79 / 84
はじまりの場所
はじまりの場所(8)
しおりを挟む「そう言えば、ライニ様はウェルナー城に赴任した後も、普段から湯浴みの際に薬草を使っていらっしゃったのですか?」
そのお陰で、舞踏会の夜、薬草の匂いを頼りに殿下の居場所を突き止めることができた。
あのときは、カレンと踊る予定があったから、香りのことを気にして薬草湯を使ったのかと思ったりもしたけど。
「湯浴みのときにユリウスが使っていた薬草は、トマスに頼んで買い集めてもらって、都から持って来たんだ。薬草の香りはユリウスを思い出させてくれるから。湯浴みのときはいつも使っていた」
「そう……だったんですか……」
嬉しい反面、「カレンと踊るため」と思っていたことを、申し訳なく思った。
殿下自身もすぐに衣を脱ぎ去り、均整の取れた武人の身体が燭台の明かりに照らし出される。
すぐに互いの下着も取り払われ、一糸まとわぬ姿になった。
こうなることを予想していたから燭台の明かりは最低限にしているが、発情期でわけがわからなくなっていた初夜と違い、今は理性がある分、恥ずかしい。
殿下がユリウスの体をそっと寝台に倒し、右手を取る。
その視線は、腕にある傷に注がれている。
「すまなかった」
傷に対しての謝罪のようだ。
「これは、僕が勝手に作った傷なので……」
「いや。俺のせいだ。俺の、迷いのせいだ……。お前を早く故郷に帰した方がいいことはわかっていたが、もし前任の副団長のように命を落とすようなことになれば、お前と会えるのもこれで最後かもしれないと思ってしまい、無理やり帰すこともできなかった」
「僕も……。早く帰ったほうがいいことはわかっていたのに、いつまでも帰れませんでした。少しでもライニ様の近くにいたくて……。だから、ライニ様の所為じゃないですよ」
縫い目が少し盛り上がったその傷に殿下がキスをし、腕、肩、鎖骨……、とその唇が移動していく。
薄い胸元を吸われ、上目遣いで見上げながら、見せつけるように突起に舌を這わされる。
「ふぁっ、……んっ……」
両方をきゅっと抓まれて、臍の下が切なく疼く。
女性でもないのに。どうして、そこを弄られただけで、こんなにも感じてしまうのだろう。
「可愛いな。ユーリはここを舐めただけで、こんなになるのか」
ゆるく勃ち上がった性器を、大きな掌に包まれる。
「あ、あの! ライニ様!」
「どうした?」
ユリウスの胸元に顔を伏せたまま、ラインハルトが上目遣いで見上げてくる。
「その……、できれば今日は……、僕もライニ様のを……」
最後まで言えなかったけど。ちゃんと言いたいことは伝わっただろうか……。
殿下は体を浮かせ、ユリウスの顔を上から覗き込んできた。
「無理しなくていいぞ」
「無理……とかでは……ないです。ライニ様のは……、か、可愛くはないですけど、可愛がりたい気持ちは、僕も一緒なので……」
もっと他に色気のある誘い方があるだろうと思うけど、必死に考えた結果がこれだ。
困惑顔が、ぷっ、と吹きだす形で崩れる。
「ユーリはすごいな。その言葉だけでやられそうだ」
だったら一緒にやればいいと、殿下は枕を二つ使って普段寝るときより頭を高くし、仰向けに横になった。
そうなると、どうしても、視線は彼の中心に行ってしまう。
まだ触ってもいないはずの雄は、既に力強く血管を浮き立たせ、天井にむかってしなやかに反り返っている。
見るからにユリウスの口には収まらなさそうで、はじめる前からくじけそうになる。
「今は発情期じゃないから、ちゃんとほぐさないと傷つけることになるからな。こっちに尻を向けて俺の上に跨ってくれ」
……そ、そんな……、ライニ様に尻を向けてライニ様の上に跨れなんて……。
前回はどうしていたかと必死に思い出そうとするけど、ただ気持ちよかったという記憶しか残っていない。
「可愛がってくれるんだろ」
怪我をしていないほうの腕を引っ張られ、ユリウスは仕方なしに殿下にお尻を向ける形でその上に四つん這いになった。
585
お気に入りに追加
1,119
あなたにおすすめの小説

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」


侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
出来損ないのオメガは貴公子アルファに愛され尽くす エデンの王子様
冬之ゆたんぽ
BL
旧題:エデンの王子様~ぼろぼろアルファを救ったら、貴公子に成長して求愛してくる~
二次性徴が始まり、オメガと判定されたら収容される、全寮制学園型施設『エデン』。そこで全校のオメガたちを虜にした〝王子様〟キャラクターであるレオンは、卒業後のダンスパーティーで至上のアルファに見初められる。「踊ってください、私の王子様」と言って跪くアルファに、レオンは全てを悟る。〝この美丈夫は立派な見た目と違い、王子様を求めるお姫様志望なのだ〟と。それが、初恋の女の子――誤認識であり実際は少年――の成長した姿だと知らずに。
■受けが誤解したまま進んでいきますが、攻めの中身は普通にアルファです。
■表情の薄い黒騎士アルファ(攻め)×ハンサム王子様オメガ(受け)

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない
てんつぶ
BL
連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。
その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。
弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。
むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。
だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。
人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる