893 / 911
38 記憶 side 陸
3
しおりを挟む
朝の目覚めは良い方だ。
今朝も、薄暗い部屋で目が冴え渡る。
それも、恋愛給餌特化型の欲を満たすために、早朝バイトをしてたからだな。
まぁ、そんときの三時半起きよか遅い時間だろうが。
渡がカッキーとわかって、バイトのシフトをさっさと外して貰ったんだが、実家じゃ千里さんが朝稽古をつけてやると五時から道場に呼び出されていた。
親父がいねぇと、エネルギー持て余すからな、あの人。
スヤスヤと規則正しい寝息を繰り返す渡の横顔を眺め、起こさねぇように布団から静かに出る。
充電していたスマホを確認すると、まだ五時前。
従姉妹の岬から、『リックリク、早く写真送れっ』と何度も似たようなメッセージが入っていた。
仕方ねぇなと、ライト無しの、画面上では輪郭しかわからねぇ寝顔を送っとく。
まだ番にしてねぇのに、誰が見せるかよ。
無いとは思うが、岬に渡を掛けて決闘申し込まれるようなことになったら、俺じゃ勝てねぇしな。
俺の性格を熟知してる岬から、即『焦らすわねっ、この幸せ者めっ』と返信が入る。
この時間に起きてるってことは、どうやら、今朝のシフトに入ってんだろう。
俺が抜けたとこは、海や空が請け負ってくれてる筈だ。
アイツらと岬は仲良ぃからな。
ぜってぇ、いらんこと話してんだろうなぁ。
岬には、実際のとこ世話になってるし、番になったら渡の写真を送るとするか。
中等部んとき、俺と寝た女子αが勝手に争い出して、めんどくせぇと放置してた俺の後始末を岬が見るに見かねてやってくれてんだ。
こっちは基本断れねぇし、菊川の分まで引き受けるしかなかったんだが、その後は岬のお陰で積極的に俺指名で誘ってくる数が減って松野と竹居に流れた。
逆に岬は、俺と岬を昔からくっつけようとしていた自分の孕親から「やっとそんな関係になったのねっっ」と歓喜歓待。
誤解が解けるまで、かんなり辟易した毎日を送ったらしい。
すげぇなげぇこと、愚痴聞かされたっけ。
岬の孕親の六花さんは、元々親父の番になりたかったらしく、叶わなかった夢を一人娘に託してんだよなぁ。
男でなおかつ見た目が一番親父に近い俺に、娘を顔合わすたんびに勧めて来てさ。
それを千里さんが止めに入んのは、親戚が集まる場じゃお約束みてぇになってたくれぇだ。
お互い、んな気持ちになりようがねぇから無理だっつーのに聞く耳もたねぇし、まぁ、渡のことを紹介したら諦めんだろう。
身支度を整え、朝食の準備の前に抑制剤を適量飲み、点鼻薬も忘れずスプレー。
重複服用の副作用で若干倦怠感は出るが、渡に襲いかかるよか全然良い。
けどなぁ。
これで確かに発情フェロモンで煽られることはねぇんだが、初めてを覚えておきたいとか言ってくるエロ天の煽りは防げねぇんだよな。
ついニヤつく口元に手をやる。
予想外なことばっかしてくる渡に振り回されてんのも、俺を浮かれさす材料にしかなんねぇ。
今朝も、薄暗い部屋で目が冴え渡る。
それも、恋愛給餌特化型の欲を満たすために、早朝バイトをしてたからだな。
まぁ、そんときの三時半起きよか遅い時間だろうが。
渡がカッキーとわかって、バイトのシフトをさっさと外して貰ったんだが、実家じゃ千里さんが朝稽古をつけてやると五時から道場に呼び出されていた。
親父がいねぇと、エネルギー持て余すからな、あの人。
スヤスヤと規則正しい寝息を繰り返す渡の横顔を眺め、起こさねぇように布団から静かに出る。
充電していたスマホを確認すると、まだ五時前。
従姉妹の岬から、『リックリク、早く写真送れっ』と何度も似たようなメッセージが入っていた。
仕方ねぇなと、ライト無しの、画面上では輪郭しかわからねぇ寝顔を送っとく。
まだ番にしてねぇのに、誰が見せるかよ。
無いとは思うが、岬に渡を掛けて決闘申し込まれるようなことになったら、俺じゃ勝てねぇしな。
俺の性格を熟知してる岬から、即『焦らすわねっ、この幸せ者めっ』と返信が入る。
この時間に起きてるってことは、どうやら、今朝のシフトに入ってんだろう。
俺が抜けたとこは、海や空が請け負ってくれてる筈だ。
アイツらと岬は仲良ぃからな。
ぜってぇ、いらんこと話してんだろうなぁ。
岬には、実際のとこ世話になってるし、番になったら渡の写真を送るとするか。
中等部んとき、俺と寝た女子αが勝手に争い出して、めんどくせぇと放置してた俺の後始末を岬が見るに見かねてやってくれてんだ。
こっちは基本断れねぇし、菊川の分まで引き受けるしかなかったんだが、その後は岬のお陰で積極的に俺指名で誘ってくる数が減って松野と竹居に流れた。
逆に岬は、俺と岬を昔からくっつけようとしていた自分の孕親から「やっとそんな関係になったのねっっ」と歓喜歓待。
誤解が解けるまで、かんなり辟易した毎日を送ったらしい。
すげぇなげぇこと、愚痴聞かされたっけ。
岬の孕親の六花さんは、元々親父の番になりたかったらしく、叶わなかった夢を一人娘に託してんだよなぁ。
男でなおかつ見た目が一番親父に近い俺に、娘を顔合わすたんびに勧めて来てさ。
それを千里さんが止めに入んのは、親戚が集まる場じゃお約束みてぇになってたくれぇだ。
お互い、んな気持ちになりようがねぇから無理だっつーのに聞く耳もたねぇし、まぁ、渡のことを紹介したら諦めんだろう。
身支度を整え、朝食の準備の前に抑制剤を適量飲み、点鼻薬も忘れずスプレー。
重複服用の副作用で若干倦怠感は出るが、渡に襲いかかるよか全然良い。
けどなぁ。
これで確かに発情フェロモンで煽られることはねぇんだが、初めてを覚えておきたいとか言ってくるエロ天の煽りは防げねぇんだよな。
ついニヤつく口元に手をやる。
予想外なことばっかしてくる渡に振り回されてんのも、俺を浮かれさす材料にしかなんねぇ。
0
お気に入りに追加
1,442
あなたにおすすめの小説


男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭

番に囲われ逃げられない
ネコフク
BL
高校の入学と同時に入寮した部屋へ一歩踏み出したら目の前に笑顔の綺麗な同室人がいてあれよあれよという間にベッドへ押し倒され即挿入!俺Ωなのに同室人で学校の理事長の息子である颯人と一緒にα寮で生活する事に。「ヒートが来たら噛むから」と宣言され有言実行され番に。そんなヤベェ奴に捕まったΩとヤベェαのちょっとしたお話。
結局現状を受け入れている受けとどこまでも囲い込もうとする攻めです。オメガバース。
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる