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◇腕枕

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 しばらく抱き合った後。
 もう少し寝ましょうかと聞くと、先輩が頷いたので、布団の部屋に戻った。

 さっき2人で一緒に寝てた方は乱れていたので。


「――――……こっちで、一緒に寝ますか?」


 そう聞いたら。


「うん」

 やたら素直に頷いて、先輩が同じ布団に足を向ける。先に布団に座って先輩を見上げると、めちゃくちゃ照れたように、すとん、と勢いをつけて隣に座った。

「――――……なんすか、それ」

 ぷぷ、と笑ってしまう。


「……恥ずかしくないか? 普通に同じ布団に入るとか」


 だめだこれ……とぶつぶつ言いながら、立てた膝の間に顔を埋めてる。


「――――……陽斗さん」
「……っう、わ」


 抱き寄せて、そのまま、布団に転がる。


「なんかほんと――――…… 可愛いですよね」


 クスクス笑うと、先輩は口を閉ざして何も言わない。
 


「――――……腕枕したら、怒ります?」

「……今更それ位で怒んないけど」

 クスクス笑って、「でも重いよ?」と言う。

「怒らないなら、させてください」
「――――……」

 枕と先輩の間にうまく腕を挿しこんで、そのまま抱き寄せてみる。


「寝辛いですか?」
「……大丈夫」

「このまま寝れそうですか?」
「……うん」

 なんか――――……ものすごく、穏やかな、時間。


 先輩の声もゆっくりだし、ものすごく静かで。



「お前、腕枕、うまいなー……」


 ぽそっと、先輩が呟く。


「うまいって……うまいですか?」

 くすくす、と笑うと。


「……慣れてる?」

 そんな風に聞かれる。


「……慣れて――――……まあ何回かはしたことありますけど……」
「……ふーん」


「……ヤキモチですか?」
「――――……ちがうし」

 からかいまじりに聞いてみると。少し黙った後、ぽそ、と呟く、
 なんか可愛いので、抱き締めてみる。


「…………お前さー……」
「……はい?」

「タラシだろ……絶対……」
「――――……」


 タラシ。
 ……久しぶりに聞いたな。

 女タラシ。
 一番聞いてたのは、高校生ん時かなあ。


「……陽斗さんが今オレに、タラサれてるってことですか?」

「……そんな事は……言ってないし」


 また長い間が空いて、先輩がぽそ、とそんな事を言ってる。

 ……あーなんか、可愛いな……。



「……オレ腕枕されんの初めて」


 とか。急に言う。
 もう、ぷ、と吹き出してしまう。

「女の子に腕枕されてたらびっくりですけど」
「……まあそーか」

「……てか、オレだって、腕枕された事なんか無いですよ」
「……まあそーだよね」

「あんまり男は腕枕はされないですよね」

「――――……じゃあ腕枕する?」
「え?」

 先輩が急にオレの腕の中から抜け出して起き上がると、枕にぽふと改めて埋まった。何事かと、肘をついて起き上がってるオレに向けて、ほい、と腕を伸ばしてくる。


「はい、来てみ?」
「――――……」



 来てみ、って。

 ――――……オレ、そこに行くの? 



 すげー恥ずかしいんだけど。


 




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