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偽善者と廻る縁 二十八月目
偽善者と他世界見学 その12
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コールザード王国
「スー、着いたぞ」
「……ん、おはよう」
「もう時間は夕暮れなんだがな。おはよう、スー。ほら、ここがコールザード王国だ」
「……寒い」
街中にいくつも氷柱が立ち並ぶ、家屋を氷で築く場所もあるファンタジーな国。
さながら、雪の女王の居城を思わせるこの地は、かつて隣国で暗躍していた。
戦争を引き起こし、攻め滅ぼすことで結界で守られたスリース王国を占拠。
そうして、益を得ようとしていたが……偽善者が関わり、それは防がれた。
まあ、止めさせる対価として、複製したエリアボスの討伐報酬を渡したからな。
無限に水が出るホースと、金の巡りが良くなる象牙……意味があるかは別だけども。
彼らはそこに付加された価値、つまり討伐報酬──神々の試練を経て得たアイテムであるという点から、通常以上の価値を勝手に見出していたらしい。
「まあ、安全な水が出ることは事実だし、鑑定や解析をいくら重ねても、事実であることは変わらないからな。ところでスー、結界の方は構築してくれたか?」
「……ん、バッチリ」
「二重展開を無詠唱でこうもあっさりと……うん、やっぱりスーは凄いな」
「嬉しい、もっと褒めて」
熊耳と尻尾をピクピクと動かす彼女を、思うままに撫でておく。
目を閉じてリラックスした表情を浮かべる姿に、俺もまた心が癒えていった。
アルカの思考詠唱とも違う、スーは詠唱を必要とせずに結界が構築できる。
受肉の影響か、武具っ娘であること自体が理由なのかは不明なんだがな。
一つ言えるのは、それを人が行うのは非常に難しいということ。
適性の高い属性で、これまた使い慣れた魔法ならあるいは……という感じだな。
スーが展開した結界はそれぞれ──俺と彼女の存在を隠蔽する結界と、この国すべてを包み込む結界。
前回は乗っ取って調べていたが、今回は一からスーに構築してもらった。
特に強い効果は発揮しないが、内部の探知であればこれで充分なんだろう。
「しかしまあ、ここの人たちはどうやって生き残っているのやら」
「……ん、たぶん無理。貴族はともかく、残りは賭けの要素」
「鑑定眼っと……耐寒スキルが高いな。つまり、対策も何もなく命懸けで得ているわけだな。まあ、当然と言えば当然か」
派手な格好をした貴族のような者以外は、誰も彼もが耐寒スキルを有している。
そのレベルはこの地で生き抜くためにとても高く、大人は平然としていた。
逆に子供たちはレベルが低い、もしくは未習得のため衰弱している場合が多い。
外に居るのは、事情のある子供だろう……おそらく、全員が生き残れるわけではない。
だがいかに偽善者とはいえ、そこで結界を構築するようなことはしないつもりだ。
この環境ゆえ、彼らは先の件を行うという選択をした。
一度選んだ、自分たちで決めたことに至るまでの道を認識しているのであれば、彼らはもうそこに迷いを覚えない……要するに、戦争という選択肢を何度でも取るのだろう。
「とはいえ、子供たちに罪が無いのもまた事実。矛盾した行いをするのも、ある意味偽善者って感じだよな──スー、頼む」
「……ん、ラジャー」
スーが視線を向けた先の子供たちを、結界が包み込む。
完全な防寒にはならないが、スキルを一定レベルに上げるのに程よい温度のはずだ。
そういう配慮ができるのも、スーのイイところだな。
本人曰く、【怠惰】だからこそできることらしいが……早く終わらせたいのだろう。
「……ん、少しお休み」
「ああ、それはいいんだけど。目を覚ました時、どういう場所に居たい?」
「…………綺麗な、所……Zzz」
「了解。じゃあ、しばらくはゆっくりしていてくれていいからな」
スーが結界を構築したのは、結界内における寒さに負けそうな子供たち全員。
いかに結界の操作技術に長けたスーであろうと、簡単にできることではない。
また疲れてしまったスーを背負い、どこか綺麗な場所がないかを探る。
間もなく完全に日が沈む……夕焼けはスーの休憩時間的に、まだ無理だろう。
「となると、夜だからこそ綺麗な場所を選ばないといけないか。イルミネーション……無いし、星の見える場所か夜の町並みが鮮やかに見える場所がいいかもな」
そういった知識に疎かった俺だが、眷属といろんな経験をして少しずつ磨かれた。
直接どう接すればいいという経験はまだまだだが、場所などであれば……だいぶな。
「普通の場所だと、あんまりなんだよな……となると狙い目は、やはり人気の少ない場所なのかな?」
自身の勘に任せて移動を開始する。
活気が溢れるというほどではないが、この地を生きる人は寒さに負けないように声を出して活動していた。
「だ、誰か助けてぇええ!」
「……こういう声も含めてな。今度はいったい、どんな揉め事が起きているのやら」
スリース王国に居たとき同様、スーが起きないようにいくつかのスキルを模した動きで体を安定させたまま、叫び声が上がった場所に急行する。
