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第2章
◇朝のひととき*拓哉
しおりを挟む翌朝。オレの方が先に目が覚めた。
あと十分位は寝かせてあげててもいいなと、時計を確認。
そのまま、織田の顔を見つめた。
……すやすや、といった表現がぴったりな感じで、寝てる。
ほんと、可愛いな……。
この瞳が開くと、いつもまっすぐにオレを見て、笑う。
なんだかとても、嬉しそうに。
初めて会った時から、まっすぐに、向かってくる瞳。
オレが、それをどんなに好きか、織田はちゃんとは知らないだろうなぁ……。
「――――……」
昨日は、珍しく、何もしないで寝たかも。
……織田といるといっつも触っちゃうからな……。
昨日はさすがに疲れてるだろうし、今日も忙しそうだったから、かなり自重したけど。
「……あ」
急に目をぱっちり開けて、声を出した織田と、ばっちりいきなり目があった。
「……おは、よ」
「おはよ、織田」
「……びっくりした。目が、いきなり合うから」
「顔見てたから」
「……高瀬って、いっつもオレの寝顔、見てない……?」
「見てる」
「……オレ、変な顔、してない?」
「……んー、まあ……ちょっとしてる時もあるかなあ」
何を言ってるんだろうと思いながら、ちょっとおもしろくて、そう言ってみたら、織田はうわーと顔をしかめる。
「やっぱり? ……見なくていいよー、半目開けてる時とか無い?」
「……あったかなあ……」
「えっあるのー??!」
「何で聞くの?」
「弟が半目あけて寝るからさーそれ面白くて……でもオレもだったとは、知らなかった……」
朝から妙なことにショックを受けて、ずずーん、と沈んでる織田に、オレは我慢できなくて、ぷっと笑い出した。
「半目ないし、変な顔してる時も無いよ」
「えっ」
「いつも可愛く、スヤスヤ寝てるよ」
「……ほんとに?」
「ほんとほんと。今度写真とっといてあげようか?」
「いやいや、大丈夫。寝顔とか、恥ずかしい……」
無理無理と言いながら織田が苦笑い。
「……そろそろもう起きる時間?」
「そうだな、そろそろ」
「分かった」
もぞもぞ起き上がって、ベッドの端に座ってから、ふと、オレを見る。
「ん?」
「――――……」
もう一度ベッドの上に乗っかってきたと思ったら。
ぎゅ、と抱きついてきた。
「昨日は、なんもしないで、寝たなーって、ちょっと思って」
「……」
「あ、違うよ、してほしかったとかじゃないんだよ。って、してほしくなかったって訳でもないんだけど……って、オレは一体何が言いたいんだって、思うよね」
一人であわあわ慌ててるのが、たまんなく可愛いけど。
「違うんだよ、そういうんじゃなくて……」
もう一度、ぎゅ、としがみつかれて。
「……なんとなく、ちょっとだけ、くっついておいただけ」
「――――……ふ……」
「あ。笑われてる……」
織田は、ちょっと恥ずかしそうに言いながらも。
すりすりオレにくっついてから、ぱ、と離れた。
「ありがと」
「もういいの?」
「うん。補充完了」
そんな風に言って笑う織田にまた笑ってしまいながら。
「じゃあオレも」
「え」
びっくりした顔の織田を引き寄せて、抱き締める。
「――――……高瀬?」
「オレも。さっき昨日しなかったなーって思ってた」
「…………」
「それはそれで、別に良かったんだけど」
「うん。だよね。それはそれで、なんか良かった」
「……今日は早く帰れるといいな」
「うん。オレ次第だよね。頑張りまーす!」
意味が分かってるんだか、分かってないんだか。
織田は楽しそうに言って、オレを見上げて笑った。
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