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30 学園祭 side 陸
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帯の無い薄紫色の二部式着物。
和風喫茶に合わせて、女子生徒の分だけレンタルしたとか言ってたな。
結い上げた髪には、ガラス細工の紅葉の簪を挿し、いつもより余計に濃い化粧で稲葉は微笑む。
廊下には匂いが欠片も残ってなかったから良いものの、やたらと臭え身体を近づけてくんじゃねぇよ。
この向こうに俺のΩか、その残り香がある筈だ。
お前の匂いが邪魔になる。
さっさとここを離れろっ
扉に伸ばした腕を当然のように組まれ、苛立ち任せに振り払った。
倒れはしないが、その場でよろめく稲葉。
明確な拒絶に驚くよりも、状況を理解した顔が怒りでみるみる赤くなる。
人前で恥をかかされたことに、プライドが傷付いたらしい。
どうもコイツは勘違いしてやがる。
三組を掌握しているのは俺だが、それは諍いを未然に抑える為の縛りを与える程度。
元々ファミリータイプの俺には、クラスをまとめてどうこうする気もねぇ。
だが、この一度相手をしただけの稲葉は、その俺に特別扱いをされていると勘違いして増長してやがる。
今じゃ、クラスの女帝気取りだ。
「な、何するのよ?!」
「それはこっちのセリフだ。
イチイチ干渉してくるんじゃねぇよ」
覚悟を簡単に崩され、イライラする。
ここでフェロモンを放てば、こんなヤツ、簡単に狩れるが。
んなことをすれば、俺のΩの発情フェロモンは呑まれて匂いが辿れなくなるだろう。
睨むだけで済ませてやるんだ。
とっとと失せろ。
障害と見做した稲葉を、冷たく突き放す。
稲葉は、普段と明らかに違う俺の様子に一瞬怯んだが。
周りから注目され始めたこの状況で、尻尾を丸めて逃げる気はないらしい。
体勢を立て直すと、ゆらりと攻撃フェロモンをちらつかせてくる。
「私にそんな態度をとっても良いの?
笹部の代わりに仕切ってきたのは私よ?」
「だからなんだよ」
学園祭が近付くにつれてやたらと絡んできていたが、俺の片腕にでもなったつもりだったのか?
だいたい、お前はなんもしてねーだろう。
あの熱血教師が気にして、なんだかんだとフォローを入れていたのを見てる。
「あ、あのぉ、ここ、入口・・・」
「煩いわねっ、β風情がっ」
稲葉は話しかけてきたメガネ女子を睨みつけ、そのままフェロモンをぶつけようとしやがったっ
アホかっ
正当なβの言い分に、感情任せに何してんだっ
ここで騒ぎを起こすんじゃねぇよっ
菊川にも直々に言われてんのに、騒ぎの渦中に俺がいたとか、ぜっってぇヤベェわっ
メガネ女子を引き寄せ、フェロモンの射程からずらす。
目の前で胸に庇った俺に、益々稲葉がブチ切れた。
「私をコケにするつもり?!」
元から眼中にねぇよ。
俺のΩがこの近くにいんのは確実なんだ。
さっさとどきやがれ。
和風喫茶に合わせて、女子生徒の分だけレンタルしたとか言ってたな。
結い上げた髪には、ガラス細工の紅葉の簪を挿し、いつもより余計に濃い化粧で稲葉は微笑む。
廊下には匂いが欠片も残ってなかったから良いものの、やたらと臭え身体を近づけてくんじゃねぇよ。
この向こうに俺のΩか、その残り香がある筈だ。
お前の匂いが邪魔になる。
さっさとここを離れろっ
扉に伸ばした腕を当然のように組まれ、苛立ち任せに振り払った。
倒れはしないが、その場でよろめく稲葉。
明確な拒絶に驚くよりも、状況を理解した顔が怒りでみるみる赤くなる。
人前で恥をかかされたことに、プライドが傷付いたらしい。
どうもコイツは勘違いしてやがる。
三組を掌握しているのは俺だが、それは諍いを未然に抑える為の縛りを与える程度。
元々ファミリータイプの俺には、クラスをまとめてどうこうする気もねぇ。
だが、この一度相手をしただけの稲葉は、その俺に特別扱いをされていると勘違いして増長してやがる。
今じゃ、クラスの女帝気取りだ。
「な、何するのよ?!」
「それはこっちのセリフだ。
イチイチ干渉してくるんじゃねぇよ」
覚悟を簡単に崩され、イライラする。
ここでフェロモンを放てば、こんなヤツ、簡単に狩れるが。
んなことをすれば、俺のΩの発情フェロモンは呑まれて匂いが辿れなくなるだろう。
睨むだけで済ませてやるんだ。
とっとと失せろ。
障害と見做した稲葉を、冷たく突き放す。
稲葉は、普段と明らかに違う俺の様子に一瞬怯んだが。
周りから注目され始めたこの状況で、尻尾を丸めて逃げる気はないらしい。
体勢を立て直すと、ゆらりと攻撃フェロモンをちらつかせてくる。
「私にそんな態度をとっても良いの?
笹部の代わりに仕切ってきたのは私よ?」
「だからなんだよ」
学園祭が近付くにつれてやたらと絡んできていたが、俺の片腕にでもなったつもりだったのか?
だいたい、お前はなんもしてねーだろう。
あの熱血教師が気にして、なんだかんだとフォローを入れていたのを見てる。
「あ、あのぉ、ここ、入口・・・」
「煩いわねっ、β風情がっ」
稲葉は話しかけてきたメガネ女子を睨みつけ、そのままフェロモンをぶつけようとしやがったっ
アホかっ
正当なβの言い分に、感情任せに何してんだっ
ここで騒ぎを起こすんじゃねぇよっ
菊川にも直々に言われてんのに、騒ぎの渦中に俺がいたとか、ぜっってぇヤベェわっ
メガネ女子を引き寄せ、フェロモンの射程からずらす。
目の前で胸に庇った俺に、益々稲葉がブチ切れた。
「私をコケにするつもり?!」
元から眼中にねぇよ。
俺のΩがこの近くにいんのは確実なんだ。
さっさとどきやがれ。
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