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第75話 よし、国を買おう!
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「ちょっとまったぁぁぁぁ!」
開いていた扉から、王宮の食堂に飛び込んだ。俺に続きルミアーナも部屋に入る。
「無様ですわね、セバスチャンお兄様。オホホホホホホホホホ」
開口一番に、セバスチャン国王を罵るルミアーナ。めちゃめちゃ楽しそうに笑っている。
王都市民を避難させる計画のなか、ルミアーナは副内務大臣のザーゴさんにも声をかけていた。
事情を知ったザーゴさんは、お城に留まる事を決断し、俺たちに城の内情を伝える役をかって出てくれた。
そして今、ザーゴさんは彼の執務室に設置したゲートを使い、俺たちを呼びにきてくれた。
サディスティア王国にアザトーイ王国が乗っ取られる寸前だったが、間に合って良かった。
「ルミアーナ王女!? 国外追放になったのではなかったのか!?」
ルミアーナを見て、以前の俺を思い出させる体型の男が狼狽えている。コイツがサディスティア王国の外務大臣だな。
「オホホ。相変わらずの体型ですわね、サディスティア王国の外務大臣様は」
「だ、黙らっしゃい! 国外追放となった者がその国に足を踏み入れる事は大罪ですぞ!」
「よいのだダマ! ルミアーナは俺様の奴隷になるために戻ってきたのだ」
ひょろ細い騎士によって、床に伏しているセバスチャン国王は、訳の分からない事をほざいている。殺しちゃおっかな。
「オホホ。相変わらず頭が悪いようですわね。セバスチャンお兄様は。しかも、先日クスノハさんに軽くのされたアホダインにのされている姿は滑稽ですわ」
現在の状況とザーゴさんからの情報も合わせて、親衛隊隊長のアホダインが裏切り者である事は確定している。
「ぼ、僕様を侮辱するとは、元姫様であろうと、許せませんね! あの時の小娘は僕様が油断をしていただけに過ぎません」
そう言ってアホダインが腰にぶら下げていたエストックを抜いた。
「見るがよい。僕様の芸術的な美技を! エ~レガントな薔薇の花びぃ~らが舞うかの様な美しぃ~き華麗な、僕様のぉ~、必殺のぉ~ローズら――――『ヘビーウェイト!』ギャフン」
鬱陶しい口上からのローズ何とかを、発動前に重力魔法で潰した。局所的な重力磁場でアホダインが、倒れているセバスチャン国王の上に重なるように倒れてグエグエ言っている。
「じゅ、重力魔法だと!? 何者だお前は!」
そうそうお目には掛からない重力魔法を見て、サディスティア王国のダマは目を見開いて俺を見ている。
「オホホ。セバスチャンお兄様、国が作ってしまった借金は、例え阿呆で馬鹿で糞虫のお兄様が元凶とはいえ、王家の責任。ダマ外務大臣、借金は如何程になりますか?」
重力魔法で押し潰されているセバスチャン国王が「あぐばぐぎやぐゆ」と何かを言おうとしているか分からない。しかし、どうせ碌な事を喋らないだろうから無視だ。
「は、白金貨4万3千枚だ」
白金貨4万3千枚は、現代の通貨に換算したら430億円相当だ。かなりの大金だが、これを理由に国を譲渡する金額かと言われたら全然少ない気がする。
「まあ! 随分と借金が膨らみましたわね。愚兄はよほど高価な銅を買ったようですわね」
わざとらしく笑うルミアーナ。ダマ外務大臣もニヤリと笑った。
「ええ、セバスチャン国王様には金とどう価格で、黄金色に磨かれた銅を販売させて頂けましたので」
また「ぐえぐえ」と赤い顔で何かを言おうとしているセバスチャン国王。無視だけど。
「流石は愚兄ですわね。頭のネジが全部外れていますわ。オホホホホホホ」
「ワハハハハハ」とダマも調子にのって笑っている。
「という訳でございますわ、アマノガワ国王陛下」
「アマノガワ?」
ダマが訝しげな目で俺をみる。
「わたくしの母国は、愚かな兄のせいでサディスティア王国に譲渡されようとしておりますわ。婚約者《フィアンセ》たるわたくしの母国をお救い下さいまし」
いささか芝居じみた物言いのルミアーナだが、まあ、打ち合わせ通りだ。
「よし、国を買おう!」
「はっ?」
鳩が豆鉄砲をくらった様な顔になったダマ。
「白金貨百万枚でどうかな」
現代通貨にして約一兆円。十万人規模の小国であるアザトーイ王国の年間予算からみたら百年分以上は有るだろう。
「ヒャ、ヒャク……。ふ、ふざけるな! そんな大金が世の中に存在するものかッ!」
「金《かね》ならな」
そう言って俺は、目の前の何もない空間に手を伸ばし、異空間収納から巨大ダイヤモンドを取り出した。
百面カットされたダイヤモンドは外からの光と、内部に閉じ込められた光とで眩く七色に輝いている。
「な、な、なんだ……それは」
巨大ダイヤモンドを見たダマは、顔を引き攣らせて「なんだ」と聞いてくる。
「ダイヤモンドだ。グレートファング王国の皇室鑑定士の鑑定書もあるぜ」
更に顔を引き攣らせるダマが黙った。
「ルミアーナ、俺はこのダイヤモンドをアザトーイ王国王室に渡す代わりにアザトーイ王国を買い取る。どうかな?」
「わたくしは異存はありませんわ。今のアザトーイ王国にサディスティア王国から借りたお金を返せる宛がございませんもの。愚か者のお兄様、如何されますか?」
そこで俺は重力魔法のヘビーウェイトを解く。三人の視線がセバスチャン国王に集まる。
「売ったッッ!!」
――――――――――
【作者より】
