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第74話 【国王様゛のお話】―6

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「オイ!」
 

 俺様が昼食の並んだテーブルからの入ったグラスを手に取り、壁に投げつけた。


「ワインはどおしたッ! ワインを持ってきやがれ!」

「陛下、王宮にはワインはおろか、果樹酒に穀物酒、エールに至るまで、お酒は一本もございません」


 クソの役にもたたない、内務副大臣のザーゴがこの俺様にを持ってきやがった。


「それになんだ、このクッソ不味い肉と野菜は!」

「はい。1〇コインショップの肉と野菜でございます」

「ふざけんな! そんなクソ安い物を俺様に食わせんだッ!」

「陛下、王都市民が消えて十日とおかが経ちます。街で買い物が出来るのは1〇コインショップだけになります。それに我が国には贅沢できるお金はもうございません」

「チッ。貴族から金を集めろッ!」

「貴族のほとんどは王都を出て自領にお戻りになりました」


「クソッ! ダマはまだ来ねえのか、ダマはッ!」


 太鼓持ちだった貴族どもは俺様から逃げ出すし、金ずるのサディスティア王国のキモデブ外務大臣、ダマ・スーン・ダマはここ最近は姿を現していない。


「陛下、これ以上サディスティア王国からお金を借りてはなりませぬ。市民がいなくなり税収が大幅に減っています。毎月の返済も――――」

「うるせえッ! メシはもういい! アッヘーンを持ってこい!」

「陛下、その変な薬はもうございません。これを気にお止めになってください」

「ゔるぅぜぇぇぇぇぇぇぇッ!」


 頭にきた俺様はテーブルを蹴り、クソ不味い料理ごとテーブルをびっくり返す。


「オイ、ザーゴ! テメェの家は俺様が差し押さえる! テメェの家を売っぱらった金で酒買ってこい!」

「な、何を馬鹿な事を……」

「馬鹿? テメェ、いま俺様の事を馬鹿って言っ――――」

 
 その時、扉が開き見覚えのあるキモデブが「失礼致します」と部屋に入ってきた。


「陛下、ご無沙汰しております」

「オウ、よく来たキモデブ。金とアッヘーンを早くよこせ。薬がきれて頭が変になりそうだぜ」

「いえ、本日は返済がとどこおっている借金の取り立てに参りました」

「オウ、分かった。借金を返すから金をくれ」


 馬鹿かコイツは? コイツが金を出さなきゃ、金なんか返せる筈ねえだろ。常識を知らねえヤツだな。


「いえ、本日はお貸しするお金は持参しておりません」

「なら、金は返せねえ。それよりもアッヘーンだ! アッヘーンは持ってきているよな!」

「いえ、アッヘーンも持ってきておりません」

「んじゃ、なにしに来たんだよ! 金も薬もねえんなら出直してこい! このバーカ!」

「陛下、先ほども申し上げた通り、借金の取り立てに来たのですよ」

「だから、金なんかねえよ。金を返してほしけゃ、金を貸せ!」

「お話しになりませんな。陛下は借金を返す気がおありなのですかな」

「ねえよ、バーカ! お前が金を貸したいっていうから、借りたまでだ。金を返してほしけゃ、テメェで払え!」


 こいつはアホだな。俺様の優しさが全く分かっていない。


「では陛下、こちらの誓約書通り、借金を返済出来ないのであれば、このアザトーイ王国を我がサディスティア王国が貰い受けます」

「はっ?」

「こちらの誓約書には、白金貨二百万枚を超えた借入金を返済する能力がないと判断した時は、アザトーイ王国をサディスティア王国に譲渡すると記載されています。よろしいですな陛下」

「そんな紙切れ一枚で、国を売るバカが何処にいんだよ」

「ハハハ、目の前にいますな。入れ!」


 扉が開き、入ってきたのは俺様の親衛隊である薔薇の親衛隊隊長のアホダインだった。そして、そそくさと逃げるようにザーゴが背中を丸めて部屋を出ていく。本当に使えねぇヤツだ。


「オオ、アホダイン。よい所に入ってきてくれた。そこのデブを取り押さえろ。不敬罪だ。この場で首を斬り落として構わん!」


 そう命令を下したが、アホダインがダマを取り押さえずに、俺様の方へときた。


「グエっ」


 突然、アホダインに腹を殴られ、右腕を取られると、足を払われ床に叩きつけられた。


「な、何をするか、アホダイン!」

「ハハハ。アホダイン隊長は我が国に帰順したのですよ」


 クソ、アホダインのバカが。 貴様が仕えるあるじは我一人だらうが!


「では、陛下。誓約書にアザトーイ王国を貰い受けます」

「ま。ま。まってくれ。お、俺の黄金城をお前にくれてやる。あれなら良い金になるだろう。何しろあの城は金塊で出来ているからな」

「金塊? あの城は銅の塊でございますよ陛下」

「銅だと? き、貴様には黄金の城を作るように命令をしたはずだ」

「ええ、あの城は黄金色に輝くように、銅を磨いて作っております」

「だ、騙したなダマ!」

「騙してなどございません。では、誓約書に基づき、このアザトーイ王国を我がサディスティア王国が貰い受ける――――」

「ちょっとまったぁぁぁぁ!」


 先ほどアホダイン達が開けた扉から、一人の少年が入ってきた。誰だ? そしてもう一人……あれはルミアーナ!?


「無様ですわね、セバスチャンお兄様。オホホホホホホホホホ」






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