ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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30 学園祭 side 陸

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一応、禁止されてる攻撃フェロモンは出してねぇが、なんでそんなに怒ってるんだ?
背中からでも、稲葉への敵意が透けて見える。
廊下を騒がしたが、教室からわざわざ乗り出してくるほどでもねぇだろう。

目の前にいるのも怪しむ美形の登場に、居合わせていた生徒も来校者も見惚れて動けない。
野次馬が増えるばっかで、収集がつかねぇし、生徒会としてペナルティーを確定してんのにこれ以上追加されたら菊川の立つ背も無くなる。

あー、話しかけたくねぇ。
関わりたくねぇ。

けど、そう言うわけにもいかねえし。


「菊川の、兄貴、だよな?」

「あ"ぁ"?」


行動を遮ろうとする俺を、邪魔だと睨みつけてくる菊川の兄貴。
頬についた青色のやっすいキスマークシールでさえ、メイクみてぇに馴染んでる。
ここまで整ってると、何してもプラス効果になるんだな。

はぁ。
足は止まったが、止まったが、だ。
あー、コレって話が通じんのか?
菊川からは、あまり仲良くねぇとしか聞いて無かったしなぁ。
菊川のような緩さがねぇのは、僅かな時間でも十分わかった。
俺の呼びかけに反応するってことは、取り付くしまもねぇわけじゃ・・・無いんだよな?


「・・・菊川の下にいる笹部です。
生徒会役員も一緒にしています」

「・・・」



清人さんの仄暗く、冷たい雰囲気に押され、言葉が喉でつっかえそうになった。
なんとか振り絞ったが、頭が回らず倭人さんと言うべきところをいつもの調子で菊川と言ってしまう。

「だから、なんだ」と俺を見る目が無言で問いかけてくる。
今の俺の言い間違いには興味すら無いようだ。
怯えた稲葉を見て、苛立ちは多少収まったのか?
底無し沼みてぇな真っ黒の目には、怒りや苛立ちもねぇな。


「生徒会から、ソレにはペナルティーを既に科したので、手荒なことは止めて欲しい」

「退場、だったか?
そんなことで、コレは躾けられるのか?
万一、俺のハルに向けられていたら、縊るどころじゃ済まなかったぞ」


腕を組み、俺を見下ろす菊川の兄貴。
フェロモン無しのプレッシャーがジワジワ締め付けてくるみてぇで息苦しい。

つーか、教室ん中を自分のフェロモンで密封しといて、締め切った扉のこっち側にまで気を配ってたのかよ。
この人にそうまでさせるハルって一体・・・

所有フェロモンまみれの教室にも、この騒ぎは当然伝わっている。
何人かが、開けっ放しの扉から顔を出してこっちを見に来てたんだが。
「ごめん~、通してぇ」と、その山を縫って三枝ともう一人が顔を出した。
三枝と、どんな顔で会えば良いのかわからねぇ。
視線はもう一人に自然と流れた。

黒目黒髪のどこにでもいそうなβ、いや、Ωか。
ふっくら膨らむお腹を庇うように手を添えているってことは妊娠してんのか?
異様なのは、その周りのフェロモンだ。
所有フェロモンの瓶詰め。
そのフェロモンの域に入っている三枝の姿も歪んで見える。
集中していた菊川の兄貴への対応から、完全に気が逸れていた。
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