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第3話:佐野昌志は知っている

5.知っていること

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俺は放送室に入ると、昌志が1人でいたので連れ出して俺は部室に戻った。
部室には嘉瀬君と、チラシ配りが終わった戻ってきたのであろうそーいちと今野君がいた。

「君が来るとは思ってたけど無言でここに連れてこられるとは思ってなかったよ。」

昌志はそう言った。

「え、何?ひろきどうしたの?」

そーいちはそう言った。

「俺、お前から聞きたいこと…というか、この部室について色々聞いてないことあると思うんだけど。」

俺は昌志にそう言った。そーいちたちもこれは聞く意味があると思うし、ここで話そう。

「まあ、そうだね。聞かれてないからね。」

昌志はそう言った。

「あの、その前に聞きたいんですけど、その人誰ですか?」

今野君はそう言った。あ、そうだ。今野君は知らないんだった。

「こいつは…」
「僕は佐野昌志。放送部員であり、生徒会の人でもあるよ。2年6組にいるから、何かあったらおいで。」

俺が紹介しようとしたのを遮って昌志はそう言った。

「あ、もしかしてこの部室を紹介してくれた人ですか!?」

今野君はそう言った。

「そうそう。君は今野渚君だよね?もしかして、ヒロ君から僕のこと聞いた?」
「はい、少しだけ。って、オレのこと知ってるんですか!?」
「うん、ヒロ君から聞いてる。」

昌志はそう言った。おい、俺は今野君の名前一回も出したことないぞ。そーいちの後輩とは言ったかもしれないけど。

「で、何が聞きたいんだっけ?」

昌志は俺にそう言った。

「だから、この部室のこと。」
「話す前にヒロ君がどこまで知ってるのか知りたいなあ。」

昌志はそう言った。腹立つなあ。

「まず、この部室を掃除してた時なんだけど。なんでここにあるんだろうって物が出てきたんだよ。」
「色んな服や道具がいっぱいあったよな。」

そーいちはそう言った。

「そうそう、メイド服とかエプロンとかありましたよね。」

今野君はそう言い、そーいちは

「昔のヒーローものの変身道具が出てきた時はめっちゃ興奮したよな!」

と笑顔でそう言った。

「おかしいんだよ!そんなの普通置いてあるわけないだろ、ここ学校だよ!」

俺はそう言った。

「へえ、それでヒロ君はどう思ったの?」

昌志は少しニヤッとして言った。

「何かあると思って、昌志に聞こうと思ったんだよ。昌志なら知ってると思って。」
「なるほどね。で?」
「…は?」
「さっきヒロ君が『まず』から話始めたから、まだ『他に知ってること』があるんだろ?」

昌志はそう言った。

「…まあ、そうだけど。」

俺がそう言うと、

「じゃあ、それも話して。」

と、昌志はそう言った。

「これは、るいから聞いたんだけど。この部室についての噂があるってこと。」
「噂?」

そーいちはそう言った。

「うん。昔、ここの学校共学だっただろ?」
「オレらが生まれる前の話ですよね?」

今野君はそう言った。

「そう。その時の話。ある日、この教室で亡くなられた女子生徒がいたんだって。その女子生徒は歌を歌うのが好きで、亡くなられる前、ここでよく歌ってたんだって。女子生徒が亡くなられてから数日経った日のこと、放課後、男子生徒がここの教室に向かって歩いてたら、遠くから女性の鼻歌が聞こえてきたらしいんだ。その鼻歌は教室に近づくにつれてどんどん大きくなって。しかも、その鼻歌は亡くなられた女子生徒がよく歌ってた歌に似ていて。女子生徒の知り合いで、歌ってるところをよく聞いてた男子生徒は怖くなって、恐る恐る教室のドアを開けると…。」
「開けると…?」

嘉瀬君はそう言った。

「…その男子生徒は教室で倒れてたらしいんだ。それを当時いた先生が見つけて保健室に運んで、男子生徒に話を聞いたんだけどドアを開けてからの記憶がないらしくて。」
「ええっ何ですかその話。めっちゃ怖いじゃないですか。」

嘉瀬君はそう言った。

「それがどうかしたのか?」

そーいちはそう言った。

「お前、この噂知っておきながらもこの部室俺たちに勧めただろ。」

俺は昌志にそう言った。

「そうだけど?」

昌志はそう言った。

「なんでその噂があること教えないんだよ!」
「だってヒロ君聞いてないじゃない。」
「そりゃ、そんな噂あること知らなかったからな!」
「ヒロ君が知らなかっただけだよ。この噂結構有名だよ。」
「え、そうなの?」
「うん。」

昌志はそう言った。るい、「今日初めて知った噂」だって言ってたけど…。

「あーそういえば、俺ここの学校に入学すること決めた時、そんな感じの噂友達に言われたことあった。まさかそれがここの教室だったとはなあ。」

そーいちはそう言った。

「まあ、面白そうだからいいじゃないですか。」

今野君はそう言った。

「どこが!もしかしたら、『こんな噂あるから入部したくない』って人が増えるかもしれないんだぞ!」
「えー、面白いと思うんだけど。」

そーいちはそう言った。

「みんな、ここでいいって雰囲気だからいいんじゃない?ヒロ君はまだ正式な部員じゃないんだしさ。」

昌志はそう言った。

「え、そうなんですか!?」

嘉瀬君はそう言った。

「ああ、まあ…。てか、俺は部室の場所を変えるかどうかで話してるんじゃなく、この教室は何なのか聞きたいんだよ。」
「あの、ヒロ先輩。」

そう言ったのは今野君だった。…ヒロ先輩?俺のこと?

「…何?」
「なんで昌志先輩に聞くんですか?」
「ここだけの話だけど、佐野先輩なんでも知ってるんですよ。」

そう言ったのは嘉瀬君だった。

「ちょっと、嘉瀬君。僕が知ってるのはここの学校のことだけで、全て知ってる訳じゃないよ。」

昌志はそう言った。

「あ、これ佐野先輩が1日に1回は必ず言わないといけない決め台詞です。」

嘉瀬君はそう言った。

「え、何それ。」

俺はそう言った。

「じゃあ話を続けようか。」

昌志は俺が言ったことを無視して話を進めようとする。

「いや、決め台詞のことについて触れたいんだけど。」
「じゃあ部室の秘密については今度ってことでいいのかな?」
「…ごめんなさい、部室のこと教えて下さい。」

俺は諦めてそう言った。

「あ、ちょっと待って。」

そう言ったのはそーいちだった。

「え、何?」

俺はそう言った。

「ひろき、部室の秘密のことについて聞くって言ったけどなんで?ひろき的にそんなに重要なことなの?俺は聞いたら『へえ。』で終わる気しかしないんだけど。」
「まず、部室の噂が本当なのかどうかはっきりしないと。噂が嘘だったら、『嘘だから、入っても怖い思いはしないよ。』って言うことができるだろ。噂のせいで入りたいけど入れないとか、そーいちたちも入りたい人も損だと思う。あと、掃除の時に出てきたものは持ち主に返さないと。なんであるのか、この部室がなんなのかわかれば、持ち主もうわかるんじゃないかなって。」
「なるほどね。わかった。」

俺が言ったことに対して、そーいちはそう言った。まあ、こうは言ったけど実際1番昌志に聞きたいのは「面白そうなこと起きそうだから、ここを部室にしていいって言ったんだろ。」ってことだけど。

「じゃあ、話すね。これは、20年前の話。」

昌志はそう言った。
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