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武器屋デビュー
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街の地図を片手に、私と王子は武器屋へと来ていた。
外で王子なんて呼べないから、私は彼をアルクと呼ぶことにしたので、それも伝えた。
何なら名乗る時もそれでいいと思う。
私もいちいちミーティシアなんて名乗っていないから。
短くて呼びやすい方が平民ぽくていいじゃない?
私にとっても初めての武器屋だ。
まさか王子と武器屋デビューするなんて思ってもみなかった。
未来なんてほんと分かんないわ。
色々な武器を眺めつつ、私も手に取ってみる。
「店主、武器を見せてもらえぬか」
「へえ、お客さんは剣をお探しで?」
「よく分かったな。良い物があれば買い上げてやろう。ここへ持て」
「……へ、へぇ……」
私は思わず、背後から王子の頭を手頃な盾でスパコン!と叩いた。
「え、え?何だ、ミア」
「喋り方、その偉そうな喋り方やめて」
「いや、……うむ、分かった」
王子ですって顔に書いてあるんだよ!
ただでさえ、そのキラキラ王子の顔はさあ!
目を離すとすぐこれだ。
「それに、とりあえず、あの中から選んでください」
私はビシっと指差した。
空の酒樽みたいな木の樽に、剣が何本も突き刺さって置いてある。
どれでも10銀貨、と張り紙もあった。
「おじさーん。持ってこなくて良いです。安いのから選ぶので!」
私は奥へと引っ込んだ店主に声をかけて、渋々安売りの剣が置いてある樽から剣を抜き出して見ている王子を見守った。
剣の良し悪しは分からない。
聞きたい専門家も今は地下迷宮だ。
あっ、そうだ。
私も弓矢が欲しかったんだった。
今のところ大人しく剣を選んでいる王子を横目に、私も弓矢を見る。
矢筒に、弓に、矢。
余り弦に張りが有りすぎても、上手くひけなさそう。
適度に引ける弓を選んで、矢は……これから練習中なので、一番安いのを十本くらい選ぶ。
矢筒は今後も買い換えるという事はそうそうなさそうだから、軽くて丈夫そうなのを選んだ。
「えーと、弓が7銀貨、矢が1銀貨、矢筒が5銀貨で……」
「10銀貨!また買い物にくるから、10銀貨にしてください!ねっ?」
小首を傾げてお願いしてみると、おじさんはしょうがないなあ、と笑顔になった。
「お嬢ちゃんは可愛いから、10銀貨にまけておくよ。それと、古くて良いならこれもおまけしよう」
おじさんが付けてくれたのは、矢筒に弓を装着できるベルトだ。
私が笑顔を向けると、おじさんは手早く矢筒にそれを装着してくれた。
当て布の部分に柔らかい素材が使われていて、使うときに引き抜く感じ。
良い物になると、下部分を完全に覆うような皮袋の物もあるらしいし、鉄で作られた弓もあるそう。
鉄弓は折り畳みが可能で持ち歩きやすいのと、弦を巻く事が出来るので、射程距離も調整出来るらしい。
何か、かっこいい。
おじさんまでかっこよく見えた。
「上達したら買いに来ますね!」
「おう!待ってるよ!手入れに必要な砥石なんかもあるからな、気軽においで!」
「わあ!そうしますね」
私とおじさんがキャッキャしていると、漸く選んだのか、王子が一振りの剣を持ってきた。
お手入れセット3銀貨に、一応鉄の小盾、腕に装着可能なやつを10銀貨でつける。
「分かってるよ、お手入れセットはおまけだ!20銀貨でどうだ!」
「わあ!おじさま素敵!それでお願いします」
ドヤ顔になったおじさんに20銀貨を支払う。
そこまでお金には困っていないが、一応値切るのも交渉の内。
店として懐は痛まなかったとして、今日浮いた6銀貨は私にとって二日分の宿賃である。
ここ大事。
さらに薬草依頼で数回分の金額だと思うと、嬉しさもひとしおです。
はぁ、良い買い物した。
「ミアは楽しそうだな」
「え?買い物楽しいじゃないですか。私、今日初めて武器屋に来たんですよ。アルクと一緒」
そう言えば、王子はほんのり頬を染めた。
「こ、この後はどうするんだ?」
「そうですねぇ。アルクがどれだけ戦えるのか見たいので、ちょっと外行きましょう」
外で王子なんて呼べないから、私は彼をアルクと呼ぶことにしたので、それも伝えた。
何なら名乗る時もそれでいいと思う。
私もいちいちミーティシアなんて名乗っていないから。
短くて呼びやすい方が平民ぽくていいじゃない?
