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初夜
初夜(3)
しおりを挟む紐を解かれ、下着が取り払われたと思ったら、彼はふいにユリウスの体を起こし、自分とは逆向きに彼の体を跨がせた。すなわち、枕を使って少し高い位置にある彼の顔に、下着をつけていない生身のお尻を向けているような体勢になる。
「え? え……!?」
自分も、彼の雄を手で愛撫したいと思っていたユリウスは、状況が飲み込めず恐慌に陥る。
いつのまにかラインハルトは自身も下着を脱いでいたようで、目の前には力強く血管を浮き立たせ、天井にむかってしなやかに反り返った彼の雄があった。
「都にいたとき、お前と一緒に馬に乗ったことがあっただろう? お前に触れたくて、危ないからと理由をつけてそうしたのだが、あれはまずかった」
苦笑の滲む声が背後から聞こえる。
「な、何がまずかったのですか?」
振り返ろうとしたところ、腰を引き寄せられ、体勢を崩しそうになり慌ててラインハルトの太腿に手を付いた。強靭な筋肉の鎧に覆われた肉体は、ユリウスが体重をかけたところでびくともしない。
「そこが反応してしまってな。お前に気づかれないようにするのに苦労した」
それで翌日からは一人で乗るように言われたのかと腑に落ちたが、すぐにそれどころではなくなった。
尻の狭間に吐息のあたたかな風を感じる。
それほど近いところに彼の顔があるということだ。その事実に、顔が焼け付くように熱くなった。
「あ、あの、ライニ様?」
「口に入りきらなければ舌や手で好きにやってくれ。俺も好きにやらせてもらう」
焦るユリウスに構うことなく、くぐもった声でそう言うと、尻の狭間を濡れた熱が辿り始めた。
窄まりの表面を舐められ、期待したそこがひくひくと収縮するのがわかる。
慌てて顔を振り向かせると、がっしり両側から腰を固定された自身の尻に、彼の顔が埋められていた。
「ラ、ライニ様! 汚いですから、おやめください!」
「ユーリの体で、汚いところなんてない」
舌が窄まりから離れ、お尻や内腿の薄い皮膚に、吸引のチリとした痛みを感じる。
後孔の縁から双嚢の間、竿の根元へと何度か往復し、何度目かにその舌は、きつく締まった縁を押し開き、その奥へと入って来た。
熟れた壁をじんわりとこじ開け、体内の浅い場所でくねり、襞の一つ一つを溶かすように舐め上げていく。
何をされているのかを理解し、羞恥と快感で膝が震えた。
「ヤっ……、ぁ、ぁぁあっ……!」
どこまでするかわからないけど、湯浴みのときに後ろも丁寧に洗い、指でほぐしておいた。
だからといって、そんなところを舐められるのは、死にたくなるほど恥ずかしい。
「ライニ様……、実は……、枕の下に香油が…………」
それは、必要ならこれを使いなさい、と母がこっそり渡してくれた香油だった。ラインハルトが湯浴みをしている間に、それを枕の下に隠しておいたのだ。
「あぁ。助かる。あとで使わせてもらう」
「助かる」と言いながら、今すぐそれを使う気はなさそうだった。
浅いところを執拗に舐られるだけで、痺れるような快感が周囲へと広がっていく。けれど、射精するには刺激が足りなくて、そのもどかしさに身悶えする。
こんな……。こんな恥ずかしいことを、世の中のオメガは、アルファを受け入れるために、毎回されているのだろうか……。
疑いたくなる気持ちを振り払うために、これは必要な準備だと、頭の中で何度も言いきかせた。
とろけた襞が彼の舌に絡みつくのがわかる。
舌だけでなく、指も挿れられて、舌では届かない、奥の熟れた膨らみを指先でゆっくりと捏ねられる。快楽を与えるというより馴染ませるような動きで、浅いところを舌と指で丁寧にほぐされていく。
「……ぁ……ライニ様……っ……そんなに深く……れないで……!」
「ユーリも、俺を可愛がってくれるんじゃなかったのか?」
このままではユリウスはされるがままだと気づいたのか、舌が抜け、指で縁を広げるような動きに変わった。おそらく入っている指は二本だろうが、騎士の指は自身の指とは比べ物にならないほどに太く、硬い。
舌で愛撫されていたときよりは多少余裕を取り戻し、半年以上前に教えてもらった閨事の作法を必死に思い出そうとしたが、どう考えても口や舌でアルファの雄を慰める方法は聞いた覚えがない。習ったのは、どこに何を挿れるかと、その際に秘部が傷つかないように、事前に香油で丹念にほぐしておくことと、爪を短く切っておくことなどだ。
向き合った雄は、本当に同じものかな? と疑問に思う程に、ユリウスのものとは太さも長さも違う。それに下生えの色も、彼の髪と一緒で黒に近い濃い色だった。
ラインハルトは「口や舌で」と言っていたから、これを口に挿れる行為もあるのだろうけど、どう見てもユリウスの口には収まりそうにない。
『可愛い』とは程遠い見た目だが、彼が興奮の証だと思えば、じわじわと愛おしさが込み上げてくる。
その、ユリウスの手に余るほどの剛直を掴み、ゆるく扱く。反応し、手の中で更に硬くなるのも嬉しかった。
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