エロゲーのモブが自我を持ちました

２９、ゲーム……始まってます、よね？

主人公である森宮くんが転校してきてクラスは一気に華やかになりました。
天使のように可愛らしくそれでいてとても明るく、誰にでも分け隔てなく接する様子はとても好感が持てます。
流石主人公ですね。
既にクラスの半数近くが淡い恋心を抱いているのではないかと思われます。何故なら森宮くんに送る視線が熱っぽいのです。

ですが、少し奇妙な事も起こっています。


森宮くんと攻略対象者の方々が全く絡んでいません。
担任である桐生先生や、クラスメイトで幼馴染みの春日井くんとはそれなりに交流があるようですが、生徒会長さんや不破先輩、生駒先輩とは一度きりしかお会いしていないようです。

ゲームでは、転校初日に全員と一度お会いしてから夏休みに入るまでの間に攻略したい人との好感度を上げていきます。

桐生先生であれば職員室へ。
春日井くんなら放課後の教室。
不破先輩なら空き教室。
生駒先輩ならグラウンド。
生徒会長さんなら生徒会室。

それぞれの場所へ赴き、会話をして好感度を上げていくと、夏休み中に２人で出掛けるイベントが発生するのです。

冬休み前のクリスマスパーティーまでに一定の好感度に達すると、パーティーでその相手とダンスを踊ることになります。
年明けからはその相手のルートになり、各所でエロエロなイベントをこなして卒業式で告白、ゴールインとなるのです。

そう、何を隠そうこのゲーム、とても期間の短いストーリーになっているのです。

そんな短い間で好感度を上げなければならないのですが……森宮くんが攻略対象者の方々と交流をする様子が全く見られないのです。
勿論、ノーマルエンド、友情エンド、ハーレムエンド、バッドエンド等の沢山の種類のエンドがあるはずですが、そのどれもに好感度が関わってきます。
全く交流せず、好感度が皆無の場合のエンドは存在しないはず…。


……どうなっているんでしょう？
ゲーム、始まってますよね？


もしかして……俺が自我を持ってしまった事に何か関係があるんでしょうか…？

これがゲームじゃなければ好感度なんて関係ないですし、自由に学園生活を謳歌すればいいんですが。

…………………ゲームじゃなければ？

ゲームじゃ、ない？


……いやいや、まさか。
そもそも確かめる手段もないですし。

とにかく、このまま様子を見守りましょう。
もし何かあればモブキャラに徹すればいいんです。

そうしましょう。