幼馴染と結婚したけれど幸せじゃありません。逃げてもいいですか?

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6 勇者ブームも過ぎ去り……

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 「離婚して欲しいの」

 ヴァネッサに離婚を切り出された。

 離婚は俺の勇者のイメージに傷がつく。世界中の子供たちが『オーウェンみたいな勇者になりたい』と憧れているのに、夫としては残念だったなんて思われるのは避けたい。

 ある日討伐から帰ると、家はガランとしていた。机に置かれていたのは離縁状。

 俺は妻子に逃げられたなんて思われるのは嫌で、周囲にこのことは隠した。
 妻の行方を聞かれると、「レオンが急病のため二人で遠方の施設で療養している」と答えた。






「オーウェン、俺達はそろそろ年齢的にもキツくなってきた。パーティーを卒業させてもらうぜ」

「ええっ!そんな……寂しいじゃないか!」

 ヴァネッサとレオンが出ていってほどなく、タイロンとナットがパーティーを抜けたいと言い出した。タイロンとナットは俺よりも10歳年上。
 最近身体が辛いと言っていた。

「そうね。タイロンとナットは今まで頑張っていたものね。実はね、私もそろそろパーティーを抜けなきゃいけなかったの」

 マリアンは貴族。
 彼女は自分のことをあまり話さないが、貴族夫人としていつまでも冒険には出ていられないのかもしれない。

 突然のパーティーの解散。

 それから俺の生活は急変した。

 帰っても家の中はいつでも暗くて寒い。ヴァネッサとレオンはもう居ない。

 俺は周囲に、息子が病気で妻と共に空気良い田舎で療養していると伝えた手前、おおっぴらに二人を探し回ることも出来なかった。

 一人暮らしというのは思ってたいたよりずっと孤独だ。
 買い物にも行かない日には、誰とも話さず一日中声を出さない日だってある。

 急に時間を持て余すようになり、たった一人で家で過ごす。狭いこの家も一人で過ごすと広く感じた。

「オーウェン様、お一人では不便でしょう?これどうぞ……」
「ああ、ありがとう。感謝するよ」
「いえいえ、今の平和があるのもオーウェン様たちが命を懸けて魔王を倒してくださったおかげです」

 近所の人たちが一人では不便だろうと色々と食べ物を持って来てくれた。

 皆、勇者である俺に感謝しているのだ。








 けれどそれは何年もは続かなかった。
 初めは食べきれないほど貰った人々からの差し入れも今では全く無い。

 
 食堂に入って一人で居ると、他の家族連れが目について孤独が募る。
 俺は近所の店で食べ物を買って、家に持って帰って食べることが多くなっていった。冷めた食事は正直美味しく無い。生きるために仕方なく食べる、そんな感じだ。

 掃除やゴミの始末、洗濯は男一人の所帯では行き届かなくなる。俺の家はゴミに溢れ、とてもかつての勇者が住んでいる場所には見えなくなっていった。

 一人街を彷徨い歩く。

 失ってからやけに家族連れが目に付いた。

 楽しそうな買い物帰りの家族が俺の前を歩いている。

 両親と手を繋ぎ、その手にぶら下がるようして飛び跳ねる男の子。子供特有の甲高い笑い声は日の沈み掛かった街の中で殊更に大きく響いた。

 俺の失った家族の光景は涙が出るほど幸せそうで……。
 俺はレオンとの記憶が少ない。あんな風に家族三人て手を繋いで歩いたことはあっただろうか?

 ヴァネッサは俺と結婚してから笑顔が消えた。
 俺が父親としての役目を果たして無かったから……。

 失ってから知った。俺が一番大切にすべきだったもの。

 ヴァネッサはもう戻って来ないだろう。

 俺は謝りたいのに、きっと彼女は謝ることすら許してくれない。
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