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偽善者と廻る縁 二十八月目
偽善者と他世界見学 その13
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先日、大量更新をしています
まだの方は、そちらからぜひ
===============================
「ここかな……っと、居た居た」
結界を渡り、辿り着いたのは袋小路。
そこではいかにもな、子供を大人たちが囲い込むというイベントが行われていた。
「行きますか──“隔離結界”」
子供と大人たちを、それぞれ結界で包む。
内部からの脱出が困難な結界なので、強引に突破することはほぼ不可能だ。
「大丈夫か、小僧」
「こ、これって……」
「結界だ。まあ、いずれ解除されるさ。それよりいったい、何があったんだ?」
尋ねると、子供はポツポツと語り始める。
自分はスラム街で生きる子供で、貰ってきたお零れを届けようとしていたところ、大人たちに絡まれたと。
「経験があるだろうに。どうして今回に限って、ここまで追いつめられたんだ?」
「うっ……今回はその、相棒が休みで」
「はぁ……じゃあ、しばらくそのままでいればいい。今度はそいつらから聞くから」
「えっ!? し、信じてくれねぇのかよ!」
俺が物語の主人公なら、迷わず子供を信じられるのだろうが……残念、偽善者です。
どっちの方が俺にとって都合がいいのか、それを考えてから決めるつもりだ。
「というわけだ、さっそく理由を──」
「ペッ! 死ね、クソガキ共々」
「…………」
「…………に、兄ちゃん?」
さて、どうしたものか。
俺は偽善者なので彼らにも救いを……とも思っていたが、残念ながら畜生と語らうほど愚かでも無いからな。
「──“錯乱逆上”」
「「「ぎゃぁあああああ!」」」
精神魔法“錯乱逆上”。
その名が示す通り、精神に干渉して狂わせることができる魔法だ。
今回は結界の中に閉じ込めてあるし、外部へ悪影響を及ぼすことはない。
むしろ、子供に教えることができる──逆らうとどうなるか、一石二鳥だな。
しばらくその惨状を見ていると、糸が切れたように大人たちはバタリと倒れる。
死んだわけではなく、暴走のし過ぎで気絶してしまっただけだ。
「……さて、と」
「ヒッ!」
「そう怯えないでくれよ。俺はお前を助けた恩人だ、ならどうすればいいか……分かっているだろう?」
子供であろうと、容赦はしない。
少なくともこいつは、普段であれば逃げ果せるだけの能力を持っているのだから。
「な、なんだよ……」
「……マジか。そうか、またかよ……なら、変更だな」
「な、なんなんだよ!」
「こっちの話だ。そうだな──よし、どこか見栄えのある場所を教えろ」
へっ? と呆けた表情を浮かべる少女に、そんなことを尋ねるのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
「スー、起きてくれ」
「……ん、着いた?」
「ああ、地元の人に聞いた場所だ。ほら、見てごらん」
目を覚ましたスーが観るのは、淡い光が氷の屋根に反射して輝く幻想的な光景。
少々小高い場所に存在するそこは、先ほどの少女が教えてくれた絶景スポットだ。
「綺麗……凄い」
「そうか、なら聞いておいてよかったよ。いい夜だな、スー」
「うん、とっても……ありがとう、メルス」
潤んだ瞳を向けてくるスー。
眠たげだが、その瞳の奥に宿る意思はとても強い。
それに応えるべく、顔を近づけ──
「なあ、兄ちゃんたち……もういいか?」
「「…………」」
「な、なんだよ……って、また結界か!?」
「これこれ、スーさんや。彼女が情報提供者だからな、そしてここはこの子たちの拠点でもある。だから、あんまり責めないでやってほしい」
スーが頬をやや膨らませながら、俺たちの逢瀬を割いた少女を結界で囲んでいた。
結界自体はただの膜なんだが、時間経過で空気が減っていく仕様だったな。
まあ、一定量まで減ったら排出も解除されるようになっている辺り、やっぱりスーは優しい子だって再認できたけど。
「改めまして。俺はメルスでこっちはスー、まあ南の方から旅をしてきた」
「……ん、よろしく」
「というわけだ。まあ、特別何かをしに来たわけじゃない。そのうち、俺たちはまたどこかへ消える。今回はただ、スーを喜ばせるために綺麗な物を見に来ただけだ」
「……この国に、綺麗な場所なんてないさ」
吐き捨てるように呟く少女に、なんとなく偽善の予感を感じ取った。
とはいえ、これはあくまで予感……そして何より、まだそのときじゃない。
「もし、綺麗にできるなら?」
「そんなもの、決まっているさ。アイツらがおれたちみたいな苦しみを経験しなくてもいいように、何でもやってやるさ」
この国、コールザード王国の中でももっとも外景から隠されたこの場所には、子供たちが集まっていた。
ここでしか、生きていられないのだろう。
それを救うべく彼女は、命を賭して活動している。
「……そうか。なら、そうなる日が来るといいな。スー、行こうか」
「……ん、任せて」
帝国でやらかしたことのように、表沙汰にならない程度であればよかった。
しかし彼女の想いに偽善で応えるのであれば、それは間違いなく外へ洩れる。
ルーンの件で学んだ俺には、すべてを力で解決するという選択肢は存在しない。
徹底的な根回しを済ませなければ、それは実行できないだろう。
「食糧と魔道具を置いておいた。それで、しばらくは持つと思う」
「!」
「次に会うときは、また俺に何か教えてくれよな。そうだな……国に来たら、何をするのがオススメなのか、とかな」
「ちょ、ちょっと待っ──!」
そう言って、彼女の言葉を遮るように転移でこの地を去る。
