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DIY、コネ就職を求める
第一回職業解放前篇 その13
しおりを挟む──“神風吹き荒ぶ”。
それこそが【神風兵】の極秘奥義。
本来、生者である原人が己の命を賭してでも使命を成し遂げる──ことを諦めた時に使うであろう切り札である。
生き残る可能性があるのは“死機供存”。
そちらも最後には蘇生不可の状態になるのだが、それでも死ぬ前に能力の解除を行なえばギリギリ生存可能だ。
だが、“神風吹き荒ぶ”は違う。
使えばそれだけで生命力と魔力を枯渇するまで絞り出し、死んでも“死機供存”で死亡処理をしないで絞れるものを絞り尽くす。
それはシステム的に表示される、数値以上のモノ──魂魄に通ずる存在の根源。
文字通り命懸け、全身全霊で目標達成のために動くための能力だ。
◆ □ ◆ □ ◆
エンジンから噴出する膨大なエネルギー。
それは命を糧にし、燃え盛っている──代償に見合う力を、それが休人たちが現れるまでの世界の理である。
「くっ、『SEBAS』!」
《旦那様のインストール、“神持祈祷”の枠で対処をお願いします。指定するのは──》
「……了解だ。まずは、逃げないと!」
「──調整完了。行動、開始」
機体の限界を超えた動き。
本来であれば機体が壊れるような挙動であろうと、“死機供存”で搭乗者そのものが活動している限り機体は直り続ける。
結論から言えば、俺は【神風兵】の攻撃を回避することはできない。
──それでも『SEBAS』は、左腕を犠牲として攻撃を捌いてくれた。
「部位欠損確認、攻撃再開」
「──“神持祈禱:ストップウォッチ”! そして“オールストップ”!」
時間を停める『プログレス』。
ファンタジーのような能力すらも、実現可能な願望機の劣化版。
左腕は破壊されたが、それは俺の左腕ではない。
神に祈りを捧げ、授けられた懐中時計の突起を押すことでこの場の時間を固定する。
だが今の【神風兵】は一筋縄ではいかないようで……莫大なエネルギーのごり押しにより、停まっているはずの時間の中で少しずつ前に体を動かしていた。
──それでも、時の概念は酷く重い。
それは理としても、物理的にも。
後者は概念的な問題かもしれないが、いづれにせよ【神風兵】の行動は大きく阻害される、それで充分だった。
「間に合え──“ソウルハント”、“エクス・ポート”!」
《右腕ブースター全開、炉心よりの過剰供給許可──『リミットブレイク』起動》
魂を狩る大鎌を振るい、兵装に身を包む少女の心臓を狙う。
だが兵装の防衛機構が結界を展開、鎌はそこに触れ一時停滞。
それを押し通すため、『SEBAS』が機体の操作を行ってくれる。
向こうのように壊れないための補助は無いが、それでも後を捨てて今を取った。
炉心のすべてを使い尽くし、鎌を前へ前へと押し進める。
──結界はやがて砕け、鎌は少女の心臓を刺し貫く。
そしてこの瞬間、“神風吹き荒ぶ”はその最期の効果を発動する。
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