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第59話 巨大ゴーレムの操作者をぶっ飛ばす
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暗かった洞窟とは打って変わり、蹴破った壁の先はやたらと明るい空間が広がっていた。
子供部屋のようなそこにいたのは子どもくらいの背丈しかない男。ダボダボの白衣を見にまとい、大声を出した後の口を大きく開けたまま固まっている。
動揺してゴーレムの操作をやめたからか、ゴーレムが動く音は聞こえてこない。
どうやら、ヨーリンの言っていたゴーレムを操作する者は近くにいるという予想が当たっていたようだ。
「ふっふふ」
突然、驚いた顔を歪めると、少年風の男が笑い声を上げ出した。
「なんだよ。予想外の出来事が起きて頭がおかしくなったか?」
「いいや。そんなことはない。ふっふふ」
こらえられないとばかりに男は笑い声を漏らす。
「強がる女はいいぞ。はずかしめられ、悔しがる姿はとてもそそられる。そんな妄想をすると。ふっふふ」
「変態が!」
「ガフッふふ」
我慢できず殴ってしまった。多分息の根は止まってない。はず。
だが、最後まで笑うのをやめなかった。今も腹を殴られ気絶しているが表情はとても嬉しそうな笑顔だ。
もしかしたら俺に殴られるのも嬉しいのかも。
いや、これ以上考えるのはやめよう。
「最後はあっけなかったな」
「そうですね……あの、ラウルさん? もう降ろしてくれて大丈夫ですよ?」
「お、おう。悪い」
「いえ」
部屋の熱さのせいか頬を赤く染めながらガラライは俺から降りた。
そんな折、近くからゴーレムが崩れる音も聞こえてくる。
どうやら名も知らぬ男が気絶したことで、ゴーレムが形を保っていられなくなったようだ。
本体は全く張り合いがなかった。しかし、こいつは抜けられない森の脱出方法を知っている様子だった。
これ以上直接触りたくないがどうやって地上まで運ぼうか。
「どうしたんですか?」
「いやな。こいつにどうやって道案内させようかと思って」
「それならいい話がありますわ!」
ヨーリンが話に割って入ってきた。
なにやら異様にテンションが高い気がする。
「なんだよ急に」
「ラウル様が直接触らずにこの男を運ぶ方法です」
「どうやるんだ? ヨーリンが運んでくれるのか?」
「いえ、ワタクシは影なので運ぶことはできません。ただ、ここで少し、先ほどのようにモンスター学を披露させてください」
「うん?」
何か考えがあるのだろう。
俺は黙ってヨーリンの話を聞くことにした。
興味があるのかガラライはワクワクした様子で俺の影を見ている。
「ワタクシたちモンスターというものは、相手を倒した時、力を奪い強くなりますます。それが経験値、成長というものです」
「そんなの俺でも知ってるぞ。人間でもそうだ。まあ、自分の実力を正確に把握するのはスキルの相性もあるし難しいが」
「ええ、その通りですわ。常識です」
「で、それがどうかしたのか?」
「ワタクシと他のモンスターの違いがわかりますか?」
「大魔王だろ?」
「そうではなく!」
大魔王という言葉にガラライがピクリとしたが、説明するのも面倒だ。
とりあえずヨーリンの話に意識を戻す。
「じゃあなんだよ」
俺が聞くとヨーリンはもったいぶるように笑った。
「聞きたいですか?」
「聞かないと話が進まないから聞きたい」
「ラウル様には特別に教えて差し上げましょう。ワタクシは倒した相手をスキルとして扱えるようになるのです」
「相手をスキル化?」
「そうです。試しに先ほど倒したブラッドオクトパスをイメージしてその男に右手を突き出してみてください」
「こうか?」
疑問に思いながら俺は右手を突き出した。すると、手のひらからタコの触手が伸びてきて男を締め上げた。
「うおっ」
驚きで思わず声が漏れる。
「これが、倒した相手をスキルにするってことか」
「そうです。さすがラウル様。ワタクシが言葉で教えただけですぐに使えるようになるなんて素晴らしいです!」
「でも、これ神的に大丈夫なのか? 体の一部がモンスターみたいになってるけど」
「影に大魔王がいるのに今さらだろう」
「それもそうか」
「そもそも邪神を倒した今、大魔王でさえ取るに足らない。貴様に対してしか何かをできないうえ、すでに貴様の一部だ。そんな大魔王のスキルなら、もう貴様のものだろう」
「そうですわ。ワタクシはずっとラウル様のために自分の力を使ってもらう方法を考えていたんです。ここまで長い関係でも信頼していただけないなんて」
「いや、そこまで長い関係でもないだろ」
俺の影がひんやりとしている気がするが、今はそっとしておこう。
何にしても、俺はどうやらヨーリンが俺の影に入ってからのモンスターをスキルとして使えるらしい。
今回のスキルにしろ、神からもらったアルカになるスキルにしろ、俺の体がどんどん別物になっていく気がするが、まあいいだろう。
「さて、これで森を抜けるアテも見つかったしゴーレムも起動しないはずだ。帰るとするか」
「はい……あ、あの」
「どうした?」
そこで言いにくそうにガラライが俺を見上げてきた。なんだろう。
「私はお役に立てましたか?」
不安そうに聞いてくるガラライ。
俺はガラライに対し笑みを浮かべた。
「タコを倒せたのはガラライのおかげだろ? ありがとな」
