鬼畜な悪党の下っ端に転生したのだが、頑張って生き抜きたい

花村 ネズリ

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第6章 選択編

2人だけで‥

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「‥ッ‥」

ラシルが目をぱちくりさせて俺を見つめる。そんな表情がなんだがおかしくて、俺はクスリと微笑んだ。

恋は盲目だ。
だから恋愛絡みで殺人事件なんてよく起きる。
今の俺はその対象だろう。
ラシルの背後。いつからなのか‥。
監視でもつけてんのか‥それか、迎えに来てくれたのか‥なんて。
あーあ、こんな事考えてるなんて知られたら、絶対殺されるじゃん。

まあ、でも


「‥‥逃げよっか」

「にげっ、‥は?」

俺はラシルの顔から手を離して、少し距離を取る。


「俺と逃げよう‥ラシル‥。」


あの日確かに、この目の前の男を‥
ラシルを‥命をかけて幸せにするって自分自身に誓ったんだ。
お前に怒鳴られても軽蔑されても‥殺されちまったって文句は言えないけどさ、仕方ないっしょ。
誰かを犠牲にしても、約束を破ってでも、俺はこのラシルという男を選んでしまったんだから。


「なに、を」

ごめんな

「誰も俺たちの事を知らない、遠い、遠いところで‥昔みたいに暮らそう。」

ごめんなキイチ


「ッ、本気で、言ってるのか‥?」

「本気だよ‥冗談でこんな事言わねえよ‥はは、あ~そうだな~、貯金が貯まるまでは共働きな?ラシルは家事ができねえだろうから俺が担当するけど、休日の日はちゃんと手伝えよ?あと、2人が休みの日は絶対に一緒に過ごす事。」


おじいちゃんになっても一緒にいるって言ってたのさ‥守れないや。

「俺は知ってのとおり男だから子どもは産めない。もしお前が子どもを欲しがるなら教会から養子をもらうのだって良いと思ってる。2人で育てれば、どんなわんぱくでも可愛い天使になるさ。」

「ッ、く、は、は‥てめえが育てたら‥馬鹿が1人増えそうだなぁ‥」

ラシルの険しかった顔が、だんだんと穏やかになっていく。お前が笑ったの‥久々に見た気がするよ‥。毎日、毎日そんな風にお前が笑ってくれるそんな幸せな世界‥つくりてえな‥。

「ふはッ、お前失礼だぞこらっ!‥それと生活が落ち着いたら、色んなところへ旅行に行ってみたい。有名な観光地。綺麗な景色、不思議な生き物とか、絶品グルメとか!危険なところは遠慮するけど‥お前と‥笑って泣いて驚いて‥色んなことを共有して生きていきたい。」

「あぁ‥そうだな。なぁ‥サル‥」


「‥なんだよラシル?」


赤く腫れた目元。いつの間にか涙が止まってる。優しげに細められた瞳が俺を見つめていて、胸が熱くなった。今、この男は俺だけのもの。この瞬間が愛おしい。ずっと、ずっとこのままがいい。

このまま、‥2人だけで‥

ぶわりと、足元に広がる真っ暗な闇。
ラシルの背後だ。顔は見えない。いや、今は見ることができない‥。

頭の中で、誰かの悲痛な声が聞こえた気がした。

「ッ、」

あっさりと許してくれるなんて思ってない。上手くいかないのは分かってる。俺は嘘つきだし、人を裏切るし、沢山傷つけたから。

なぁ、ラシル。
俺はな、魔族だ。正確にいうと魔族になった。魔族は魔王の魔力でしか生きていけない。逃げたとしても、たぶん、3日ももたない。さっきから魔族の本能ってやつが危険信号のようにそう告げているからきっとそうなんだろう。でもそれでもいいんだ。それでもいいから、俺はお前と、ラシルと一緒にいたいって、

そう思ったんだ。だから、許してくれ。キイチーー。


俺はラシルに微笑む。
ラシルの手がそっと俺の頬に触れた。



「なぁ‥どうして‥てめぇは‥








そんな、後悔しそうって面してんだよクソが」

「、え?」
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