「Promise」-α×β-溺愛にかわるまでのお話です♡

悠里

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第三章

18.「会える」*真奈

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 少しの間、無言で凌馬さんにじっと見つめられる。

「俊輔が真奈ちゃんを側に置いてるって聞いて、集会で会った時さ」
「……はい」
 
「それまであいつの周りに居た誰とも違うし。最初見た時は不思議だったけど」
「……」
 
「……あいつが求めてたのがこんな感じなのかって思うと意外で笑えるけど……まあでも、分からなくはねえなとちょっと思ってきた」
「そう……ですか?」

「……友達の為に乗り込んできたり。結構ひでえことされてんのに俊輔をかばったり。少しお人よし過ぎるけど……気に入ってんのかもな。あとは、体の相性もいいとか? よっぽどじゃなきゃ、男にハマる奴じゃないと思うんだよね、あいつ。……まあそういうの全部ひっくるめて……気に入ってんだろうな」

 ……相性云々は答えにくすぎるので、ただ黙って見つめ返していると、凌馬さんは話をどんどん進めて、そう言って、ふっと笑った。

「……真奈ちゃん、あのさ」

 そう言って、いったん言葉を切って、凌馬さんはオレをまっすぐ見つめた。
 不意に変わったその雰囲気に、何となく息を止めて見つめ返した。
  
「憎んでないのはさっき聞いた」
「……はい」
 
「俊輔のこと少しでも良い……好きって、思うか?」
「……」
  
「全部好きな訳ねえよな。けど……今の時点で、少しだけでも、好きか?」
「……」
 
 普通に見たら、俊輔のしてる事なんて、全部全部ひどい事でしかないと、思う。
 何で、憎んでないのか、自分でも、不思議でならない。
 
 
 だけど……オレは、多分。
 ……多分。
 
 
「……全部が嫌いな訳じゃ……ない、です」
 
 
 凌馬さんをまっすぐに見つめ返したまま告げた言葉に。
 少しだけ黙っていた凌馬さんは、クスっと笑った。
 
「まあ、今は、十分かな」
 
 何でかとっても嬉しそうな表情に、言葉を返せずにいると。
 凌馬さんは、オレの毛布を掴んで、少し上に引き上げた。
 
 
「あいつ来ても、いきなりはここに連れてこねえし……安心して、少し眠ってな?」
「……」
 
「熱、高すぎるしな」
 
 眠りたい気分ではなかったけれど、熱のせいか、目を開けているのが辛い状況であるのは確かで。
 ……オレは、頷くと、そっと目を閉じた。
 
 
 どれくらい、そうしていたのか。 少し、ウトウトしかけていた時。
 
 
 下の方で、バン、という、大きな音が聞こえた。
 ほんの少し眠りながらも、いつ辿り着くのかとびくびくもしていたので、かなり敏感になっていたのかも。

 目を開けると、凌馬さんと、目があった。 
 
「来たかな?……つか……乱暴だな……」
 
 凌馬さんの苦笑いが混じったのんびりした口調に、何だか余計に自分は焦ってしまう。
 
 階段を何段か飛ばしてる感じで、駆けのぼってくる音。
 昇りきった足音がして、同時に。

 
「凌馬!」
 

 聞き違うこと無く、俊輔の声。
 

「!」

 びくん。体が震える。 
 
 う、わ。 今更だけど…… すっげ……怖い……。 
 
 思考や理屈よりも、今咄嗟に浮かぶのは、感情で。怖い、が先に立つ。

 ……あの夜以来見ていないから、余計に、あの夜の俊輔がよみがえる。
 
 思わず、身を竦ませてしまう。
 握り締めた手が震えるのを抑えるだけで精一杯だった。
  
 そんなオレを見ていた凌馬さんは、ぽん、とオレの頭を軽く叩いた。
 
「……だいじょぶ。あれは、心配して早く確認したいってだけだから。完全に落ち着かせてから、部屋入れっから。 しばらく待ってな」
 
 言うと、凌馬さんはゆっくり立ち上がり、部屋を出ていった。

 凌馬さんの言葉に、ほんの少しだけ、ほっとする。……怖すぎるけど。

 
 
 すぐそこに、俊輔が、居る。
 俊輔に、もう一度、会う。
 
 そう、思うと……鼓動が、早くなる。

  
 怖すぎる、と思う気持ちと。
 逃げ出してきた自分が、どうされるのかという、そんな恐怖が、ほとんどなんだけれど。


 あのままにならずに、もう一度会えるんだと……。
 ほんの少しだけ。

 全然自分でも、どうしてなのか、意味も分からないけれど。

 確かに、そう思う自分が居るのも、なんとなく、感じていた。





 


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