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第199話 後夜祭!
しおりを挟む颯と別れて校舎を出て、特設ステージの脇を通り過ぎて皆が居る方に向かって走る。その途中で、歩いてくる皆と合流した。
「送ってきた?」
誠に言われて、ん! と頷く。昴と健人が並んで歩いてきて、オレを見ると、なんだかニヤリと笑われる。
「花束渡すの、バレなかった?」
健人に言われて、昴が話したのか、と思いながら。
「花束の話とか、してないから、多分バレてないはず……?」
そう言うと、二人はふうん、と笑う。
「まあとにかく、ステージ前に行こうぜ。もうすぐバンドの演奏、始まるってさ」
「そうそ。見に行こうぜ」
オレと会って足を止めた皆がそう言って歩き出すので、オレも並んだ。
「なんかオレの方が緊張しちゃって、ちょっと困る……」
「慧が緊張することは無いでしょ」
誠が笑う。健人も「花束渡すだけなんだろ? それともなんかスピーチみたいなのすんの?」と聞いてくるけど。
「いや、オレはしないでしょ。おめでとうって言うだけだと思うよ」
「ふうん。そっか」
うんうん、と頷きながら、ステージのところに戻った時。
「慧、早く」
「え?」
不意に昴に呼ばれて、急いで近づくと。「とりあえずここ座れ」と、ステージ近くに座らされる。
「ん? なに?」
「まあまあ。近い方がいいだろ?」
「あ、うん」
オレと昴が座った近くに、皆もバラバラと座っていく。
特設ステージ上にはもう、実行委員の人達がいて、マイクを持って、色々準備をしている。音楽が流れてきて、ライトもついて、一気に良い雰囲気。
今、颯はまだ着替えたり準備中で。これからダンスとバンドだっけ。
――んードキドキがすごい……。
大分日が暮れてきて、見回すと、たくさんの明かりが、付近を照らしてる。昼間は屋台が並んでいて、たくさんの人が居た。熱気がすごかったけど――少し涼しくて、今は落ち着いてる。でも、やっぱり、いつ始まるのかと、そわそわしてる気がする。
椅子もあるけど、芝生にシートを敷いて座ってる人たちも居るし、良い感じの野外コンサート、みたいな雰囲気。
ふ、と視線を戻すと、皆と目が合って、「緊張してるんでしょ」と笑われる。うんうん、と頷いて、肩を竦めながら前を見た。
不意に、軽快な音楽が流れて、出てきたバンドが演奏を始めた。
結構本格的で、歌、うまーい、とノリノリ。
「――あれ、そういえば匠は?」
「ああ――ちょっと用事」
「用事?」
ふうん? と首を傾げながら頷く。一曲終ると、また別の演奏が始まって、真ん中に、ダンスの人達が出てきた。
「わー生演奏でダンスとか! カッコいいー」
めっちゃ拍手。
他の人達もすごく盛り上がってて、音楽に合わせて、楽しそうに手拍子。
ライトとかも豪華で、本格的。
ほんとのライブみたいに、ライト担当の人達が居て、色んな色でステージを照らす。
ひえー。颯、あそこに立つのか。あんなライトで照らされちゃうのか。
わー、真面目に緊張してきた。
しかもオレ、あそこで花束渡すのか。ちょっとやっぱり少しはドキドキかも。って、優勝するのは颯って、絶対思ってるオレの思考……。
なんか面白い気分になっていると、「おー」「たくみー!」と、後ろの皆から声がする。
ん? たくみ?
振り返って皆を見ると、皆はステージの方を向いてる。首を傾げながら、ステージに視線を戻す途中、昴が面白そうな顔でオレを見てるので、不思議に思ったのだけど――。
「――え」
新しいバンドが出てきてて、歌い始めたと思ったら。
「え、何。匠じゃん!! なんで??!」
「出ることになってたらしい、もともと。出たい人達で人気投票したら、通ったとか言ってた」
「何それ、知らないー」
「あぁ、オレらが匠に会う前だから。ネットで歌流して、人気投票したんだって」
昴と誠が教えてくれるけど。
「え、なんで皆知ってるの? 健人も知ってるの?」
「まあ。知ってる――昨日聞いたんだけどな」
「えっ何で教えてくれなかったのー!」
「なんかお前のことは、びっくりさせたいって言うから」
「まあバレたらしょうがないけど、敢えて言わないってことになって」
「えーなにそれー!!」
わーわー言ってる間も、匠の歌は流れてて。
「まあ、聞いてやんな」
昴に言われて、まあ、そりゃ聞くけどさ、とステージを見上げる。
なんか目が合った気が。すると、匠は、なんか、めちゃくちゃ苦笑した。
……なんなんだもう、びっくりすぎだっつの!!
ただでさえずっとドキドキしてるのにー!
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