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第2章

◇寂しいとか*拓哉

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 翌日、お揃いのタイピンで、めちゃくちゃご機嫌の織田と出社。

 もちろん、オレも、柄じゃないけどすごく嬉しいというか、そんな気分ではあるのだけれど。
 織田はというと、見るからにご機嫌で、周りに笑顔を振りまいている。

 織田が笑顔だと、オレだけじゃなくて、皆が和むみたいで。
 ……まあ、それは前からそうなんだけど。

 結構なクセのある先輩たちも、織田にはなんだか優しくしてる気がして、面白い。多分織田が居なかったら険悪になりそうなムードの時も過去に何回もあったけど。

 ……織田の、のんきで明るい言葉と笑顔が、険悪なムードを簡単に吹き飛ばすところを、結構何回も見てきている。本人全く意識してないけど。
 ほんとに、めったに居ないタイプな気がしてる。
 ただ明るいとか、自分が笑顔の奴っていうのはたくさん見たことあるけど。
 織田が居ると、周りの人間も、明るくなる気がする。

 すごい才能なんじゃないのかなと思ってるけど、多分オレとは正反対の性質だとも思う。それを、こんな風に好きになってる自分が良く分からないが。好きなものは好きで、疑いようもない。

 朝のミーティングで、渡先輩とオレは、午後から取引先に行くことになってしまった。しかもその後、飲みになりそうで、織田と話したら、今日は織田が自分の家に帰ることになってしまった。

「……まあ、寂しいけど、しょうがないか……」

 とっさに漏れた自分の言葉。
 それにちゃんと気づいたのは、織田がめちゃくちゃ嬉しそうにオレを見てからだった。何でそんな嬉しそう? と思って直前の会話を思い浮かべたら、気づいた。
 ……寂しいけど。とか言ってるし、オレ……。
 ほんとに、昔のオレを知ってる奴らだったら、もう絶対に、笑うだろうな。
 というか、自分でも信じられない。

 とにかく午前中ずーっとご機嫌で仕事をしてる織田が可愛くて、ずっと見てたい気分を抑えつつ、仕方なく午後は会社を出て渡先輩と取引先に向かった。
 先輩の予想通り、結局連れていかれた夕食を終えて、一人になると、思わずため息。

 ……織田もう、家に帰ったよな。
 電話しようかなとも思ったけれど、どうせ早く家に帰っても織田は居ないし、とりあえず明日の朝忙しいよりはと思って、会社に戻ることにした。

 帰る時に電話しようと思いながら会社に戻り、いつもの業務室に。
 週初めだからか、残業も早めに切り上げて皆帰ったみたいで、誰も居なかった。部屋の中の、自分の列の電気だけつけて、パソコンを立ち上げた。

 コーヒーを飲みながら立ち上がるのを待って、スマホを見るけれど、織田からは特に何も入ってない。

 帰ったよ、とか入れてきそうなんだけど。
 そう思いながら、ログインして、いつも必ず最初にするメールチェックをして、原因が分かった。

 納期を勘違いしてて、とりあえず一人で頑張ることにした……ってことは、織田、まだ帰ってないのか。隣の机を見ると、そう言われてみるといつもよりはまだ片付いていないような。パソコンは蓋が閉まってるから分からなかったけれど、ペン立てとかが真ん中にある。
 何か買いに行ったってことかな。

 ……つか。
 何でオレに言ってこないんだろ。
 まあ……。なんとなく予想はつくけど。

 電話をかけてみることにした。 


 今日はもう、会えないと思っていたから。
 会えるのかも、と思うと。電話をかける自分の心が、少し、弾んでるような気がする。


 どんだけだ? オレ。
 突っ込みを入れながら、織田が出てくれるのを待った。


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