ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

文字の大きさ
894 / 911
38 記憶 side 陸

4

しおりを挟む
家に帰ってくんなと追い出されてた親父が、ここに俺達を連れてこようと思いついて、そのまんまの勢いで用意したのか、誰かにさせたのか。
やたらと冷蔵庫や棚に食材が詰め込まれてるし、昨日貰った野菜や卵もほぼほぼ残ってんな。
こんだけありゃ、今日も明日もここから出る必要は無ぇか。

ってことは、渡の覚悟は確認出来てんだ。
たっぷり可愛がっても問題ねぇってことだよな。

未だ起きてくる気配がねぇ渡を、どうしてやろうかと考えただけで唾液が口に広がり、牙が軋む。
発情フェロモンは遮断されてんのに、完全に気持ちが盛ってる。
握り飯と味噌汁大量に作って、そっち重視にしてぇのは山々だが落ち着かねぇと。

昨夜は渡に御馳走になってんだ。
俺も美味いもんを食わせたい。

気持ちを切り替え、ライスストッカーから精米五合をボウルに移して研ぐ。
初めてここのキッチンを確認したとき、流石親父、抜かりがねぇわと感心した。
台所の家電製品が、実家で使ってんのと同じバカ高いので揃えられてたんだ。
一人暮らし始めたときは、俺も海や空も安物家電だったのに破格の違い。

どうしても俺達は、好きな相手に食べさせるもんに関しちゃこだわりが強くなる。
けど、短期しか居ねぇここにそこまで金をかけてくれるとは思ってなかった。
こっちは親心に感動して、バーベキューの合間に直接礼を言ったんだが。
親父には「気にすんな」とあっさり流され、その興味が息子の番問題よか千里さんに移ってんのが丸わかりの態度を取られた。

まぁ、親父らしいっちゃ、親父らしいがな。

洗った米をザルに開けて置いとく時間は無さそうだし、あとは炊飯器に任せるか。
メニューは、何にすっかな。
親父特製の粉末出汁が一瓶あったし、あれで味噌汁とだし巻き、あとは秋刀魚に大根おろしをつけて、取り置きの煮物くらい作っとくか?
チルドに入ってる肉もなんとかしねぇとなぁ。
そういや、カフェテリアで唐揚げ定食頼んでんの見かけたっけ。
あ、餃子とか春巻きも頬張ってた気がすんな。
小麦粉も材料も揃ってるし、皮から作れるな。
あ"ー、何を美味そうに喰ってたっけな。
水泳教えた帰りやらランチタイムのカフェテリアで、近いとこで食べてたのに細かいとこまで思い出せねぇ。

まぁ、頼子さんが好き嫌いは無いようにバッチリ躾けたって言ってたからそこは感謝だな。
自分が美味いと感じたもんを共有出来んのはかなり嬉しい。
俺が好きな料理となると、肉メインになんだが。

いや、一回冷静になれ、俺。

あれもこれもと冷蔵庫から取り出し、並べた目の前の食材が明らかに多すぎる。
二食は余裕でいけんじゃねぇか?
とりあえず、朝飯分と小腹が空いたときに摘めそうなもんを軽く作って・・・いや、気分が悪くなったときのことも考えたら、粥とかも作っとくか?

渡が食うもんだと思えば、あれもこれもと思いついてまとまりが無くなる。
朝飯の後のことをつい考え、その後食べれるもんのことまで広がっちまう。
絞ろうとしたが、どれを作っても美味そうに食ってくれんじゃねぇかと言う期待が勝って無理、だな。

ま、良いか。
料理を一度に作っときゃ、その分あっちに時間が回せんだし。
これ以上考えるだけ無駄だなと諦め、料理に取り掛かった。
しおりを挟む
感想 962

あなたにおすすめの小説

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

長年の恋に終止符を

mahiro
BL
あの人が大の女好きであることは有名です。 そんな人に恋をしてしまった私は何と哀れなことでしょうか。 男性など眼中になく、女性がいればすぐにでも口説く。 それがあの人のモットーというやつでしょう。 どれだけあの人を思っても、無駄だと分かっていながらなかなか終止符を打てない私についにチャンスがやってきました。 これで終らせることが出来る、そう思っていました。

処理中です...