってはいけない秘密であった。
男が男を好き。
それはこの世界で禁忌とされないまでも、堂々と他人に口外できるほど、まだ受け入れられるものではなかった。
「ずっと大人しく、慎ましく過ごしてきたようだけど、ワタシの力を手に入れたあなたは今や男をたぶらかし放題。これを活かさない手はないでしょう。そしてワタシは若さを手に入れられる、お互い得じゃない」
「でも、そんな力に頼ったって、何も……」
「そうかもしれないわね。でもそんなことを言ったって、何もしなければあなたは一年後に、死ぬの」
"死ぬ"
その一言が、俺の中でずしんと心の奥深くに落ちた。
さっきはサムを助けられて、それで俺の命は十分なのかもしれない、そんな風に思った。
この世界に生まれ、村を守るため弓の修練に励み、俺は死だっていつ訪れてもいいように覚悟していた。
魔女の調査だって、死を覚悟して臨んだもののはずだった。
そんな風に思っていたけれど、今生きられる希望を提示されて、俺はまた大きく揺れていた。
……死にたくない。
こんな馬鹿げた話でも、俺はそれを完遂することで、その後の人生を歩むことができる。
そうだ。それが正しい。少なくとも今は、魔女に協力するしかない。
「……わかった」
俺がそう返事をすると、安心したように魔女は言った。
「そう! そう言ってくれて良かったわ。本当は超絶美男子のあのイケメンくんの恋愛が見たかった所だけど☆ あなたが攻めるのも悪くないわ。ちなみにワタシはイケメンくんでもあの逞しい虎さんでも構わないのよ。ワタシを満足させてくれる、真実の愛が手に入れば別に構わないのだもの。忘れないでね」
「そんな、見境のない……」
「おーい! エル。起きてるか?……開けるぞ」
俺が話そうとすると、突然、廊下の方からラルフの声が聞こえてきた。
「あら、長く話し過ぎてしまったわね。ところで友達のイケメンくん、どうやら一人でワタシを倒しにくるみたいよ。今晩中には出発しそう。どうするのかちゃんと考えてね」
その声を最後に、ペンダントは静かになった。
ラルフが病室に入ってきて、いつもと変わらぬ様子であいさつをすると、窓際の椅子に腰かけた。
病室の椅子は背もたれもない小さな椅子で、ラルフが座ると椅子はすっぽり隠れる。
あまりに大きさが不釣り合いだ。
「昼飯ちゃんと食えたらしくて、良かったな。ところでお前、あいつ、サムの野郎とはちゃんと話せたのか」
俺の頭の中は、さっきまでの現実離れした出来事に追いついていなかった。
サムに好きになってもらう。
サムに真実の愛をもらう。
そうしなければ俺は一年後に……。
「どうした? おい。まだ頭がボーっとするのか」
そういってラルフは大きな手のひらを俺の顔の前でヒラヒラと振っていた。
そこで俺は我に返った。
「そうだ! ラルフ、頼みがあるんだ」
「おう、オレにやれることなら、遠慮なく言ってくれや」
「サムの事が心配なんだ。なんだか思いつめた顔でさ。今晩魔女を倒すために、1人で出かけていくみたいだ」
そういうと、ラルフは不思議そうな顔でこう言った。
「それは心配だが、どうしてそんなことを知っているんだ? 俺には何も言っていなかったが……」
……まずい、さっきの内容を話すわけにはいかない。
魔女から教えてもらったなんて口が裂けてもいえるわけがない。
俺が考えていると、ラルフはまた大きな手のひらを俺の顔の前で振り出した。
「おーい、またどっかに行ってるぞー。ってウオッ!?」
俺は顔の前で振られていたその手の手首をつかむと、ラルフが急にびくっと体を震わせた。
俺らはお互いそのまま顔を見合わせた、ラルフはどことなく緊張しているようだった。
「……頼む。……ラルフにしか、頼めないんだ」
そういうと、ラルフはそれ以上何も聞かずに、頷くと病室を出ていった。
ああ、この能力、悪くはないのかもしれない。
こんなラルフを1日に2度も見られるなんて。
そして、俺はその力に少しずつ溺れて、堕ちていくことになった。
その内容はこうだ。
・俺の余命は1年
・1年以内に真実の愛とやらを手に入れられれば、生命は還され、このヘンテコな呪いは解ける。
・ヘンテコな呪いの内容は触れた相手を好きにさせてしまう。
・触れるという行為は、物を媒介する形でも伝わる。例えば衣服の上からでも効果がある。
・触れられると俺への警戒心は薄れ、服従したくなってしまう。
・離れれば効果はなくなる。しかし触れた時の感触や感情の記憶が消えるわけではなく、触れる度にその記憶は蓄積していく。
「それで、真実の愛って具体的にどうすればいいんだ?」
「それはもう、ワタシの心の若さ……つまり萌えを最大限に引き出してもらうしかないわ☆ ワタシの中で尊さが爆発した時、そのペンダントは壊れ、あなたの生命は戻り、呪いも解ける」
……この魔女、本当にダメだ。
あまりにバカげている。
「なぁ、ところでサムとラルフには何て説明をしたんだ?」
「彼らが話してくれた通りよ。あなたが1年で死ぬということだけ。この呪いのことは話していないわ。そしたらラブな展開も生まれないからね☆ これからラブな展開が生まれるように、あなたの生命はワタシを倒したら還るといったわ。ワタシを倒したら呪いはもう解けないから、もちろんウ・ソ・だけど☆」
「ふざけるなよ!!!」
俺が大声を上げると、辺りはしんとした。
まずい、ここは病院だった。
それに誰もいない中で声を荒げたら、変に思われてしまう。
静寂の中、ペンダントから今までのハイテンションとは違う、少し低い声が聞こえてきた。
「そうかしら? あなたにとっても少しは都合が良いと思うの」
……どういうことだ?
