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第135話 慣れたもん?
しおりを挟むからかわれるのに抵抗しながら、午前中の授業をクリアした。
昼が終わって三限の直前。もう教室の座席で教授が来るのを待っている時に、昴がスマホを見て、あ、とオレの顔を見た。
「慧、あいつ……匠から」
「ん、なんて?」
「オレとお前、今日何限迄ですか?っだってさ」
「ふうん……?」
「四限迄って入れとく」
「うん」
何だろう。何か話したいことがあるのかな。コンテスト辞退できたとか、そんな感じ?
「匠も四限までだから、慧とオレとで会って話しませんか、だって」
帰り颯と待ち合わせたのにな。と一瞬浮かぶが、でも、仕方ないか。
「ん、昴は? 行ける?」
「……行けちまう」
「なんだよそれ」
あは、と笑いながら言うと、やれやれと息をつきながら、昴は返事を入れてる。しょうがないからオレも颯に、今日昴と用事があるから先に帰っててくれるようにメッセージを送った。すぐに返事が来て、駅まで昴と一緒か聞かれたから、そうだよと入れると、すぐにOKが届いて、そこで授業が始まった。
なんとなくぼんやり、考える。わざわざ話したいっていうのに、辞退しました報告っていうのはないか。そんなの辞退してきましたよーて送ってくれば済むもんな。わざわざ会って話したい、かぁ。何だろ? 板書を取りながら、ぼんやり考えるけど、結局全然分からないから考えるのをやめて、なんだかうずうずしながらの二コマの授業を過ごした。
◇ ◇ ◇ ◇
待ち合わせた場所は最近よく行く気がする十号館。ここなら、どっかしら空いてるだろってことで、そこの前で待ち合わせたらしい。オレと昴が先について見回した時、匠が現れた。誰かと一緒。……あ、こないだ、匠のエントリーした時に居た奴だな、と思ってると、近づいてきた二人がこんにちはと笑った。
「すみません。呼び出して」
「いいよ。どっか入ろうぜ」
昴が言って、十号館の建物の中に向かって歩き出して、一階の廊下を進む。近場のドアを開けて空いているのを確認して教室に入り、四人で適当に腰かけた。
「あのですね。こいつ、オレの友達で、総司っていうんですけど」
匠が言うと、総司は視線を合わせて微笑む。
「オレのエントリーしてくれたんですけど、そん時……」
そこまで言って、匠は総司を見る。総司は続けて話し出した。
「オレらが行った時、前で他薦でエントリーしてる人達が居て、ですね」
「うん」
「髪の長い綺麗な女の子と、背の高い男が、これでエントリー終わりです、って言われてました。あとはご本人に確認してから、了承が得られたら正式エントリーになりますって、そんなようなことを言われてて」
そこまで聞いて、オレは、昴と目を合わせた。
「それ、間違いない?」
「間違いないです」
「スマホで送ってもよかったんですけど、見た本人に聞きたいことあるかなっと思って、総司も連れてきました」
匠がそう言って、オレを見る。
「で、昼にオレ、総司と一緒に辞退してきたんですけど、昨日言ってくれた参加者って、登録順に教えてくれたってことも確認してきたので、もう間違いなく、オレの前に登録されてた先輩を推薦したのは、あの人達ですね」
「……そっか。分かった。ありがとね」
総司に目を向けると、「もうオレいいですか?」と聞かれる。「うん、ありがと」と言うと、匠と少し話して、先に部屋を出て行った。
「んー……」
オレは肘をついて、ちょっと考える。
「ありがとね、匠。さっきの子、エントリーしてたのが颯の元カノ、とかは知ってるの?」
「知らないですよ。言ってないです。エントリーした時、前に誰かいたかって聞いたんで」
「あぁ、ありがと……」
おぉ、なんか、ちゃんとしてるな、匠。ちょっと見直した。
「……んー。で、それを聞いたオレは、どうしたら……と思うのだけど」
うーんうーんうーん。
しばらく考えてから。
「颯と話してさ。エントリーは自由だからって話になったんだ。悪いことに推薦してる訳じゃないしって。別にそれを、オレとか颯に断らなきゃいけないことでもないし……だから、特にすることもないかな……。颯には一応言っておくけど、でも昨日の段階で、半々くらいの可能性は考えた上で、そう言ってたはずだから……」
「まあ確かに。別に他薦は悪いことではないよな」
「うん。出るのが、イケメンコンテスト、だしね。オレ高校ん時はやるたび出てたし」
「出てたな。慣れたもんだよな?」
クッと笑って、昴はオレを見つめる。
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