上 下
43 / 46

43 性癖の力

しおりを挟む

 四十三話 性癖の力


「ねぇ福田、今日学校終わったら空いてる?」

「え?」


 帰りのホームルームが終わり、声をかけてきたのはスパイの多田麻由香。
 他のクラスメイトたちにオレと話していることがバレないよう、窓の外へ視線を向けながらさりげなく話しかけてくる。


「なんで?」

「ちょっと話したいことあってさ」

「まぁ……いいけど」

「おっけ! じゃあ早速行こう!!」

「えぇええ!?」


 多田は素早く方向転換。 オレに体を向けると勢いよく腕を引っ張る。


「ちょっ……な、なんだ!?」

「ほら、早く!!」

「んんん!?」


 こうしてオレは多田に強く引っ張られながら教室をあとに。
 教室を出る際どこからか「福田くん、今度は多田さんにいじめられてるのかな」などという会話を耳にしながら目的地まで連れて行かれたのだった。


 ーー……やっぱりオレっていじめられキャラが定着してるのな。


 ◆◇◆◇


 多田に連れられて向かった先。 それは図工室前の女子トイレ……ではなく、学校の外のなぜかゲームセンター。
 前に工藤と一緒にご飯を食べたファミレスの近くだ。


「なぁ、なんでここなんだ? お前ここでオレをいじめんのか? 流石に学校に連絡行くぞ」


 オレが半分呆れながら多田に話しかけると多田は「なんでそうなるの」とため息をつく。


「ん? 違うのか?」

「違うよ! ほら、あそこ見て!!」

「あそこ?」


 そう言って多田が指差したのは子供がよく遊んでいる印象のゲーム筐体。

 なんだ? 格ゲーとかでオレをボコろう……とかそんなこと考えてるのかな。 そんなことを考えながら首を傾げていると、その筐体の上に大きめのポスターが貼ってあることに気づく。
 一体なんのポスターなのだろう。 オレはなんとなくの感覚でそこへ視線を向けてみたのだが……


「ーー……ん? んんん!!??」

 
 オレの視界に映るもの……それはラブカツのポスター。
 
 
 しかもただのポスター程度じゃオレはこんなに驚かないぜ?
 そこにはこんなメッセージが書かれていたんだ。


【君もオーディションに合格して、ラブカツの映画に出よう!!】


「オ、オーディションに合格してラブカツの……映画?」

「ね、福田、びっくりしたでしょ!」


 オレの反応に満足したのか多田が嬉しそうにオレの腕を引っ張ってくる。

 詳細に目を通してみると、どうやら夏休みの序盤くらいにこの近くでラブカツのイベントをするとのこと。
 そして希望者はそこでアイドルになりきって歌やダンスを披露。 審査員の目に留まれば来年か年末に上映予定の『劇場版ラブカツ』に出演できる……というものだった。
 そしてこの直後、オレは多田から衝撃の一言を聞くこととなる。


「福田ってさ、あの工藤お兄ちゃんと一緒でラブカツ好きだったじゃん!? ウチあれ出たいんだけどさ、練習付き合ってくれないかな!」


 ーー……。


「え、多田、出るの?」

「うん! ウチ出たい!」

「そ、それでオレに練習付き合えと?」

「いいっしょ!? もしウチが受かったら、福田もラブカツの人に会えるんだよ!!」

 
 なん……だと。
 それはかなり素晴らしいじゃないかあああああああ!!!!!


 参加条件は小学生の女子限定。 オレは参加することはできないが、多田の関係者として……裏方に回っていればもしかしたらラブカツの主人公・天空のぞみちゃんの声優に会えるかもしれないってことかあああああああ!!!!
 これは既に穏やかじゃないぜええええええええ!!!!

 オレの心臓がロックなビートを刻み始める。

 もちろんオレはこの体に入る前は普通のサラリーマンとして日々を過ごしていたのが、アイドル育成ゲームなら中毒のようにやり込んでた時期がある!!
 所詮ゲームだと思うかもしれないがノンノン!! 人生に無駄な時期なんてないのだ!!


 今こそゲームで得た知識を活かす時!!!


「多田!」

 
 オレは多田の両肩をガシッと掴むと、まっすぐ目の前の多田を見据える。


「な、なに!?」

「やるぞ! やるからにはオーディション合格だ!!!」

「ーー……!! やってくれるの!?」

「もちろんだ!! ともに目指すぜTEPPEN!!!」


 となれば早速準備に取り掛からなければならない。
 オレはその日のうちに工藤に電話。 ラブカツオーディションのことを伝え、協力を要請したのだった。

 ーー……え? 返事はどうだったかって?

 もちろん工藤も乗り気で……しかもすぐにOKしてくれたさ!
 ちなみにその時の会話はこんな感じだったのだが……


『工藤!! 朗報だ!! 時間あるか!?』

『どうしたの? うん、今は休憩中だから10分だけど大丈夫だよ』

『あのさ、多田麻由香いるじゃん!? ほら前一緒にご飯食べたJSの』
 
『うん』

『なんかあいつ、ラブカツのオーディションがあるから出たいって言っててさ』

『え! ガチ!?』

『そうなんだよ!! それで工藤にも手伝ってもらおうかと……』

『あー、でも仕事が最近忙しくてなぁ。 どうしよう』

『ーー……今は夏。 踊りもあるってことは……練習中、JSの脇を近くで拝めるぞ』

『ヒョッハアアアアアア!!! 是非手伝わせてくれ! 衣装代も僕が出す!! 近くで脇を拝めるためならガンガン有給とって休んでやるさ!!!』


 性癖の力ってすごいよな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

雌犬、女子高生になる

フルーツパフェ
大衆娯楽
最近は犬が人間になるアニメが流行りの様子。 流行に乗って元は犬だった女子高生美少女達の日常を描く

処理中です...