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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄実行 その16
しおりを挟む邪悪深殿 ???(安全空間)
十層に戻り、体を再構築した俺は用意されていた転送陣を使った。
その際はあるアイテムを握り締め、向かう場所は一層へ。
「──するとあら不思議、本来存在しない領域へ辿り着くのです」
「【救星者】様!」
「はいはい、戻ってきましたよ。というか、見ていただろう? どうだった、俺の物凄い負けっぷり」
「凄かったです!」
うん、屈託のない笑み。
この空間は【救星者】の力に加え、ある休人の『プログレス:マイルーム』を基に構築された隠し空間だ。
その中には俺が今回、何としても外に連れ出したい少女──この星の意思、そして遺志が宿る存在が居る。
何もない場所に居るのは退屈だと思い、迷宮内での俺の近況ぐらいは見れるようにとテレビっぽいものを用意してあった。
「これの実験も上手くいったからな。ちゃんと機能してよかったよ、“アナザードア”」
俺が握り締めていたのはドアノブ、これこそがこの空間に向かうための鍵。
だが正規の手段では、そのドアノブを最初に空間を作った場所で使う必要があった。
しかしそれを行ったのは五十層、その過程で待つ強者を相手にしていては相当な時間が掛かってしまう……ということで、迷宮を掌握して得た権限の一部を使用している。
つまりは条件式、『俺』が『一層』へ向かうとき『ドアノブ』を持っている場合に限定し──こことの繋がりができるのだ。
まあ、ドア自体は別に十層だろうが別の階層だろうが作れただろう。
……ただこの方法以外で、つまりドアが残る形でやると絶対に誰か来るからな。
「ともあれ、これでしばらくは大丈夫だ。おまけに、五十一層までスキップできたな」
「す、凄いです! これならあっという前に脱獄できるはずです、【救星者】様!」
「……だと、いいんだけどな」
「?」
二十層から四十層までの守護者を無視したこともそうなのだが、五十層から先に誰が居るのかも把握できていない。
確実に『騎士王』は居るとして、それに匹敵する各星々の重大戦力がこの場に集まっていると考えられる……しかもその目的は、他ならぬ俺を討滅すること。
「まあ、準備が必要ってことだ。ここに置いてあるアイテム、いくつか持っていくぞ」
「あっ、はい! 持っていってください!」
もしもに備え、こちらに出しておいたアイテムを[インベントリ]に仕舞っていく。
使えないことも想定していたからな、そこまでじゃなくてよかったよ。
──相手は強大なんだ、倫理がどうだのと手段を選んでいる暇なんて無いのだけどな。
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