私にとっても初めての武器屋だ。
まさか王子と武器屋デビューするなんて思ってもみなかった。
未来なんてほんと分かんないわ。
色々な武器を眺めつつ、私も手に取ってみる。
「店主、武器を見せてもらえぬか」
「へえ、お客さんは剣をお探しで?」
「よく分かったな。良い物があれば買い上げてやろう。ここへ持て」
「……へ、へぇ……」
私は思わず、背後から王子の頭を手頃な盾でスパコン!と叩いた。
「え、え?何だ、ミア」
「喋り方、その偉そうな喋り方やめて」
「いや、……うむ、分かった」
王子ですって顔に書いてあるんだよ!
ただでさえ、そのキラキラ王子の顔はさあ!
目を離すとすぐこれだ。
「それに、とりあえず、あの中から選んでください」
私はビシっと指差した。
空の酒樽みたいな木の樽に、剣が何本も突き刺さって置いてある。
どれでも10銀貨、と張り紙もあった。
「おじさーん。持ってこなくて良いです。安いのから選ぶので!」
私は奥へと引っ込んだ店主に声をかけて、渋々安売りの剣が置いてある樽から剣を抜き出して見ている王子を見守った。
剣の良し悪しは分からない。
聞きたい専門家も今は地下迷宮だ。
あっ、そうだ。
私も弓矢が欲しかったんだった。
今のところ大人しく剣を選んでいる王子を横目に、私も弓矢を見る。
矢筒に、弓に、矢。
余り弦に張りが有りすぎても、上手くひけなさそう。
適度に引ける弓を選んで、矢は……これから練習中なので、一番安いのを十本くらい選ぶ。
矢筒は今後も買い換えるという事はそうそうなさそうだから、軽くて丈夫そうなのを選んだ。
「えーと、弓が7銀貨、矢が1銀貨、矢筒が5銀貨で……」
「10銀貨!また買い物にくるから、10銀貨にしてください!ねっ?」
小首を傾げてお願いしてみると、おじさんはしょうがないなあ、と笑顔になった。
「お嬢ちゃんは可愛いから、10銀貨にまけておくよ。それと、古くて良いならこれもおまけしよう」
おじさんが付けてくれたのは、矢筒に弓を装着できるベルトだ。
私が笑顔を向けると、おじさんは手早く矢筒にそれを装着してくれた。
当て布の部分に柔らかい素材が使われていて、使うときに引き抜く感じ。
良い物になると、下部分を完全に覆うような皮袋の物もあるらしいし、鉄で作られた弓もあるそう。
鉄弓は折り畳みが可能で持ち歩きやすいのと、弦を巻く事が出来るので、射程距離も調整出来るらしい。
何か、かっこいい。
おじさんまでかっこよく見えた。
「上達したら買いに来ますね!」
「おう!待ってるよ!手入れに必要な砥石なんかもあるからな、気軽においで!」
「わあ!そうしますね」
私とおじさんがキャッキャしていると、漸く選んだのか、王子が一振りの剣を持ってきた。
お手入れセット3銀貨に、一応鉄の小盾、腕に装着可能なやつを10銀貨でつける。
「分かってるよ、お手入れセットはおまけだ!20銀貨でどうだ!」
「わあ!おじさま素敵!それでお願いします」
ドヤ顔になったおじさんに20銀貨を支払う。
そこまでお金には困っていないが、一応値切るのも交渉の内。
店として懐は痛まなかったとして、今日浮いた6銀貨は私にとって二日分の宿賃である。
ここ大事。
さらに薬草依頼で数回分の金額だと思うと、嬉しさもひとしおです。
はぁ、良い買い物した。
「ミアは楽しそうだな」
「え?買い物楽しいじゃないですか。私、今日初めて武器屋に来たんですよ。アルクと一緒」
そう言えば、王子はほんのり頬を染めた。
「こ、この後はどうするんだ?」
「そうですねぇ。アルクがどれだけ戦えるのか見たいので、ちょっと外行きましょう」
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