──せめて、偽善者らしく活動できる内容であればいいけど。
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コールザード王国
「スー、着いたぞ」
「……ん、おはよう」
「もう時間は夕暮れなんだがな。おはよう、スー。ほら、ここがコールザード王国だ」
「……寒い」
街中にいくつも氷柱が立ち並ぶ、家屋を氷で築く場所もあるファンタジーな国。
さながら、雪の女王の居城を思わせるこの地は、かつて隣国で暗躍していた。
戦争を引き起こし、攻め滅ぼすことで結界で守られたスリース王国を占拠。
そうして、益を得ようとしていたが……偽善者が関わり、それは防がれた。
まあ、止めさせる対価として、複製したエリアボスの討伐報酬を渡したからな。
無限に水が出るホースと、金の巡りが良くなる象牙……意味があるかは別だけども。
彼らはそこに付加された価値、つまり討伐報酬──神々の試練を経て得たアイテムであるという点から、通常以上の価値を勝手に見出していたらしい。
「まあ、安全な水が出ることは事実だし、鑑定や解析をいくら重ねても、事実であることは変わらないからな。ところでスー、結界の方は構築してくれたか?」
「……ん、バッチリ」
「二重展開を無詠唱でこうもあっさりと……うん、やっぱりスーは凄いな」
「嬉しい、もっと褒めて」
熊耳と尻尾をピクピクと動かす彼女を、思うままに撫でておく。
目を閉じてリラックスした表情を浮かべる姿に、俺もまた心が癒えていった。
アルカの思考詠唱とも違う、スーは詠唱を必要とせずに結界が構築できる。
受肉の影響か、武具っ娘であること自体が理由なのかは不明なんだがな。
一つ言えるのは、それを人が行うのは非常に難しいということ。
適性の高い属性で、これまた使い慣れた魔法ならあるいは……という感じだな。
スーが展開した結界はそれぞれ──俺と彼女の存在を隠蔽する結界と、この国すべてを包み込む結界。
前回は乗っ取って調べていたが、今回は一からスーに構築してもらった。
特に強い効果は発揮しないが、内部の探知であればこれで充分なんだろう。
「しかしまあ、ここの人たちはどうやって生き残っているのやら」
「……ん、たぶん無理。貴族はともかく、残りは賭けの要素」
「鑑定眼っと……耐寒スキルが高いな。つまり、対策も何もなく命懸けで得ているわけだな。まあ、当然と言えば当然か」
派手な格好をした貴族のような者以外は、誰も彼もが耐寒スキルを有している。
そのレベルはこの地で生き抜くためにとても高く、大人は平然としていた。
逆に子供たちはレベルが低い、もしくは未習得のため衰弱している場合が多い。
外に居るのは、事情のある子供だろう……おそらく、全員が生き残れるわけではない。
だがいかに偽善者とはいえ、そこで結界を構築するようなことはしないつもりだ。
この環境ゆえ、彼らは先の件を行うという選択をした。
一度選んだ、自分たちで決めたことに至るまでの道を認識しているのであれば、彼らはもうそこに迷いを覚えない……要するに、戦争という選択肢を何度でも取るのだろう。
「とはいえ、子供たちに罪が無いのもまた事実。矛盾した行いをするのも、ある意味偽善者って感じだよな──スー、頼む」
「……ん、ラジャー」
スーが視線を向けた先の子供たちを、結界が包み込む。
完全な防寒にはならないが、スキルを一定レベルに上げるのに程よい温度のはずだ。
そういう配慮ができるのも、スーのイイところだな。
本人曰く、【怠惰】だからこそできることらしいが……早く終わらせたいのだろう。
「……ん、少しお休み」
「ああ、それはいいんだけど。目を覚ました時、どういう場所に居たい?」
「…………綺麗な、所……Zzz」
「了解。じゃあ、しばらくはゆっくりしていてくれていいからな」
スーが結界を構築したのは、結界内における寒さに負けそうな子供たち全員。
いかに結界の操作技術に長けたスーであろうと、簡単にできることではない。
また疲れてしまったスーを背負い、どこか綺麗な場所がないかを探る。
間もなく完全に日が沈む……夕焼けはスーの休憩時間的に、まだ無理だろう。
「となると、夜だからこそ綺麗な場所を選ばないといけないか。イルミネーション……無いし、星の見える場所か夜の町並みが鮮やかに見える場所がいいかもな」
そういった知識に疎かった俺だが、眷属といろんな経験をして少しずつ磨かれた。
直接どう接すればいいという経験はまだまだだが、場所などであれば……だいぶな。
「普通の場所だと、あんまりなんだよな……となると狙い目は、やはり人気の少ない場所なのかな?」
自身の勘に任せて移動を開始する。
活気が溢れるというほどではないが、この地を生きる人は寒さに負けないように声を出して活動していた。
「だ、誰か助けてぇええ!」
「……こういう声も含めてな。今度はいったい、どんな揉め事が起きているのやら」
スリース王国に居たとき同様、スーが起きないようにいくつかのスキルを模した動きで体を安定させたまま、叫び声が上がった場所に急行する。
──せめて、偽善者らしく活動できる内容であればいいけど。
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