1 / 17
第01話 こちらにはリア充は一切入っておりません
しおりを挟む「私と付き合ってください!」
「はっ、はい!」
告白した側でもないのに緊張のあまり声が裏返り、思わず頭を下げ手を伸ばしてしまう。
普段はボールが跳ね、掛け声や靴のグリップ音が響く体育館も、今日が卒業式と言うこともあって静まり返っている。
そんな体育館裏で僕に告白をしてきたのは、同級生檜山冬華だった。
はじまりは空っぽのハズの机に入った1枚の手紙だった。
式のあと一人で体育館裏に来て欲しいと言う内容に、卒業式の熱気に当てられたままホイホイと出向いた。
中学の三年間、いや小学生の頃から檜山さんのことが好きだった。
目をみはるほどの容姿って訳じゃないけど人当たりが良く、愛嬌があって陰キャな僕にも優しい気になるクラスメイト。
オタクに優しいギャルとか〇〇さん系のヒロインのような女子。
経験が豊富ではない僕は、そんな彼女の向日葵のような笑顔に撃ち抜かれていた。
だから中学で彼氏が出来たらしい、と聞かされた時には涙で枕を濡らし、風の噂で卒業済みらしいと聞けば血涙も流した。
この三年で約十人との交際、ビッチだの尻軽だのと噂が流れたが僕はそれでも彼女に惹かれていた……のに……
…………いつまで経っても取られることのない僕の手。
痺れを切らして顔を上げると、申し訳なさそうに視線を逸らしている檜山さんがそこに居た。
体育館裏と言ってもウチの中学校は広くない。
僕が来たのと反対側からガサガサと音を立て出て来た生徒達は、ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべていた。
「テッテレー、ドッキリ大成功~ぶふッ! あははははははははっ!」
まるでテレビのドッキリ企画のような効果音と共に現れた女子は、途中で堪え切れなかったように爆笑し、周囲の男女も釣られたように笑い始める。
(嘘告白ってことかよ!)
キュっと胸が締め付けられ、全身からぶわっと汗が噴き出す。
怒りに震えるがそれを表にだすほど、僕は子供じゃない。
この場を穏便に治めるには「なーんだ嘘告かよ(笑)」と道化を演じるのがベターなのだが、言葉が口から出てこない。
「…………」
『なんだドッキリかー』『だよなー、檜山さんが僕なんかに告くる訳ないもんね』など、幾つか道化としてのセリフを思いつきはしたが、数年物の恋心を弄ばれたのに作り笑いなんてできるわけない。
「冬華がキミに告白するわけないじゃん「「ねー」」」
この女子達は僕をとことん馬鹿にしたいみたいだ。
この時期特有の容赦ない集団悪意に、僕は拳を固く握り込む。
その後ろにいるチョイ悪男子達の圧もあって暴力的にすらなれない。
情けなさに思わず涙が出そうになる。
握り込んだ拳が白くなり、爪が刺さり血が滲んでじんじんする。
浮かれてた。この熱病のような空気に……僕がこんな可愛い子に好かれる訳なんてないんだ。
(なんだよこれ……結局、僕の妄想だった。
もう誰も何も信じたくはない……)
「勇気くん……あのっ! 本当に……」
檜山さんは僕の名前を呼ぶ……けどもう心が動かない。
たぶんその先に続くであろう謝罪の言葉も聞きたくもない。
そんなものに一円の価値も見いだせない。
あんなにあった檜山さんへの想いすら、何だかとても薄っぺらで馬鹿馬鹿しい気がしてきた。
残されているのはやりようのない怒りと羞恥と悲しみだけ。
この世のどん底にでもいる気分だった。
「――っ!」
きびすを返し僕は走りだした。いたたまれなくてにげだした。
「勇気くん! まって……」
記念撮影などで残っている生徒や保護者の視線が痛い。
彼らにはこんな出来事、青春の1ページのその背景でしかない。
見慣れない制服の綺麗な子が居る、よけなきゃそう思った時だった。
ふわっと広げたりょうの手でいきなり、彼女は僕の腕を摑んだ。
「え?」
「キミ、岩野勇気くんでしょ?」
「どうして僕の名前を?」
「私は竜蛇母春妃。
キミの姉になるものよ、よろしくね」
~姉を名乗る不審者が現れた~
先ほどまでの荒々しくも悲しい感情すら忘れ、一歩離れて思わずまじまじとこの姉を名乗る『不審者』を観察した。
