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スライムが好敵手
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「アルクがどれだけ戦えるのか見たいので、ちょっと外行きましょう」
そうして連れてきたのは東の平原。
森の近く。
スライムがぴょこぴょこしてる場所。
「あのスライムを倒してみてください。森の中だと剣が木にぶつかって振りにくいと思うので、一撃入れたら森から出てくださいね。この辺りで戦って」
「うむ、分かった」
素直に王子は頷くと、森の中に少し入って、スライムを引き連れて出てきた。
ぴょいんぴょいんとスライムが王子にボディアタック。
王子はブンブン剣を振り回した。
「あぶっ…」
その剣が私の頭を掠める。
瞬間的に屈んで回避した私は思わずぶち切れて、そのままの姿勢から王子の足に狙いを定めて蹴りを入れる。
「…あっ…な、何だミア」
「何だじゃないですよ!めちゃくちゃ剣振り回すから、当たる所だったじゃないですか!」
「え……あ、気づかなかった……すまない」
確かに私も近寄り過ぎてたのは悪かったけど、周りを見ないで戦闘するのは駄目だ。
ソロで活動するなら別だけど、それでも周囲の障害物を認識していなければ、正確に剣を振るう事は出来ない。
スライムはぴょいんぴょいんと跳ねて、王子をどついている。
ダメージは金属鎧で弾かれているだろうけど、王子の身体は体当たりの衝撃で揺れていた。
いいぞ、もっとやれ!
頭を狙え、頭を!
思わず私はスライムを応援した。
そして、足元に光るものがあるので拾い上げると、ピンクの髪の毛。
私の髪の毛、ちょっと切れてた。
「見て下さいコレ。ミアちゃんは今日死にましたよ」
「……あ、…ああ……私は何という事を……」
言いながら指で摘んだ髪の毛をはらり、と落とすと、王子はそれを掌で受け止めた。
反射神経は中々いいな?
だが、追及の手は緩めない。
「アルクはもしかして公女様に私を殺してくるように言われた暗殺者ですか?殺したら返り咲けるんですか?守ってくれるんじゃないんですか?」
「うああ……違う、違う!それはない!守る!守りたいんだ!次からは気をつける!」
涙目になった王子を見て、私は漸く溜飲が下がった。
なので、こっくり頷いて、スライムを指し示すようにクイッと顎を上げる。
無言の仕草で分かったらしく、王子はぐすぐす言いながら剣を構えて、スライムを倒し始めた。
え……?
スライム倒すのって、そんなに難しいの……?
私、何か間違ってたのかな?
王子は十分経ってもスライムとやり合っている。
はあはあ言いながら、王子はぶんぶん剣を振っているので、思わず心配になってしまった。
「あの、アルク、大丈夫?」
「……はあ、はあ、大丈夫だ……見ていてくれミア!必ず倒してみせる!」
キラン!と王子スマイルを見せてくるけどさ。
相手スライムな。
雑魚キャラナンバーワンのスライムパイセンな。
ゴブリンはまだ分かるよ?
道具や武器を使う知能もあるわけだし。
でもスライムて。
私は首を傾げて、森の中にいる一匹を短剣で突いて、森の外へ出る。
ぴょいんぴょいんと勢いよく跳ねて、体当たりしてくるので、回避。
次は回避しながら一撃を入れたら、呆気なく絶命した。
うん、ですよね?
ていうか、スライムってゼリーみたいだけど、死ぬと粘液がもっと水っぽくなって溶けるの面白いなぁ。
思わず私はしゃがんで観察した。
小さいから核《コア》もないのかな?
魔石は見当たらない。
スライムの主食って何だろう?
草?草かな?
虫も食べてそうだけど、雑食?
でも、普通の小さいスライムは毒はないし。
この粘液とか何かに使えないのかなあ?
「よし、倒したぞ!」
私がスライム観察している間に倒せたらしい。
額の汗を拭って、輝かしい笑顔を向けてくるけど、やっぱりスライム雑魚じゃん。
「はい次」
私が言葉少なに言うと、王子はちょっぴり眉を下げて、森からスライムを連れてきた。
そしてまた死闘を繰り広げる。
何で倒せないのか?といえば、攻撃が当たってないからだよね。
当たりさえすれば倒せる。
「アルク、スライムの動きをちゃんと見て。無軌道に見えるけど、跳ねたらだいたいどの辺にくるか分かるでしょ。動きを予測して当ててみて」
「ん、む、…わ、分かった」
スライムと戦いながら、王子は頷く。
私はスライム考察に戻った。
例えば、保湿成分やビタミン系の栄養素のある草を与えて育てたスライムを、潰す。
その粘液は化粧品というか化粧水?化粧粘液?になったりするのかな?
でも飼っている内に情が移りそうだから、多分、潰したら泣く。
だったら、適当に潰したスライムに薬効成分を混ぜて……それ、スライムである意味ある?
ないかな?