……偽善者的に、こういう去り方は自己中だろうとカッコいいと思います。
まだの方は、そちらからぜひ
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「ここかな……っと、居た居た」
結界を渡り、辿り着いたのは袋小路。
そこではいかにもな、子供を大人たちが囲い込むというイベントが行われていた。
「行きますか──“隔離結界”」
子供と大人たちを、それぞれ結界で包む。
内部からの脱出が困難な結界なので、強引に突破することはほぼ不可能だ。
「大丈夫か、小僧」
「こ、これって……」
「結界だ。まあ、いずれ解除されるさ。それよりいったい、何があったんだ?」
尋ねると、子供はポツポツと語り始める。
自分はスラム街で生きる子供で、貰ってきたお零れを届けようとしていたところ、大人たちに絡まれたと。
「経験があるだろうに。どうして今回に限って、ここまで追いつめられたんだ?」
「うっ……今回はその、相棒が休みで」
「はぁ……じゃあ、しばらくそのままでいればいい。今度はそいつらから聞くから」
「えっ!? し、信じてくれねぇのかよ!」
俺が物語の主人公なら、迷わず子供を信じられるのだろうが……残念、偽善者です。
どっちの方が俺にとって都合がいいのか、それを考えてから決めるつもりだ。
「というわけだ、さっそく理由を──」
「ペッ! 死ね、クソガキ共々」
「…………」
「…………に、兄ちゃん?」
さて、どうしたものか。
俺は偽善者なので彼らにも救いを……とも思っていたが、残念ながら畜生と語らうほど愚かでも無いからな。
「──“錯乱逆上”」
「「「ぎゃぁあああああ!」」」
精神魔法“錯乱逆上”。
その名が示す通り、精神に干渉して狂わせることができる魔法だ。
今回は結界の中に閉じ込めてあるし、外部へ悪影響を及ぼすことはない。
むしろ、子供に教えることができる──逆らうとどうなるか、一石二鳥だな。
しばらくその惨状を見ていると、糸が切れたように大人たちはバタリと倒れる。
死んだわけではなく、暴走のし過ぎで気絶してしまっただけだ。
「……さて、と」
「ヒッ!」
「そう怯えないでくれよ。俺はお前を助けた恩人だ、ならどうすればいいか……分かっているだろう?」
子供であろうと、容赦はしない。
少なくともこいつは、普段であれば逃げ果せるだけの能力を持っているのだから。
「な、なんだよ……」
「……マジか。そうか、またかよ……なら、変更だな」
「な、なんなんだよ!」
「こっちの話だ。そうだな──よし、どこか見栄えのある場所を教えろ」
へっ? と呆けた表情を浮かべる少女に、そんなことを尋ねるのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
「スー、起きてくれ」
「……ん、着いた?」
「ああ、地元の人に聞いた場所だ。ほら、見てごらん」
目を覚ましたスーが観るのは、淡い光が氷の屋根に反射して輝く幻想的な光景。
少々小高い場所に存在するそこは、先ほどの少女が教えてくれた絶景スポットだ。
「綺麗……凄い」
「そうか、なら聞いておいてよかったよ。いい夜だな、スー」
「うん、とっても……ありがとう、メルス」
潤んだ瞳を向けてくるスー。
眠たげだが、その瞳の奥に宿る意思はとても強い。
それに応えるべく、顔を近づけ──
「なあ、兄ちゃんたち……もういいか?」
「「…………」」
「な、なんだよ……って、また結界か!?」
「これこれ、スーさんや。彼女が情報提供者だからな、そしてここはこの子たちの拠点でもある。だから、あんまり責めないでやってほしい」
スーが頬をやや膨らませながら、俺たちの逢瀬を割いた少女を結界で囲んでいた。
結界自体はただの膜なんだが、時間経過で空気が減っていく仕様だったな。
まあ、一定量まで減ったら排出も解除されるようになっている辺り、やっぱりスーは優しい子だって再認できたけど。
「改めまして。俺はメルスでこっちはスー、まあ南の方から旅をしてきた」
「……ん、よろしく」
「というわけだ。まあ、特別何かをしに来たわけじゃない。そのうち、俺たちはまたどこかへ消える。今回はただ、スーを喜ばせるために綺麗な物を見に来ただけだ」
「……この国に、綺麗な場所なんてないさ」
吐き捨てるように呟く少女に、なんとなく偽善の予感を感じ取った。
とはいえ、これはあくまで予感……そして何より、まだそのときじゃない。
「もし、綺麗にできるなら?」
「そんなもの、決まっているさ。アイツらがおれたちみたいな苦しみを経験しなくてもいいように、何でもやってやるさ」
この国、コールザード王国の中でももっとも外景から隠されたこの場所には、子供たちが集まっていた。
ここでしか、生きていられないのだろう。
それを救うべく彼女は、命を賭して活動している。
「……そうか。なら、そうなる日が来るといいな。スー、行こうか」
「……ん、任せて」
帝国でやらかしたことのように、表沙汰にならない程度であればよかった。
しかし彼女の想いに偽善で応えるのであれば、それは間違いなく外へ洩れる。
ルーンの件で学んだ俺には、すべてを力で解決するという選択肢は存在しない。
徹底的な根回しを済ませなければ、それは実行できないだろう。
「食糧と魔道具を置いておいた。それで、しばらくは持つと思う」
「!」
「次に会うときは、また俺に何か教えてくれよな。そうだな……国に来たら、何をするのがオススメなのか、とかな」
「ちょ、ちょっと待っ──!」
そう言って、彼女の言葉を遮るように転移でこの地を去る。
……偽善者的に、こういう去り方は自己中だろうとカッコいいと思います。
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