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◆第二章
2.「超目立つ」
しおりを挟む琥珀の服を、コインロッカーに押し込んでから、一緒に山の方へと歩き始める。
「あそこだよ。見える?」
「あぁ。あれか……」
ずいぶん先の方にあるように見えるけど、あの場所までは、そんなに遠くはない。
駅からすぐのここらへんは店も多くて拓けているけど、もう二十分も歩けば、緑が多い緑地公園への入り口があって、その公園に行く途中の脇道が山へ登る階段に続いてる。
山と言ってもそんなに高く険しいわけじゃない。その階段をのぼれば二十五分くらいで動物園があって、その奥に城址がある広場に出る。
階段をのぼらなくても、車で緑地公園の方から舗装された道路をまわれば駐車場も上にあるから、小さい子供を連れた家族連れがすごく多い場所なんだけど。
……思い浮かぶその光景の中に、いったいどこに「水晶」があるんだろうと不思議でならない。
ていうか、水晶って、小さいよね?? 見つかるものかなあ……?
「行けば、どこにあるか分かるの?」
「多分」
そうなんだ。まあ、琥珀がそう言うならとりあえず行くだけだけど。
そう思いながら、広い歩道を琥珀と並んで歩く。
昔は畑ばかりだったここらへんを、駅ができる時に一斉に開発したらしい。もともとあった山や公園、動物園にも客を呼ぼうということで、そこまでの歩道もめちゃくちゃ広くとってあって歩きやすい。バスも出てるし、結構立派な観光地になってると思う。駅近くには大きなスーパーやたくさんの飲食や小売りの店もあるから、人通りはすごく多い。
そんな人通りの多い中を、琥珀と並んで歩いていると、なんだかものすごく、視線を感じる。
「――――……」
すれ違う人が、琥珀を見てるんだよね。
小さい子までが、琥珀を見上げながら歩いていく。
……目立つもんね。なんか、見ちゃうのは、分かる。
日本人ぽく、ないからかな。まあ日本人じゃないし……というか、純粋な人間でもないけど。
でっかいし、やたら脚長くて、ウエスト、そこ?て思っちゃう位で。
そんで、顔見ると、すごい目立つイケメンで、これまた日本人て感じではない。すごいはっきりしてるというか。……強そう、というか? 日本人で琥珀に喧嘩売る人は居ないんじゃないかなあ。だって迫力ありすぎて、怖いし。
さっきは、服屋さんで、のんきに話してたから怖がられてなかったけど。むしろ、面白がられてたんじゃないのかな、偉そうな話し方が……。
今、特に話さずに周りをきょろきょろしていると、多分きっと皆、カッコいいとも思うんだろうけど、ちょっと怖い、とも思ってるんじゃないかな……。
視線がすごく遠巻きなんだよね。バレないように、見てる感じがするんだよね……。
獣人て、皆こんな感じの、怖いくらいのイケメンとか美人さんなのかな??
なんて少し興味はある。
それとも、オオカミだから、怖い感じ、なのかな? オオカミって精悍な感じするもんね。
……いつか行けたら、それも見れるんだ。と、なんだか、少しわくわくするような、怖いような、不思議な気持ちがする。
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