ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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38 記憶 side 陸

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朝の目覚めは良い方だ。
今朝も、薄暗い部屋で目が冴え渡る。
それも、恋愛給餌特化型の欲を満たすために、早朝バイトをしてたからだな。
まぁ、そんときの三時半起きよか遅い時間だろうが。
渡がカッキーとわかって、バイトのシフトをさっさと外して貰ったんだが、実家じゃ千里さんが朝稽古をつけてやると五時から道場に呼び出されていた。
親父がいねぇと、エネルギー持て余すからな、あの人。

スヤスヤと規則正しい寝息を繰り返す渡の横顔を眺め、起こさねぇように布団から静かに出る。
充電していたスマホを確認すると、まだ五時前。
従姉妹の岬から、『リックリク、早く写真送れっ』と何度も似たようなメッセージが入っていた。
仕方ねぇなと、ライト無しの、画面上では輪郭しかわからねぇ寝顔を送っとく。

まだ番にしてねぇのに、誰が見せるかよ。
無いとは思うが、岬に渡を掛けて決闘申し込まれるようなことになったら、俺じゃ勝てねぇしな。
俺の性格を熟知してる岬から、即『焦らすわねっ、この幸せ者めっ』と返信が入る。
この時間に起きてるってことは、どうやら、今朝のシフトに入ってんだろう。
俺が抜けたとこは、海や空が請け負ってくれてる筈だ。
アイツらと岬は仲良ぃからな。
ぜってぇ、いらんこと話してんだろうなぁ。

岬には、実際のとこ世話になってるし、番になったら渡の写真を送るとするか。
中等部んとき、俺と寝た女子αが勝手に争い出して、めんどくせぇと放置してた俺の後始末を岬が見るに見かねてやってくれてんだ。
こっちは基本断れねぇし、菊川の分まで引き受けるしかなかったんだが、その後は岬のお陰で積極的に俺指名で誘ってくる数が減って松野と竹居に流れた。

逆に岬は、俺と岬を昔からくっつけようとしていた自分の孕親から「やっとそんな関係になったのねっっ」と歓喜歓待。
誤解が解けるまで、かんなり辟易した毎日を送ったらしい。
すげぇなげぇこと、愚痴聞かされたっけ。

岬の孕親の六花さんは、元々親父の番になりたかったらしく、叶わなかった夢を一人娘に託してんだよなぁ。
男でなおかつ見た目が一番親父に近い俺に、娘を顔合わすたんびに勧めて来てさ。
それを千里さんが止めに入んのは、親戚が集まる場じゃお約束みてぇになってたくれぇだ。

お互い、んな気持ちになりようがねぇから無理だっつーのに聞く耳もたねぇし、まぁ、渡のことを紹介したら諦めんだろう。

身支度を整え、朝食の準備の前に抑制剤を適量飲み、点鼻薬も忘れずスプレー。
重複服用の副作用で若干倦怠感は出るが、渡に襲いかかるよか全然良い。
けどなぁ。
これで確かに発情フェロモンで煽られることはねぇんだが、初めてを覚えておきたいとか言ってくるエロ天の煽りは防げねぇんだよな。

ついニヤつく口元に手をやる。
予想外なことばっかしてくる渡に振り回されてんのも、俺を浮かれさす材料にしかなんねぇ。
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