それこそ頭から爪先までじっくりと、だ。
光の加減によっては金色にすら見える亜麻色の長髪は、つややかに腰まで伸びている。
生地が厚く体型が分かりづらいハズの冬季制服でも判る凹凸、垣間みえる素肌は白く、躍動感あるスラリとした脚へとつづく。
実物は見たことないけどまるでモデルか芸能人みたいだ。
「姉って……僕には『いとこ』も『近所のお姉さん』も『幼馴染』も居ないんですよ?」
そう指を立てて一つづつ数える僕の言葉に、彼女はニヤニヤとした笑みを浮かべ、いきなり近づいてきて僕の手を取るとその小さな顔の近くで示指を立てこう言った。
「ちっちっち『義姉』と言う選択肢があるでしょ?」
「あっ……」
確かに一つ失念していた。
今日が父の再婚相手との初顔合わせの日であることを。
「で、でも! 父から見せられた兄妹になる娘の写真はもっと幼かった気が……」
確かに以前見せて貰った写真の子の年は小学生くらいで、綺麗な子だなって思った憶えもある。
写真の子の面影はあるが目の前に立ってる娘は同年代。
娘というより嬢だし、なんなら写真の子の母親って言われたほうが納得できる。
「あーそれね。私、写真があまり好きじゃなくて少し前の写真しかないんだ。で、でも! 今年からバンバン撮ってくつもりだから!!」
と、やけに口数が多くなる。
僕には彼女が何かを隠していたいようにも見える……。
(怪しい……)
僕は、右京さんやポワロのような名探偵ではない。
怪しんだところで何の証拠も掴むことはできないのだ。
僕は本題を切り出すことにした。
「そうなんだ。それで、どうしてここに?」
「そうだった! 実は予約しているレストランの時間が間違っていたみたいで……もう時間がないの!」
そう言って竜蛇母さんは、校舎の時計を指さした。
時刻はおよそ十二時。
竜蛇母さんのお母さんの都合で、顔合わせはディナーではなく遅めの昼食にするハズだったのだが、話を聞いてみるとどうやらレストラン側の都合で早めに来て欲しいとのことだった。
「ヤバいじゃん!」
「そうなのよ! お義父さんが車を校門の前に止めてるから早く来て……」
そう言って彼女は僕の腕を引いた。
………
……
…
「なあアレ岩野じゃないか?」
男子が指さした先に居たのは、確かに岩野くんでした。
背が高く大きな体は凄く目立つ、だから最近の私はよく彼を見ていた。だけど隣にいる金髪の女の子を私は見覚えがありませんでした。
「金髪でスタイル抜群オマケに美女って……あいつ壺か絵でも買うのか?」
「確かにww」
「でもなんか見覚えあるんだよね……」
「あっ! 清中の女神さまだよ」
「知ってる! 芸能事務所にスカウトされたらしいよね」
「はー、顔だけでご飯が食べられるって漫画の主人公が言っていたけど、納得できる人初めて見たわ」
『清中の女神』私もその言葉に聞き覚えがありました。
他校との大会であまりの美しさで男子の間で有名になったと、中浜さんが話しているのを訊いたことを思い出しました。
(でも、どうして岩野くんと『清中の女神』さんが……)
私は胸がモヤっとするのでした。
5
あなたにおすすめの小説
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
洗脳機械で理想のヒロインを作ったら、俺の人生が変わりすぎた
里奈使徒
キャラ文芸
白石翔太は、いじめから逃れるため禁断の選択をした。
財閥令嬢に自作小説のヒロインの記憶を移植し、自分への愛情を植え付けたのだ。
計画は完璧に成功し、絶世の美女は彼を慕うようになる。
しかし、彼女の愛情が深くなるほど、翔太の罪悪感も膨らんでいく。
これは愛なのか、それとも支配なのか?
偽りの記憶から生まれた感情に真実はあるのか?
マッチポンプ(自作自演)の愛に苦悩する少年の、複雑な心理を描く現代ファンタジー。
「愛されたい」という願いが引き起こした、予想外の結末とは——
陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件
暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる