侍従でいさせて

灰鷹

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はじまりの場所

はじまりの場所(8)

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「そう言えば、ライニ様はウェルナー城に赴任した後も、普段から湯浴みの際に薬草を使っていらっしゃったのですか?」

 そのお陰で、舞踏会の夜、薬草の匂いを頼りに殿下の居場所を突き止めることができた。
 あのときは、カレンと踊る予定があったから、香りのことを気にして薬草湯を使ったのかと思ったりもしたけど。

「湯浴みのときにユリウスが使っていた薬草は、トマスに頼んで買い集めてもらって、都から持って来たんだ。薬草の香りはユリウスを思い出させてくれるから。湯浴みのときはいつも使っていた」

「そう……だったんですか……」

 嬉しい反面、「カレンと踊るため」と思っていたことを、申し訳なく思った。


 殿下自身もすぐに衣を脱ぎ去り、均整の取れた武人の身体が燭台の明かりに照らし出される。
 すぐに互いの下着も取り払われ、一糸まとわぬ姿になった。

 こうなることを予想していたから燭台の明かりは最低限にしているが、発情期ヒートでわけがわからなくなっていた初夜と違い、今は理性がある分、恥ずかしい。 

 殿下がユリウスの体をそっと寝台に倒し、右手を取る。
 その視線は、腕にある傷に注がれている。

「すまなかった」

 傷に対しての謝罪のようだ。

「これは、僕が勝手に作った傷なので……」

「いや。俺のせいだ。俺の、迷いのせいだ……。お前を早く故郷に帰した方がいいことはわかっていたが、もし前任の副団長のように命を落とすようなことになれば、お前と会えるのもこれで最後かもしれないと思ってしまい、無理やり帰すこともできなかった」

「僕も……。早く帰ったほうがいいことはわかっていたのに、いつまでも帰れませんでした。少しでもライニ様の近くにいたくて……。だから、ライニ様の所為じゃないですよ」

 縫い目が少し盛り上がったその傷に殿下がキスをし、腕、肩、鎖骨……、とその唇が移動していく。
 薄い胸元を吸われ、上目遣いで見上げながら、見せつけるように突起に舌を這わされる。

「ふぁっ、……んっ……」

 両方をきゅっと抓まれて、臍の下が切なく疼く。
 女性でもないのに。どうして、そこを弄られただけで、こんなにも感じてしまうのだろう。

「可愛いな。ユーリはここを舐めただけで、こんなになるのか」

 ゆるく勃ち上がった性器を、大きな掌に包まれる。


「あ、あの! ライニ様!」

「どうした?」

 ユリウスの胸元に顔を伏せたまま、ラインハルトが上目遣いで見上げてくる。

「その……、できれば今日は……、僕もライニ様のを……」

 最後まで言えなかったけど。ちゃんと言いたいことは伝わっただろうか……。

 殿下は体を浮かせ、ユリウスの顔を上から覗き込んできた。

「無理しなくていいぞ」

「無理……とかでは……ないです。ライニ様のは……、か、可愛くはないですけど、可愛がりたい気持ちは、僕も一緒なので……」

 もっと他に色気のある誘い方があるだろうと思うけど、必死に考えた結果がこれだ。
 困惑顔が、ぷっ、と吹きだす形で崩れる。

「ユーリはすごいな。その言葉だけでやられそうだ」

 だったら一緒にやればいいと、殿下は枕を二つ使って普段寝るときより頭を高くし、仰向けに横になった。

 そうなると、どうしても、視線は彼の中心に行ってしまう。
 まだ触ってもいないはずの雄は、既に力強く血管を浮き立たせ、天井にむかってしなやかに反り返っている。
 見るからにユリウスの口には収まらなさそうで、はじめる前からくじけそうになる。

「今は発情期ヒートじゃないから、ちゃんとほぐさないと傷つけることになるからな。こっちに尻を向けて俺の上に跨ってくれ」

 ……そ、そんな……、ライニ様に尻を向けてライニ様の上に跨れなんて……。

 前回はどうしていたかと必死に思い出そうとするけど、ただ気持ちよかったという記憶しか残っていない。

「可愛がってくれるんだろ」

 怪我をしていないほうの腕を引っ張られ、ユリウスは仕方なしに殿下にお尻を向ける形でその上に四つん這いになった。



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