悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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沈黙は銀

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「お早う御座います義姉上、そして愛しのマイスウィートハート、マリアローゼ!」

突然扉が開いて、騒々しくジェレイドが入ってきた。
従僕は扉を開くので精一杯で、ジェレイドの来訪を告げる間もない。
その時にはもう、マリアローゼはシルヴァインという豪華な椅子に座らされていた。

「おはようございますレイさま」
「おはようございます、ジェレイド」

マリアローゼとミルリーリウムの挨拶ににこやかな微笑を見せたジェレイドは、マリアローゼを膝の上に抱き、後ろからがっちり抱きしめているシルヴァインに目を留めて、すうっと一瞬目を細める。

「おやおや、朝から暑苦しいね、シルヴァイン」
「おはようございます、叔父上。そんな謙遜なさらなくていいですよ、叔父上には敵いません」
「マリアローゼへの愛情なら、確かに僕には敵わないね」

爽やかな朝に、にこやかで剣呑な応酬が始まる。
龍と虎が背後のオーラにいそうな感じだ。
マリアローゼは微笑を保ったまま、二人の応酬を聞き流していた。
墓穴を掘るから、口出ししないように事前にシルヴァインに注意されている。

「では参りましょうか」

ぱん、と手袋をした手を打って、ミルリーリウムが立ち上がる。
譲る気が微塵もなさそうなシルヴァインに笑顔を向けて、ジェレイドはスッとミルリーリウムに肘を差し出した。
ミルリーリウムも心得ていて、その腕に手を絡めて歩き出す。
シルヴァインも後ろから抱きしめていたのを、胸元に抱きなおして、その後に続く。
マリアローゼは体力が刻一刻と奪われていくようで、そこだけが心配の種だった。

ふう、と唇を尖らせて溜息をついたマリアローゼに、ギラッファがシルヴァインの隣に並んで声をかける。

「お嬢様、ご用意の方は恙無く済んで御座いますので、ご安心下さい」
「……ありがとう、ファー。心が軽くなりましたわ」

別のことで悩んでいたのだが、ギラッファが知り得る心配事はお土産のお酒の件だ。

そう。
主人の顔色ひとつで、彼らは研ぎ澄まされた神経を使うのだ。
ルーナの前で安心して色々曝け出してしまっているが、淑女として気をつけなくてはいけない。
マリアローゼはにっこりとギラッファに微笑みかけた。

「ファー?まだそんな呼び方をしていたのか」

何故かシルヴァインが、呼び名に突っ込んできたので、マリアローゼはきょとん、とした。

「だって、呼び易いのですもの。ファーは嫌かしら」
「いいえ、お嬢様。愛称で呼んで頂けるなど、恐悦の極みでございます」

もっと幼かった時からの呼び名で、勿論その時は発音が難しかったからなのだが、今も出来れば短い方がいい。
ギラッファは、穏やかな笑みを更に深めて、マリアローゼに恭しく会釈をした。
大人の魅力たっぷりの、余裕ある対応だった。
穏やかイケメン大人枠が好きな女子だったら、倒れるほどの破壊力である。
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