「ハイ!」
俺の言葉にガラライは元気よく返事をし、心からの笑顔を見せてくれた。
恐ろしやラーブ。荒くれだったやつをここまで変えてしまうとは。
子供部屋のようなそこにいたのは子どもくらいの背丈しかない男。ダボダボの白衣を見にまとい、大声を出した後の口を大きく開けたまま固まっている。
動揺してゴーレムの操作をやめたからか、ゴーレムが動く音は聞こえてこない。
どうやら、ヨーリンの言っていたゴーレムを操作する者は近くにいるという予想が当たっていたようだ。
「ふっふふ」
突然、驚いた顔を歪めると、少年風の男が笑い声を上げ出した。
「なんだよ。予想外の出来事が起きて頭がおかしくなったか?」
「いいや。そんなことはない。ふっふふ」
こらえられないとばかりに男は笑い声を漏らす。
「強がる女はいいぞ。はずかしめられ、悔しがる姿はとてもそそられる。そんな妄想をすると。ふっふふ」
「変態が!」
「ガフッふふ」
我慢できず殴ってしまった。多分息の根は止まってない。はず。
だが、最後まで笑うのをやめなかった。今も腹を殴られ気絶しているが表情はとても嬉しそうな笑顔だ。
もしかしたら俺に殴られるのも嬉しいのかも。
いや、これ以上考えるのはやめよう。
「最後はあっけなかったな」
「そうですね……あの、ラウルさん? もう降ろしてくれて大丈夫ですよ?」
「お、おう。悪い」
「いえ」
部屋の熱さのせいか頬を赤く染めながらガラライは俺から降りた。
そんな折、近くからゴーレムが崩れる音も聞こえてくる。
どうやら名も知らぬ男が気絶したことで、ゴーレムが形を保っていられなくなったようだ。
本体は全く張り合いがなかった。しかし、こいつは抜けられない森の脱出方法を知っている様子だった。
これ以上直接触りたくないがどうやって地上まで運ぼうか。
「どうしたんですか?」
「いやな。こいつにどうやって道案内させようかと思って」
「それならいい話がありますわ!」
ヨーリンが話に割って入ってきた。
なにやら異様にテンションが高い気がする。
「なんだよ急に」
「ラウル様が直接触らずにこの男を運ぶ方法です」
「どうやるんだ? ヨーリンが運んでくれるのか?」
「いえ、ワタクシは影なので運ぶことはできません。ただ、ここで少し、先ほどのようにモンスター学を披露させてください」
「うん?」
何か考えがあるのだろう。
俺は黙ってヨーリンの話を聞くことにした。
興味があるのかガラライはワクワクした様子で俺の影を見ている。
「ワタクシたちモンスターというものは、相手を倒した時、力を奪い強くなりますます。それが経験値、成長というものです」
「そんなの俺でも知ってるぞ。人間でもそうだ。まあ、自分の実力を正確に把握するのはスキルの相性もあるし難しいが」
「ええ、その通りですわ。常識です」
「で、それがどうかしたのか?」
「ワタクシと他のモンスターの違いがわかりますか?」
「大魔王だろ?」
「そうではなく!」
大魔王という言葉にガラライがピクリとしたが、説明するのも面倒だ。
とりあえずヨーリンの話に意識を戻す。
「じゃあなんだよ」
俺が聞くとヨーリンはもったいぶるように笑った。
「聞きたいですか?」
「聞かないと話が進まないから聞きたい」
「ラウル様には特別に教えて差し上げましょう。ワタクシは倒した相手をスキルとして扱えるようになるのです」
「相手をスキル化?」
「そうです。試しに先ほど倒したブラッドオクトパスをイメージしてその男に右手を突き出してみてください」
「こうか?」
疑問に思いながら俺は右手を突き出した。すると、手のひらからタコの触手が伸びてきて男を締め上げた。
「うおっ」
驚きで思わず声が漏れる。
「これが、倒した相手をスキルにするってことか」
「そうです。さすがラウル様。ワタクシが言葉で教えただけですぐに使えるようになるなんて素晴らしいです!」
「でも、これ神的に大丈夫なのか? 体の一部がモンスターみたいになってるけど」
「影に大魔王がいるのに今さらだろう」
「それもそうか」
「そもそも邪神を倒した今、大魔王でさえ取るに足らない。貴様に対してしか何かをできないうえ、すでに貴様の一部だ。そんな大魔王のスキルなら、もう貴様のものだろう」
「そうですわ。ワタクシはずっとラウル様のために自分の力を使ってもらう方法を考えていたんです。ここまで長い関係でも信頼していただけないなんて」
「いや、そこまで長い関係でもないだろ」
俺の影がひんやりとしている気がするが、今はそっとしておこう。
何にしても、俺はどうやらヨーリンが俺の影に入ってからのモンスターをスキルとして使えるらしい。
今回のスキルにしろ、神からもらったアルカになるスキルにしろ、俺の体がどんどん別物になっていく気がするが、まあいいだろう。
「さて、これで森を抜けるアテも見つかったしゴーレムも起動しないはずだ。帰るとするか」
「はい……あ、あの」
「どうした?」
そこで言いにくそうにガラライが俺を見上げてきた。なんだろう。
「私はお役に立てましたか?」
不安そうに聞いてくるガラライ。
俺はガラライに対し笑みを浮かべた。
「タコを倒せたのはガラライのおかげだろ? ありがとな」
「ハイ!」
俺の言葉にガラライは元気よく返事をし、心からの笑顔を見せてくれた。
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