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37 牙 side 渡

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木の近くでもたくさん写真撮って、資料集めは順調、順調。
木の根本に座って休憩してるときに、ここであったことも陸に聞けた。
「ここが俺と陸の運命の場所やな」って言ったときの陸の驚いた顔。
なんやろ、めっちゃこぉ無防備で初めて見る顔やったんやけど可愛かったなぁ。

ふふっ、でな。
陸がチョコレートが好きなん、俺と思い出の味やからやってことがわかってズッキュン胸を撃ち抜かれてしもた。
陸とここにおる間に、俺キュン死にするんちゃうやろかっ
うわぁ、もぉ、ほんまになんで俺覚えてないんやろぉっっ
よし、このエピソードは入れるべきやなっ

ん、でもちょっと待って。
陸がチョコレート好きなん大々的にわかってしもたら、バレンタインにいっぱい貰うようになるんちゃうん?!
ついさっきまで好きになったきっかけを聞いて目を輝かせてた俺が、急に服の裾掴んで「今年のバレンタインは、俺がおっきいの作るから他の人から貰わんといてなっ」ってお願いしだしたら、「は?」って平らな目されたわ。

うっ、それはそうやんな。
まだ10月やもん。
ずっと先の話やし、付き合い始めたとこやのに嫉妬メラメラで重いって思われたんやわ。
過去の自分にもメラメラやから、そこは否定は出来へんな。
んー、『計画』の内容はまだどうなるかわからへんし秘密にしときたい。
ここは、取ってつけた言い訳でなんとか凌ぐしかないっ


「え、だって、ほら、陸、学園祭でめっちゃ格好良かったやん?
チョコレート、去年より増えそうやねんもん」

「何言ってんだ。
去年貰ってたのは、お前だろう。
つーか、食べものに関しちゃ、俺の方が狭量だ。
俺がお前にΩなんだからとかアレコレ言える立場じゃねぇし、極力βと同じ生き方はして欲しいが、だ。
俺の前で他の人間から、いや、渡に好意を持ってるヤツから食い物貰ったり、手作りの食べ物を渡したりすんのはナシで頼む」


頼むって言葉やのにギロッと睨まれて、その目が研ぎ澄まされた刃みたいに迫力あったから息のんでしもたわ。
でもな。
直ぐに、千里さんから言われてたことを思い出して「ヘヘヘ」と笑ってしもてた。
陸には、冷たい目を向けられて、顔を両手で挟まれた上にほっぺをふにふにされたわ。
陸、俺の頬触るん好きなんやろか?
触り心地がえぇほど、俺太ってる?


「あのなぁ・・・笑いごとじゃねぇからな?」

「うんうん、わかってる。
ちゃんと千里さんから聞いてるで。
笹部家のαにとっての食べ物は、ラブレターに置き換えて考えたら理解しやすいって。
俺、陸と付き合ってるから他の人にラブレター貰っても受け取らへんし大丈夫やで。
クリスマスもバレンタインも、陸以外からは食べ物は貰わへんよ」

「それは有難ぇが、急にゼロッてのは無理だろうし、俺の血で渡を雁字搦めに縛り付けてぇわけじゃねぇんだ・・・家族と、あとかなちゃんや樟葉なら我慢出来るし、見てないとこじゃ自由にやってくれていい」


頬から手が離れて、「そろそろ帰るか」って陸は立ち上がった。
陸はそんなふうに言うてくれたけど、食べ物関連は千里さんから本当に気を付けておかないとヤバい目に合うって言われてたしなぁ。

・・・あ!
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