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第2話

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結局その日は、秋斗につきっきりで勉強を教えてもらい、その流れで、秋斗の家族とも一緒に夕飯を食べた。翌朝、鏡を見て髪の毛を整えているとチャイムが鳴る。

「李久? 秋斗くん来てるよ」
「もー、来なくていいって言ってんのに」
「ばかっ、心配して来てくれてるんだから、そんなこと言わないの」

そう言って、秋斗の前へと連行される。走って逃げようとしてもすぐに追いつかれるだろうし、頑張って整えた髪の毛が崩れることも嫌なので、渋々一緒に登校する。

いつも通り、裏門から入っていくと、誰かを探している素振りで、裏門を通る生徒を見ていた二人のうちの一人がこちらに駆け寄ってきた。これも、いつものことだ。秋斗に告白したい学生たちは何人もいる。こうやって登校時に声をかけられることもしばしばだ。俺はどうせ邪魔者なので、その子と目を合わせないようにしながら、足早に過ぎ去ろうとする。

「あのっ、月野くんには、恋人がいるって知ってるんだけど…でも、月野くんのことが好きなんだ。それだけ、伝えたくて」
「…え、恋人?」
「大丈夫、他の誰にも言ってないからっ…。じゃあ」

そう言って、ポニーテールを揺らし、スカートの裾をひらめかせて、その子は去っていく。どこかで見覚えがあると思ったら、昨日ここで俺に声をかけてきてくれた子だった。背中に冷や汗が伝っていく。

「僕に、恋人…?」

一方の秋斗は、不思議そうに首を傾げたままだ。

「ねえ、僕に恋人がいるって噂が流れてるってことなのかなあ」
「えっ? まあ、秋斗がかっこいいから当然恋人がいるだろうっていう憶測とかじゃないかな」

やけに早口になってしまったのは、どうか気が付かないで欲しいと願いながら、探るような目を向けてくる秋斗の視線を振り払うように、俺も下駄箱へと駆け込んだ。

昨日秋斗に付き合っている人がいる、と言ったのは、実は真っ赤な嘘なのだ。いや、あのルックスから言って、あながち嘘ではないのかもしれない。しかし、俺が秋斗から恋人の話を聞かされたことは一回もないので、少なくともそこは嘘だ。あまりにも秋斗に告白する人が後を絶たず、そして、秋斗に恋人がいるかどうか聞いてくる人が後を絶たないことに嫌気がさして、つい魔が差してしまったのだ。恋人がいると聞けば、告白もしないだろうと踏んでいたので、まさか秋斗の耳に入るなんて思わなかった。一瞬急激に上がった心拍数を、階段を急ぎ足で駆け上がった息の荒さでごまかす。でも、喉元過ぎればなんとやら、とは真実で、その心配はすぐに頭の中から消え去り、下校時にはすっかり忘れていた。秋斗と会うまでは。
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