また俺の頭の中に新しい疑問が浮かぶ。
「生命を奪う時、あなたの中の記憶を見たわ。……あなた、あのお友達のイケメン君が好きなんでしょう」
―――頭が真っ白になった。
俺がサムのことを"好き"。
それは誰にも言ってはいけない秘密であった。
男が男を好き。
それはこの世界で禁忌とされないまでも、堂々と他人に口外できるほど、まだ受け入れられるものではなかった。
「ずっと大人しく、慎ましく過ごしてきたようだけど、ワタシの力を手に入れたあなたは今や男をたぶらかし放題。これを活かさない手はないでしょう。そしてワタシは若さを手に入れられる、お互い得じゃない」
「でも、そんな力に頼ったって、何も……」
「そうかもしれないわね。でもそんなことを言ったって、何もしなければあなたは一年後に、死ぬの」
"死ぬ"
その一言が、俺の中でずしんと心の奥深くに落ちた。
さっきはサムを助けられて、それで俺の命は十分なのかもしれない、そんな風に思った。
この世界に生まれ、村を守るため弓の修練に励み、俺は死だっていつ訪れてもいいように覚悟していた。
魔女の調査だって、死を覚悟して臨んだもののはずだった。
そんな風に思っていたけれど、今生きられる希望を提示されて、俺はまた大きく揺れていた。
……死にたくない。
こんな馬鹿げた話でも、俺はそれを完遂することで、その後の人生を歩むことができる。
そうだ。それが正しい。少なくとも今は、魔女に協力するしかない。
「……わかった」
俺がそう返事をすると、安心したように魔女は言った。
「そう! そう言ってくれて良かったわ。本当は超絶美男子のあのイケメンくんの恋愛が見たかった所だけど☆ あなたが攻めるのも悪くないわ。ちなみにワタシはイケメンくんでもあの逞しい虎さんでも構わないのよ。ワタシを満足させてくれる、真実の愛が手に入れば別に構わないのだもの。忘れないでね」
「そんな、見境のない……」
「おーい! エル。起きてるか?……開けるぞ」
俺が話そうとすると、突然、廊下の方からラルフの声が聞こえてきた。
「あら、長く話し過ぎてしまったわね。ところで友達のイケメンくん、どうやら一人でワタシを倒しにくるみたいよ。今晩中には出発しそう。どうするのかちゃんと考えてね」
その声を最後に、ペンダントは静かになった。
ラルフが病室に入ってきて、いつもと変わらぬ様子であいさつをすると、窓際の椅子に腰かけた。
病室の椅子は背もたれもない小さな椅子で、ラルフが座ると椅子はすっぽり隠れる。
あまりに大きさが不釣り合いだ。
「昼飯ちゃんと食えたらしくて、良かったな。ところでお前、あいつ、サムの野郎とはちゃんと話せたのか」
俺の頭の中は、さっきまでの現実離れした出来事に追いついていなかった。
サムに好きになってもらう。
サムに真実の愛をもらう。
そうしなければ俺は一年後に……。
「どうした? おい。まだ頭がボーっとするのか」
そういってラルフは大きな手のひらを俺の顔の前でヒラヒラと振っていた。
そこで俺は我に返った。
「そうだ! ラルフ、頼みがあるんだ」
「おう、オレにやれることなら、遠慮なく言ってくれや」
「サムの事が心配なんだ。なんだか思いつめた顔でさ。今晩魔女を倒すために、1人で出かけていくみたいだ」
そういうと、ラルフは不思議そうな顔でこう言った。
「それは心配だが、どうしてそんなことを知っているんだ? 俺には何も言っていなかったが……」
……まずい、さっきの内容を話すわけにはいかない。
魔女から教えてもらったなんて口が裂けてもいえるわけがない。
俺が考えていると、ラルフはまた大きな手のひらを俺の顔の前で振り出した。
「おーい、またどっかに行ってるぞー。ってウオッ!?」
俺は顔の前で振られていたその手の手首をつかむと、ラルフが急にびくっと体を震わせた。
俺らはお互いそのまま顔を見合わせた、ラルフはどことなく緊張しているようだった。
「……頼む。……ラルフにしか、頼めないんだ」
そういうと、ラルフはそれ以上何も聞かずに、頷くと病室を出ていった。
ああ、この能力、悪くはないのかもしれない。
こんなラルフを1日に2度も見られるなんて。
そして、俺はその力に少しずつ溺れて、堕ちていくことになった。
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