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第2章

◇親指でキス*圭

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「あ、おい、真宙、勝手に行くなよ」

 俊兄が言いながら、また真宙を追いかけていく。

「一番上のお兄さん?」
「うん、そう」

「なんか――――……織田の兄さん、て感じするね」

 高瀬にふ、と笑われて、どういう意味?と聞くと。

「優しくて、おおらか? 良いお兄さんて感じ」
「そう、だね。良い兄ちゃんだったよずっと。このプラネタリウムもさ、俊兄がもともと好きでさ。親が、どこ行きたい?ていうと、俊兄がプラネタリウムって言うから、オレ達兄弟も必然的にいっぱい来てたの」
「あぁ、そうなんだ」

 高瀬はふ、と笑ってる。
 来海の前にしゃがんで、

「来海も、ここよく来るの?」

 そう聞いたら、来海は嬉しそうに笑った。

「うん、いっぱいくるよ」

「そうなんだー。星、好き?」
「うん、大好き」

「そっかー。オレも好きだよ」

 ふ、と笑ってオレが言うと。
 来海がもっと嬉しそうに、にっこり笑う。


「オレも、好きだよ」

 不意に高瀬がそう言って、オレを見てから。
 来海に視線を向けて、くすっと笑む。


 来海は、またまためちゃくちゃ嬉しそうに笑って。
 うんうん、と頷いてる。

「お兄ちゃん、お名前は?」
「拓哉だよ」

「じゃあ、拓ちゃん?」

 その呼び方に、一瞬、オレと高瀬は目を見合わせて。
 ぷ、と笑って。


「拓ちゃんでいいよ、来海ちゃん」

 高瀬が優しい声で言うと。


「圭ちゃん、拓ちゃん、あっちのお月様見に行こうー」
「いいよ」


 来海に引っ張られて、オレと高瀬はついていく。


 来海は見たいところに着くと、オレと高瀬の手を離して、月の展示の所に走って行った。少し後ろから見守りながら。


「高瀬、ありがと」
「いいよ。可愛いし」

「もう行く?」
「良いのか? 別にオレ、織田とあの子達の気が済むまで居てもいいけど」

「お昼とかは?」
「一緒でもいいし、2人でもいいし。任せる」

「一緒でもいいの?」
「別に良いよ? 何で?」

「――――……んー。何となく、オレの親戚と、そんな一緒に居てもらうとか」
「織田のだからじゃん」

 なんか、普通の顔で、高瀬がそんな風に言う。

「――――……」


 オレの、親戚だから。
 普通に。そう言う高瀬に、何か、咄嗟に返事が出てこない。


「織田も楽しそうだし、あの子達も嬉しそうだし。全然良いよ」
「――――……」


 ああ、なんか。
 ――――……すっごい、好きなんだけど。 高瀬。


 じっと見つめてると、ん?と高瀬が微笑む。


「まあ、オレも、ただの友達とかの親戚とは一緒に過ごそうとか思わないけど。来海ちゃん、すげー懐いてくれて可愛いし」
「――――……高瀬がカッコイイからだよ。イケメン好きだから」

「はは。光栄だな?」

 クスクス笑う、高瀬に。
 ――――……なんか。

 めちゃくちゃキスしたい。


 オレが女の子だったら。
 キスしてるだろうなあ。と。

 別に、男同士だから嫌だなんて、今、思って無いけど。


 なんか。男女だったら、ここでしても、そこまで変じゃないかも。とは思ったりして。そういう点では、ちょっと、寂しいような気もするけど。

 と思ってたら。
 高瀬が急にオレの頬をぷに、とつぶして。

「え」

 思った瞬間、親指で、唇に触れた。


「――――……」


 ぷ、と高瀬が笑う。


「――――……キスしたい?」


 こそ、と囁かれて。


「――――……」

 びっくりしたまま高瀬を見つめて。
 頬から離れた指が触れてた所を、思わず触れてしまう。


「……うん」

 頷くと、高瀬は、ふ、と笑って。


「今の、それのかわり。――――……後でな」

 親指で触れたのが。キスのかわり。
 ――――……なんか。笑みが零れてしまう。


「なんでそんなに素直な顔するかなー、ほんと……」

 クスクス笑う高瀬に背中をポンポンされながら、一緒に来海の近くに寄ると。



「あ、圭ちゃん、あれ見てー!」


 来海が指してる先を見ながら来海の隣にしゃがんで、うんうん頷いて。
 そうしながら、立ったまま、来海が指す方を見てる高瀬を、少しだけ見上げて見つめてしまう。



 ――――……なんかもう。ほんと好き。高瀬。
 
 



 








◆ ◆ ◆ ◆ ◆

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