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第2章
◇いい奴*圭
しおりを挟むプラネタリウムを出ると真宙はオレの腕から下りて、展示物の方に小走りしていって俊兄は後をついていった。でも、来海は高瀬の腕から下りようとはしない。
「来海、オレも抱っこしたいなー」
「圭ちゃんには後でだっこしてもらうー」
はは。……高瀬がお気に入りか。
さすが、小さくても、女子。イケメン好きかな。
「平気? 高瀬」
来海、ずっと抱いてると結構重いけど。
思いながら聞くと、高瀬は、ふ、と笑った。
「まだ大丈夫だよ」
そこへ、走っていった真宙を捕まえて抱っこしたまま、俊兄が戻って来た。
そこで、ふっと気づいたように、俊兄が高瀬を見て、笑った。
「ああ、君、あれか。圭と旅行に行ってた?」
「あ、はい」
「なんかどっかで見た事あるなーって思ってたんだけど、あの写真か。美久が騒いでたやつ」
旅行先から兄弟ラインに入れた高瀬とのツーショット。
「良く覚えてたね」
「美久が騒いでるから、うちでその写真見て、ああなるほどって、笑ってたから。そういやそん時も、来海は、カッコいいお兄ちゃん、て言ってたな。好みなのかな、君の顔」
「ていうか、高瀬の顔、好みじゃない女子いるかなあ」
と、ついつい本音で言ってしまうと、俊兄が、オレを見て、ぷっと笑った。
「お前も好みなんだな、高瀬くん」
「え、いや、そういうことじゃなくて……一般的に……」
もごもご言い訳してると、俊兄の腕の中が我慢できなくなった真宙が、またちよっと暴れて、降ろしてもらい、また展示の所に走っていく。俊兄が行ってくれて、ほっとしてると。
「織田……」
高瀬が、今のやり取りに、クスクス笑ってる。
「ごめん……」
「別にオレ、織田がいーなら、言ってもいいけど」
「――――……ありがと。でもまだ……」
心の準備がなー……。
そう言うと、高瀬は「オレはどっちでもいいから」と笑ってから。
「来海ちゃんも、あっち見に行く?」
高瀬が聞くと、めちゃくちゃ嬉しそうに頷く。
「うん!」
来海、まあ、いつも可愛いんだけど。
……なんか、女子の顔してる。気がするのは、気のせいか?
もうちょっといつも暴れまわってる気がするのに、なんか高瀬の腕の中で、ちょこんとおとなしくしてる。
来海を抱っこしたままの高瀬とともに、展示コーナーを進むと、俊兄と真宙を発見。
「高瀬くん、ごめんな。来海、分かるけど、そろそろ降りろよ?」
クスクス笑って、俊兄が言うと、来海はぷるぷる首を振ってる。
「来海ももうおっきくなってるんだから、高瀬お兄ちゃんが、疲れちゃうぞ?」
そう言うと、来海は、んーーー、と一生懸命考えてる顔をして。
よいしょと、降りる格好をした。
「来海、良い子だなー」
しゃがんで、よしよし撫でてやる。
「優しいなあ、来海」
笑顔で言ってやると、うん、と嬉しそうに笑って、来海はオレと手を繋いだ。そのまま、もう片手を、高瀬に差し出す。
高瀬は、くす、と笑って、その小さな手と、手を繋いだ。
来海を真ん中にして、オレと高瀬が挟んで。
その姿を見て、俊兄が可笑しそうに笑う。
「来海、こないだ圭に会いたいって言ってたんだよ。大好きだからな、お前のこと」
「でも今日は高瀬に抱っこしてたけどね」
ぷぷ、と笑ってそう言うと、俊兄は、「一目惚れかな、来海」とクスクス笑う。
「良いの、父親として。娘の一目惚れとか」
「んー……」
と言いながら、俊兄は高瀬を見て。
「まあ、見る目があるなーと、感心はする」
クックッと笑いながら言い、オレに視線を向けてくる。
「圭が旅行いったり、プラネタリウムに来たりする程仲良いってことは、いい奴なんだろ?」
「……うん」
ふ、と笑んで、頷く。
ほんとはもっと、うんうん頷きたいんだけど。
ちょっと高瀬の前だから、恥ずかしい。
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