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44 体験してみたかったことの1つ!!
しおりを挟む四十四話 体験してみたかったことの1つ!!
「よし、今日からオレのJSオーディション特訓の日々が始まるぜ!!」
オレは心を躍らせながら学校へと向かう。
あ、ただラブカツのオーディションで合格した時のことだけを考えているわけではないぞ? そう……これはまさにオレが体験してみたかった人生経験の1つ!!
【男女の秘密の共有】ができるかもしれないのだ!!
ーー……え、それって何かって?
説明しよう! 【男女の秘密の共有】とは文字通り男と女、2人しか知り得ない秘密をお互いに共有することによって特別な感情が芽生える……というインキャだったオレからしたらまさに都市伝説のようなものなのだ!!
もし多田がクラスのみんなにラブカツのオーディションに出ると宣言してみろ。
前にファミレスで多田が言っていたラブカツについての言葉……
『みんな見てなくて話せなかった』
この発言からみんなラブカツを知らない・または見ていないことが伺える。 まぁ小学生低学年までを対象にしたアニメだからな。
だからこそ多田はオーディションを受けることをみんなには言わない……いや、言えないことが予想できるんだ。
そんな状況の中でのオーディションに向けての練習……2人だけの秘密。 これに興奮しない男がどこにいる!? いや、いない!!!
なので早速オレは今日、多田がオーディションで歌う曲の候補を動画サイトでピックアップして持ってきたわけだが……
「さて、多田はどの曲を選ぶんだろうな。 あぁ……JSとこんな真剣にアニメに向かい合う日がくるなんて!!」
オレの脳内ではラブカツの曲がリピート……工藤がいない時間、多田と2人で練習している風景を想像しながら学校へと到着。 下駄箱へと向かった。
◆◇◆◇
オレが下駄箱の前で上靴に履き替えているとちょうど三好・多田・小畑の3人が仲良く登校してくる。
「あ、そうだ佳奈、美波ー。 ウチ、今度ラブカツのオーディション出るんだよねー!」
ズコオオオオオ!!!!
あまりにも唐突。 オレは驚きのあまり勢い余って上履きを蹴り上げてそのまま転倒……尻餅をついてしまう。
いてて……早速ぶっちゃけてんじゃねえかあああああ!!!!
「あっはっはっは!!! ねぇ何してんの福田ぁー、ダッサーー!!!」
先ほどのオレの転倒を目の前で目撃した小畑が涙を流しながら爆笑。 オレの目の前にまで駆け寄り、前のめりになりながらオレを指差してバカにしてくる。
ーー……おぅ小畑、首から滴る汗がそのまま鎖骨の方へ。 セクスィーですわぁ。
そんな小畑に続いて三好も登場。 「ほんと福田ドジだよねー。 そんなんだからイジメられんだって」と小畑に合わせるように三好もオレに軽く罵声を浴びせてきた。
あー、この感じ……いい。
朝からJSによる悪口。 それも間近できめ細やかな肌を拝みながらなのだから、夏の不快な暑さも吹き飛ぶってもんだよな。
さて今度は多田の番かな……オレは期待を込めた視線を多田に向けた。
「ねね福田! 佳奈と美波にも手伝ってもらっちゃダメかな!!」
ーー……。
「へ?」
多田が目をキラキラと光らせながらオレにそう言うと、三好が頭上にはてなマークを浮かばせながら「え、どうしたの麻由香。 福田となんかあったの?」と多田に尋ねてきた。
「あ、さっきウチがしたラブカツのオーディションなんだけどね、福田に手伝ってもらうことになったんだー!!」
なんという即答。 多田が純粋な笑顔を三好と小畑に向ける。
「「ええええええええええ!!??」
もちろん2人は大驚き。
「え、麻由香まじー!?」やら「なんで福田なんー?」やらとオレや多田に質問を浴びせ始めたのだが……
「あ、そうだ福田。 どうせならさ、佳奈と美波も手伝ってもらうんじゃなくて、本当のラブカツみたいにウチとユニット組んでやっちゃうのどうかな!」
「え」
「「え」」
オレや三好・小畑の視線が同時に多田の方へ。
しかし多田はそんなことでは気にしないのか「ねね。佳奈たちはどう思う!? 絶対楽しいよ!!」とテンション高めに誘い始める。
まぁ確かにラブカツは基本ユニット曲が多いし、3人の方がそりゃあ華があるかもしれないけど……この2人がやると思うか?
オレは多田に無理強いはしないよう注意しようと「あのさ……」と声をかけながらゆっくりと立ち上がる。
しかしそう……上履きを履く寸前だったオレはちゃんと履けてなかったんだよなぁ。
上履きの上でツルンと滑ったオレはバランスを崩しそのまま床へ。 おそらくはそこで頭でも打ったんだろうな。 目を覚ますとそこは保健室のベッドの上だった。
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