ファンタジー大賞が始まりました。
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「投票」は作品表紙ページにあります。
また感想などもお願いします
開いていた扉から、王宮の食堂に飛び込んだ。俺に続きルミアーナも部屋に入る。
「無様ですわね、セバスチャンお兄様。オホホホホホホホホホ」
開口一番に、セバスチャン国王を罵るルミアーナ。めちゃめちゃ楽しそうに笑っている。
王都市民を避難させる計画のなか、ルミアーナは副内務大臣のザーゴさんにも声をかけていた。
事情を知ったザーゴさんは、お城に留まる事を決断し、俺たちに城の内情を伝える役をかって出てくれた。
そして今、ザーゴさんは彼の執務室に設置したゲートを使い、俺たちを呼びにきてくれた。
サディスティア王国にアザトーイ王国が乗っ取られる寸前だったが、間に合って良かった。
「ルミアーナ王女!? 国外追放になったのではなかったのか!?」
ルミアーナを見て、以前の俺を思い出させる体型の男が狼狽えている。コイツがサディスティア王国の外務大臣だな。
「オホホ。相変わらずの体型ですわね、サディスティア王国の外務大臣様は」
「だ、黙らっしゃい! 国外追放となった者がその国に足を踏み入れる事は大罪ですぞ!」
「よいのだダマ! ルミアーナは俺様の奴隷になるために戻ってきたのだ」
ひょろ細い騎士によって、床に伏しているセバスチャン国王は、訳の分からない事をほざいている。殺しちゃおっかな。
「オホホ。相変わらず頭が悪いようですわね。セバスチャンお兄様は。しかも、先日クスノハさんに軽くのされたアホダインにのされている姿は滑稽ですわ」
現在の状況とザーゴさんからの情報も合わせて、親衛隊隊長のアホダインが裏切り者である事は確定している。
「ぼ、僕様を侮辱するとは、元姫様であろうと、許せませんね! あの時の小娘は僕様が油断をしていただけに過ぎません」
そう言ってアホダインが腰にぶら下げていたエストックを抜いた。
「見るがよい。僕様の芸術的な美技を! エ~レガントな薔薇の花びぃ~らが舞うかの様な美しぃ~き華麗な、僕様のぉ~、必殺のぉ~ローズら――――『ヘビーウェイト!』ギャフン」
鬱陶しい口上からのローズ何とかを、発動前に重力魔法で潰した。局所的な重力磁場でアホダインが、倒れているセバスチャン国王の上に重なるように倒れてグエグエ言っている。
「じゅ、重力魔法だと!? 何者だお前は!」
そうそうお目には掛からない重力魔法を見て、サディスティア王国のダマは目を見開いて俺を見ている。
「オホホ。セバスチャンお兄様、国が作ってしまった借金は、例え阿呆で馬鹿で糞虫のお兄様が元凶とはいえ、王家の責任。ダマ外務大臣、借金は如何程になりますか?」
重力魔法で押し潰されているセバスチャン国王が「あぐばぐぎやぐゆ」と何かを言おうとしているか分からない。しかし、どうせ碌な事を喋らないだろうから無視だ。
「は、白金貨4万3千枚だ」
白金貨4万3千枚は、現代の通貨に換算したら430億円相当だ。かなりの大金だが、これを理由に国を譲渡する金額かと言われたら全然少ない気がする。
「まあ! 随分と借金が膨らみましたわね。愚兄はよほど高価な銅を買ったようですわね」
わざとらしく笑うルミアーナ。ダマ外務大臣もニヤリと笑った。
「ええ、セバスチャン国王様には金とどう価格で、黄金色に磨かれた銅を販売させて頂けましたので」
また「ぐえぐえ」と赤い顔で何かを言おうとしているセバスチャン国王。無視だけど。
「流石は愚兄ですわね。頭のネジが全部外れていますわ。オホホホホホホ」
「ワハハハハハ」とダマも調子にのって笑っている。
「という訳でございますわ、アマノガワ国王陛下」
「アマノガワ?」
ダマが訝しげな目で俺をみる。
「わたくしの母国は、愚かな兄のせいでサディスティア王国に譲渡されようとしておりますわ。婚約者《フィアンセ》たるわたくしの母国をお救い下さいまし」
いささか芝居じみた物言いのルミアーナだが、まあ、打ち合わせ通りだ。
「よし、国を買おう!」
「はっ?」
鳩が豆鉄砲をくらった様な顔になったダマ。
「白金貨百万枚でどうかな」
現代通貨にして約一兆円。十万人規模の小国であるアザトーイ王国の年間予算からみたら百年分以上は有るだろう。
「ヒャ、ヒャク……。ふ、ふざけるな! そんな大金が世の中に存在するものかッ!」
「金《かね》ならな」
そう言って俺は、目の前の何もない空間に手を伸ばし、異空間収納から巨大ダイヤモンドを取り出した。
百面カットされたダイヤモンドは外からの光と、内部に閉じ込められた光とで眩く七色に輝いている。
「な、な、なんだ……それは」
巨大ダイヤモンドを見たダマは、顔を引き攣らせて「なんだ」と聞いてくる。
「ダイヤモンドだ。グレートファング王国の皇室鑑定士の鑑定書もあるぜ」
更に顔を引き攣らせるダマが黙った。
「ルミアーナ、俺はこのダイヤモンドをアザトーイ王国王室に渡す代わりにアザトーイ王国を買い取る。どうかな?」
「わたくしは異存はありませんわ。今のアザトーイ王国にサディスティア王国から借りたお金を返せる宛がございませんもの。愚か者のお兄様、如何されますか?」
そこで俺は重力魔法のヘビーウェイトを解く。三人の視線がセバスチャン国王に集まる。
「売ったッッ!!」
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