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第1章

◇夏って*圭 2

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 高瀬のちょっと嬉しそうな笑顔に、なんだかふんわりと、嬉しくなる。


「――――……」

 高瀬って、オレと、居たいんだなあ……。

 オレも、どんな意味でも、高瀬と居たいから。

 オレ達って、そういえば前、なんか酔ってた時にも話したけど。
 両想い、だよな、多分。

 ――――……きっと、相性がいいんだろうなぁ。

 お互いの言う事とか。する事とか。
 きっと、お互い楽で、居心地よくて、嫌じゃないんだろうな……。


 ……まあ、オレの方はね、大好き過ぎだけど。


 ――――……ちゃんと、ずっと居るよ、高瀬。
 高瀬が、オレと居たいって、思ってくれてる限りは。

 彼女とか出来て、高瀬が、そんなに友達とばっかり会ってられないってなったらきっと離れるけど。でも高瀬は、その時はもうオレが居なくても辛くないだろうし。彼女を抱き締めて、彼女に側に居てもらうんだろうし。

 なんか最初に一目惚れした時とか。それからどんどん好きになってた時にオレ、「自分が彼女出来るまで」「自然と女の子を好きになるまで」は、高瀬の事を好きでいようとか言ってたけど。

 もう、このまま高瀬を諦めないままで他に目がいくとか、そんなのは、無理な気がしてる。

 最近はもう、「高瀬に彼女が出来るまで」好きでいる、に変わってきた気がする。だって、そういう事があって無理矢理でも諦めない限り、好きな気持ちが無くなる事が、無さそうで。

 もう、それでいいや、と、思ってきた。

 まあさ。高瀬はモテるから、すぐ彼女出来そうだし。
 そしたらオレ、諦めざるを得ない訳だし。

 それから、オレも、他の人好きになったり、すればいいや。



 ――――……うん。
 そうなるまでは。

 楽しく、高瀬と居させてもらお。
 


「織田、じゃがバター食べる?」
「うん、食べ……あ、あとにする。ご飯で食べよー」

「じゃ後で飲みながらたべようか、焼き鳥とかもあるし」
「うん!」

「射的やる?」
「やるー!」

「射的もいっぱいあるから、えらぼ」
「うんうん!」

 さっきからもう普通に、楽しそうにしてくれてる高瀬を見ながら。
 嬉しくなって、オレも、笑う。



 ――――……彼女が出来るの、もうちょっと、先、だといいな。
 ふ、と思ってしまうけど。


 今一緒に居られるこの時。めいっぱい楽しく過ごしたいから。
 ネガティブなのは封印して。

「あっちの店見てみよ」

 言いながら歩き出す高瀬の横に並ぶ。 

 少し人が増えてきて。
 並んでる高瀬とたまに密着する。


 嫌でも、ドキドキ、してしまう。



 ――――…… オレ、ほんと、高瀬の事、大好きだなあ……。
 

「かき氷、うま」
「オレ、久しぶりに食った」
「……オレは去年の祭り以来だから、1年ぶりかなあ」

 あん時は彼女とだったなあ。
 ――――……今年、こんな風に、男の事、好きだと思って、2人で来るとか。思いもしなかったっけ。


「高瀬、メロン、美味い?」
「食べる? いーよ、取って」

 ん、と差し出される。

 さく、とすくって、食べる。

「高瀬も、イチゴ食べる?」
「うん」

 高瀬が頷く。

 
 かき氷の店の隣に置いてあるベンチで二人並んで食べながら。


「……にしてもさぁ。やっぱり、高瀬に引き寄せられる女子が多すぎて、さすがにびっくりする……」
「織田目当ての子もいるよ、絶対」
「そう? ていうか、オレ、こんなに話しかけられた事ないよ」
「オレも今日は多いなー……。浴衣じゃないか? 男2人で来てると、目立つんだよきっと」
「――――……まあダントツ目立ってるのは高瀬だけどね」

 ほんと。
 ――――……何回話しかけられたか、ちょと分かんない位。
 
 2人で来てるんですか?的なセリフで、毎回話しかけられるけど、もう多分その話しかける前に2人で来てるってことは確認してるんだと思う。
 やんわり断ろうとしてると、なかなか引き下がってくれない。
 
 そしたら、高瀬がとんでもない断り方をしだした。


「オレ達、デート中だから、ごめんね」

 そう言うと、大抵の子達は、え。と笑顔が固まって。
 オレ達を見比べて。

 嘘かな、ほんとかな? きゃー、みたいなノリで、騒いでる間に、脱出。


「あの断り方はどうかと思う……」
「でも、すごくスムーズに離れられれるだろ?」

「でもさ。変な目で見られるじゃん」
「別にいーよ……もう会わないし」
「まあ……そうだけどさ」


 言われる度に、なんか。
 ……ちょっと嬉しくなっちゃうんだよね。
 デート、って。



 …………まあ、これは、スルー出来ずに喜んじゃう、オレがいけないんだけどさ。

 むー、と、かき氷のストローを少しかじる。



 

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