ただ、粘液を作る手間が省けるだけという気もする。
「倒したぞ、ミア!」
「次」
いちいち勝利宣言してくる王子に、私は淡々と指令を出す。
さっきよりは早く倒せてるので、アドバイスはちゃんと役にたっているのかもしれない。
「くそっ……この、ちょこまかと……!」
言いながら戯れている姿を少し眺める。
平和だなぁ。
そうして連れてきたのは東の平原。
森の近く。
スライムがぴょこぴょこしてる場所。
「あのスライムを倒してみてください。森の中だと剣が木にぶつかって振りにくいと思うので、一撃入れたら森から出てくださいね。この辺りで戦って」
「うむ、分かった」
素直に王子は頷くと、森の中に少し入って、スライムを引き連れて出てきた。
ぴょいんぴょいんとスライムが王子にボディアタック。
王子はブンブン剣を振り回した。
「あぶっ…」
その剣が私の頭を掠める。
瞬間的に屈んで回避した私は思わずぶち切れて、そのままの姿勢から王子の足に狙いを定めて蹴りを入れる。
「…あっ…な、何だミア」
「何だじゃないですよ!めちゃくちゃ剣振り回すから、当たる所だったじゃないですか!」
「え……あ、気づかなかった……すまない」
確かに私も近寄り過ぎてたのは悪かったけど、周りを見ないで戦闘するのは駄目だ。
ソロで活動するなら別だけど、それでも周囲の障害物を認識していなければ、正確に剣を振るう事は出来ない。
スライムはぴょいんぴょいんと跳ねて、王子をどついている。
ダメージは金属鎧で弾かれているだろうけど、王子の身体は体当たりの衝撃で揺れていた。
いいぞ、もっとやれ!
頭を狙え、頭を!
思わず私はスライムを応援した。
そして、足元に光るものがあるので拾い上げると、ピンクの髪の毛。
私の髪の毛、ちょっと切れてた。
「見て下さいコレ。ミアちゃんは今日死にましたよ」
「……あ、…ああ……私は何という事を……」
言いながら指で摘んだ髪の毛をはらり、と落とすと、王子はそれを掌で受け止めた。
反射神経は中々いいな?
だが、追及の手は緩めない。
「アルクはもしかして公女様に私を殺してくるように言われた暗殺者ですか?殺したら返り咲けるんですか?守ってくれるんじゃないんですか?」
「うああ……違う、違う!それはない!守る!守りたいんだ!次からは気をつける!」
涙目になった王子を見て、私は漸く溜飲が下がった。
なので、こっくり頷いて、スライムを指し示すようにクイッと顎を上げる。
無言の仕草で分かったらしく、王子はぐすぐす言いながら剣を構えて、スライムを倒し始めた。
え……?
スライム倒すのって、そんなに難しいの……?
私、何か間違ってたのかな?
王子は十分経ってもスライムとやり合っている。
はあはあ言いながら、王子はぶんぶん剣を振っているので、思わず心配になってしまった。
「あの、アルク、大丈夫?」
「……はあ、はあ、大丈夫だ……見ていてくれミア!必ず倒してみせる!」
キラン!と王子スマイルを見せてくるけどさ。
相手スライムな。
雑魚キャラナンバーワンのスライムパイセンな。
ゴブリンはまだ分かるよ?
道具や武器を使う知能もあるわけだし。
でもスライムて。
私は首を傾げて、森の中にいる一匹を短剣で突いて、森の外へ出る。
ぴょいんぴょいんと勢いよく跳ねて、体当たりしてくるので、回避。
次は回避しながら一撃を入れたら、呆気なく絶命した。
うん、ですよね?
ていうか、スライムってゼリーみたいだけど、死ぬと粘液がもっと水っぽくなって溶けるの面白いなぁ。
思わず私はしゃがんで観察した。
小さいから核《コア》もないのかな?
魔石は見当たらない。
スライムの主食って何だろう?
草?草かな?
虫も食べてそうだけど、雑食?
でも、普通の小さいスライムは毒はないし。
この粘液とか何かに使えないのかなあ?
「よし、倒したぞ!」
私がスライム観察している間に倒せたらしい。
額の汗を拭って、輝かしい笑顔を向けてくるけど、やっぱりスライム雑魚じゃん。
「はい次」
私が言葉少なに言うと、王子はちょっぴり眉を下げて、森からスライムを連れてきた。
そしてまた死闘を繰り広げる。
何で倒せないのか?といえば、攻撃が当たってないからだよね。
当たりさえすれば倒せる。
「アルク、スライムの動きをちゃんと見て。無軌道に見えるけど、跳ねたらだいたいどの辺にくるか分かるでしょ。動きを予測して当ててみて」
「ん、む、…わ、分かった」
スライムと戦いながら、王子は頷く。
私はスライム考察に戻った。
例えば、保湿成分やビタミン系の栄養素のある草を与えて育てたスライムを、潰す。
その粘液は化粧品というか化粧水?化粧粘液?になったりするのかな?
でも飼っている内に情が移りそうだから、多分、潰したら泣く。
だったら、適当に潰したスライムに薬効成分を混ぜて……それ、スライムである意味ある?
ないかな?
ただ、粘液を作る手間が省けるだけという気もする。
「倒したぞ、ミア!」
「次」
いちいち勝利宣言してくる王子に、私は淡々と指令を出す。
さっきよりは早く倒せてるので、アドバイスはちゃんと役にたっているのかもしれない。
「くそっ……この、ちょこまかと……!」
言いながら戯れている姿を少し眺める。
平和だなぁ。
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