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第7話――変ッ身っ!《HENNSHIN!》

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「じゃぁ先ずは約束通り、ワンオンワンをやりましょうか」


 俺達はゲームを起動し、アリーナモードを一人《タイマン》モードに一定して、オフラインマッチ設定にしてPCをケーブルで接続する。

 相手が使うのはどのシーズン(大幅アップデートの区間の事)でも、最強角のインファイトキャラクターのファントムであり、「やはり使ってくるか……」と言ったと言う確信めいた感想が思わず口をつく。

 ここで俺が選ぶのはもちろんルーカスト。弾丸の当《ヒット》たり判定《ボックス》は全キャラ野中でも、平均よりやや小さい程度であるが、全キャラの中で一番安定して足が速く、そして数少ない味方を長距離や縦方向で動かすことが出来る機動力を持っている。能力を持ったキャラクターでもある。

 まぁ簡単に言ってしまえばソロ向きの能力だ。

 先ずは武器を2丁選び開始位置から3,2,1のスリーカウントで開始される。

 現代の工業団地を思わせるマップは、高低差がかなりあるものの、不幸にも射線が通っている場所は少なく、俺が愛用する武器種のスナイパーライフルは、残念ながら向いているとは言えない。
 しかし現実世界で言うところの、ダムダム弾のような弾丸を発射するスナイパーライフルが存在する。今回はそれを使う事にしよう……。








――と、開始の合図が差し迫る。俺は事前に建てたプランと移動経路を脳内で、再確認してその時を待つ……





Let's go ahead


 機械的に加工された女性の声を合図に、能力の中で一番強いアビリティ……簡単に言えば必殺技に相当する技、アルティメットを発動する事で、ルーカスは飛翔を実現する。

 今回は制限時間いっぱい発動して、出来るだけ高所を取るために、持ちうる限りのテクニックを惜しむことなく披露していく。

 相手も同じことを考えているのだろう。カツカツという金属製の床を靴が踏みつける足音が、今俺がいる倉庫の中から聞こえる。


邪魔するつもりか!

確かこの倉庫は……


俺はルーカスの操作を辞めて、即座に停止させる。


刹那――――。


 バビューゥン。とヤケにサン〇イズ作品風のSEと共に、ビーム弾が足元の倉庫床に穴を穿つ。見る見るとルーカストの体力ゲージが下がっていく……アーマーの耐久値が、半分ほどに減少したところで射撃が終わる。

 あと数秒判断が遅ければ、2発目の射撃で大ダメージを食らっていた。それで勝負が決まるそんな反則武器という訳ではないが、大きく被弾してしまえばアドヴァンテージを与えてしまう事になっていただろう……


「あぶねぇ……恐らく俺のルーカストの飛行中のジェット音と、穴が無数に空いている倉庫の屋根に影がかかった場所、それと俺がどう動くのかを完璧に理解している読みの能力末恐ろしい……」


俺は思わず素直な感想を口をする。


「耳がいいので……」


【U_MAn】は別段誇るような様子はなく、淡々とただ事実を述べているように聞こえる。


どうやらボイスチャット設定を、オンにしてしまったままのようだ。


あぶねぇ。作戦は漏れていないようだな……


「じゃあ今度はこっちから行きますよ」


 そう言うと彼女は、両手に持つアサルトライフルで、こちらを狙い撃ってきた。
 もちろん飛行中なので精密な回避は不可能だ。
 ルーカストは地面に向かって急下降しながら、出来得る限りの操作をし、【U_MAn】の猛攻撃を掻い潜る。


「なんですかその動きは? まるで亀ですね!」


 【U_MAn】は嘲るように笑い声をあげる。
 彼女の戦闘スタイルは基本的に接近戦――インファイトを仕掛ける事が多いが、時々接近してくる事が有る。

 だからと言って、こちらから近付こうにも、アサルトライフルの弾幕に対して無傷という訳にもいかず、ジリジリとルーカストの体力が削られていく……。


「俺が虫の人……と呼ばれるのはコレが由来なんだよ」


 俺はルーカストに空中で射撃体勢を取らせることで、的の大きさげ変化しダメージ値の低い四肢を主に被弾する。
 ロボゲーなどで見られるダメージコントロールと言う奴だ。


「ファイア!」


 俺がボタンをクリックした瞬間。
 一発の弾丸がファントム目掛けて落下していく……このゲームはリアル思考のゲームではないが、弾速は下から上に撃つよりも当然上から下に撃った方が早い。

 そしてあまり知られていないバグだが、射撃ボタンを押した瞬間に格闘ボタンを押すと弾丸に拳がヒットして、その分弾の速度と威力が向上する。

 弾丸一発平均約23ダメージの弾丸が3発(頭<胴体<四肢の順でダメージが大きい)。
 格闘ダメージ30が一発ずつの弾に乗ることで、胴体でも159ダメージで最大HP200のうち、三分の二以上を一瞬で削ることが出来るが、タイミングがシビアであり成功確率は極めて低く、海外のストリーマーが発見した技だが再現性の低さゆえか、本人の配信を見に行くまでは俺も信じられなかったほどの現象で、海外の掲示板を見ていた時にアレって何だったんだろうな? と話されているのを見て死に物狂いで練習した技なのだ。

 元の世界に似たゲームがあったお陰でそう言った技を習得する時間があった。

この技は、知らなきゃ対処できないぞ。


「嘘どうして!」

「ワン、ツー、スリー」


 そして弾丸は見事胴体判定の肩に全弾ヒットして、アーマーが割れ体力も半分以上削れているのが音によって分かる。ファントムは格闘攻撃の当たり判定によって、有らぬ方向へ3度大きく吹き飛ぶ。


「えっ!?」

流石に驚いたのか、【U_MAn】の声が聞こえる。

 格闘攻撃の当たり判定によって、三度ノックバックを受け【U_MAn】が混乱している間にルーカストは地面に着地する。
 俺はルーカストを操作して、【U_MAn】が操るファントムに駆け寄って、格闘ボタンとしゃがみボタンを同時に押して発動する蹴りで、勝負を決める。


スリーカウントと蹴りなら、やはりこのセリフだろう。


「RiderKick」


 ルーカストはスライディングをしながら間合いをつめ、一度後ろを向いてから放たれる回し蹴りで勝負がヒットする。
 まるで、予定調和の如くルーカストが、自ら技を当てに行くのではなく。相手からやられに来ているかのようなそんなワンシーンだった。

 その直後ファンファーレが鳴り響き、勝負の決着がついたことが告知される。
 このゲームの蹴りはダメージが50と、パンチ格闘よりも大きく設定されているからだ。


『Game set! YOU WIN』


 ルーカストがはしゃぐアニメーションが表示される。
俺は人差し指を立てて天を指さす。

 前の世界の経験と、ゲームに対する貪欲なまでの熱意が産んだ勝利だった。
 今日くらいネタに走ってもいいだろう……


「天の道を行き全てを司る……」
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