【ひみつの巣作り】本編完結・番外編中💖🌟奨励賞

悠里

文字の大きさ
上 下
134 / 222

第134話 愛されてきました?

しおりを挟む




 翌朝。学校到着。

「じゃあね、颯。また帰り」
「ああ。じゃあな」

 授業の教室がある建物が違うので、そう言って手を振って別れて、今日は少し見送った。
 かっこいいな。後ろ姿だけで。……歩き方、綺麗。モデルか? みたいな。

 なんとなく微笑んでしまいながら、颯から視線を逸らして、教室のある建物に入って、階段を上る。

 夜はほんとにめちゃくちゃ何度も好きって言って、颯と仲良くして、報告も無事済ませた。……うん。なんか、オレ達、とっても仲良しで過ごしているような気がする。まったくタイプは違うと思うんだけど、なんとなく相性はいい気がするんだよね。

 まあ結局、誰が推薦したとかは、突き止めなくていいよねってことになった。颯は、別に自分からは行動は起こさないって。推薦は別にしちゃいけないことじゃないし、そんな大したことじゃないかなと。まあ、辞退できることだし。オレが辞退するって言えば終わることだから、そういう考え方で行くみたい。

 ……そういう風に考えていると。ふっと思った。颯には言ってないけど。
 もしかして美樹ちゃんが推薦したのなら。……張り合わせたかったのかなーとか。ちょっと波風立てたかったのかなあって、なんとなくちらっと、よぎった。違うかもしれないから、誰にも言わないけど。

 颯のこと、大好きだったのに、振られちゃって、そのすぐ後に、αだったオレと結婚なんかしちゃってどうしようもなくなっちゃって。……それで、そうしたかったのかな。とか。辞退されるとかも、分かってたと思うけど、なんか、それ位しかできなかったんだとしたら、なんか……。

 うう。ちょっと胸が痛い。
 ……颯のことを好きな気持ちはすごく分かるし。

 ずっと、昔から、颯の側に居て、ずっと好きだったのに、とか。うう、切ないな。……あれ? なんでもっと早く付き合わなかったんだろう。ずっと近くに居たなら、颯、申し込まれて嫌じゃなかったら付き合ってたっぽいし。高校の時とか、どうして、ただ側に居たんだろ。
 大学に入ってやっと付き合ったみたいな感じだったのかな。
 まあでも、過去のことだし、颯にも聞かないけど。

 もちろん、全部ただの想像で。美樹ちゃんがオレのことをエントリーしてない可能性はあるんだけど。
 ……つか、オレ、心の中と颯の前で、美樹ちゃんとか呼んでるけど、話したのはこないだのぶつかった時だけ。あれ話したって言わないしな。
 美樹ちゃんとα……孝紀だっけ。あの二人が颯と話してないっていうのがちょっと気になるけど、まあ颯は動かないっていうから、もしそうだったとしても、気まずいのとかは、時間が解決するのかな。

 そんな風に思いながら教室に入ると、昴がオレに気づいた。

「あ、おはよー」

 皆がいるとこに近づくと。
 昴と誠と健人が、またオレを見上げて苦笑する。

「え。何。また匂う??」

 周りにいる他の皆には聞こえないように、三人に聞くと。

「まあまあ、さぞ熱い夜だったんだろうなーと」
「そうそう、そんな感じ」
「……お前ら、ほんと、いい加減にしろよな」

 健人と誠が笑いながら。最後呆れたように昴の一言。

「え、何? わかんないけど」

 さぞ熱い夜ってなんだよ、恥ずかしいから、マジやめて。と思ってると。

「フェロモンはつけてないよ、今日。颯は」

 昴の言葉にそうだよねと頷くと、健人が「でも、お前が振りまいてる感がある」と苦笑。

「え、オレ、振りまいてる?? ヒートってこと?」
「ヒートじゃないのは分かるだろ。そうじゃなくて……」

 なんて言うんだろうな、と健人が誠を見ると。

「んー、なんか、愛されてきました、みたいな顔してる」
「――――……っ」

 もう絶対この三人はオレをからかって遊んでる。
 と思うほど。真っ赤になったオレを見て、声を殺して笑ってる三人を、もうどうしてくれようかと思う。

 ……どうもできないのだけど。くそー。
 

 
 

(2024/2/14)
しおりを挟む
感想 421

あなたにおすすめの小説

偽物の僕は本物にはなれない。

15
BL
「僕は君を好きだけど、君は僕じゃない人が好きなんだね」 ネガティブ主人公。最後は分岐ルート有りのハピエン。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

【本編完結済】巣作り出来ないΩくん

こうらい ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。 悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。 心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…

【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

悠里
BL
高3の時、義理の弟に告白された。 拒否して、1人暮らしで逃げたのに。2年後、弟が現れて言ったのは「あれは勘違いだった。兄弟としてやり直したい」というセリフ。 逃げたのは、嫌いだったからじゃない。ただどうしても受け入れられなかっただけ。  兄弟に戻るために一緒に暮らし始めたのに。どんどん、想いが溢れていく。

エリートアルファの旦那様は孤独なオメガを手放さない

小鳥遊ゆう
BL
両親を亡くした楓を施設から救ってくれたのは大企業の御曹司・桔梗だった。 出会った時からいつまでも優しい桔梗の事を好きになってしまった楓だが報われない恋だと諦めている。 「せめて僕がαだったら……Ωだったら……。もう少しあなたに近づけたでしょうか」 「使用人としてでいいからここに居たい……」 楓の十八の誕生日の夜、前から体調の悪かった楓の部屋を桔梗が訪れるとそこには発情(ヒート)を起こした楓の姿が。 「やはり君は、私の運命だ」そう呟く桔梗。 スパダリ御曹司αの桔梗×βからΩに変わってしまった天涯孤独の楓が紡ぐ身分差恋愛です。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

処理中です...