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37 牙 side 渡

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俺は陸の手を離して、早速スマホを構えて撮影開始。
近くまで歩いたらまた撮るけど、全体像もあった方がえぇやろう。
さっきの秘密の場所は、ふたりの秘密のままにしときたいし撮らへんかったけどな。
ここは誰でも歩いて来れるとこやし、撮っても問題無いもんな。

俺は、川を出来るだけ見んようにしてビシバシ大きな木を撮影した。
でも、いろんなアングルがあった方がえぇやろうし川と木のショットを避けては通れへんし。
苦肉の策で、適当に手をそっちに向けて連射。
これでなんとか撮れてへんかな。

流れてる川があかんだけで、静止画やったら怖ないし再生して確認・・・うわぁ、全然うまく撮れてへん。
川面アップとか、木と空とか、こんなんあかんわ。
ガッカリしてたら、陸が「俺が撮ってやろうか?」って言ってくれた。
優しいなぁ。
お言葉に甘えて、上手いこと川と木が収まるように撮影をお願いしたわ。

陸は撮り終わると、スマホを返しながら不思議そうに尋ねてきた。


「村を案内してたときも景色を撮ってたが、こんな景色ばっか撮ってどーすんだ?
親に見せるなら、お前も入った方がいいんじゃねぇの?」

「あ・・・おかんとおとんに見せる分まで考えて無かったわっ」


ほんまやんっ
おかんとおとんに見せるなら、俺が元気で楽しんでんの撮っといた方が良かったわ!
それに、村を回ってる時やったら、住んでる人に俺と陸のツーショットもお願い出来たのにっ
惜しいことしたっ
陸、明日も村を一緒に歩いてくれるやろか。
案内済んだし、一人で行けるやろって言われへんかなぁ。
あかん、一つのことに集中してしまうと、他のことまで気が回らへん。
特に、これはめっちゃ大事なことやし。


「は?
それじゃ、なんのために撮ってんだよ?」

「資料にするためやで」


俺の『作戦』を遂行するための重要な資料。
俺の話だけでイメージ膨らまして貰うのには限界があるしな。
写真で実際の現場を伝えんと、頼んでも難しいって断られるかもしれへん。


「資料?」

「詳しくは、上手く行きそうやってわかってから教えるな。
近くでも撮影したいし、はよ行こっ
あの木の下で、俺と陸が雨宿りしてたんやろ?
お礼もせなあかんな」


益々不思議がってる陸の手を掴んで歩き出す。
この『作戦』、上手く行く自信はあるんやけど相手次第やしな。
ここにいる間は連絡したらあかんし、急なお願いになってしまうから断られてしまう可能性もあるねんなぁ。
断られたら、俺が頑張ってみようかな。
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