ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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26 体育祭 side 翔

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「カケルンの出番は、いっっっちばん最後だし、三枝先輩見放題だねっ」

「お陰さまで」


三白眼を細めからかわれても、淡々と返しておく。
求めていた反応ではなかったらしく、「海ちゃん、つまんなぁーい」と唇を尖らせ俺からグラウンドへ視線を流した。
下手に照れても、海にからかわれるネタが増えるだけだと悟ってからは、この対応が板についてきた。
他のαのように変わり者だと遠巻きにしたり、侮蔑の目を向けてくることはない分その距離の取り方に遠慮がない。
「なんで、なんで」「どうして、どうして」と、βに執着する理由を根掘り葉掘り教室で聞き出そうとしてきたからな。
周りがざわつこうが気にしない。
なんというか・・・俺が本気を出しても敵わないαなんだが、その姿は好奇心にかられた小学生の妹と変わらなかった。
それもあって、海もマウンティングをしてこないし、自分より上位のαでもそれほど緊張もせず話は出来る。

双子の妹、空と一緒にいるときは、若干おっとりして見えるが。
単体だと若干は無いも同然で、それ以上に取扱注意のレッテルが隙間なく貼られる。
二人でいれば互いに話して盛り上がって済む話でも、一人だと誰かに話を振ろうとして周りを巻き込んでくるんだ。
授業中以外、大人しくじっとしていることが苦痛なのかと思うくらいに、誰彼構わず話し掛ける。
同じクラスのβは、海のようなαからあまりに気安く絡まれ、威圧されたわけじゃないのに緊張のあまり失神。
保健室まで運ばれた実績が、一件、二件じゃない。
しかも、空も自分のクラスで同じことをやらかしていたらしい。
自分達の実力を把握していても、それが普通の状態で特に周りのβへどれくらい影響を与えるかまでまだわかってなかった一学期の話だ。

高等部からの編入組にしては、珍しくバース性に偏見はないようだが。
一年生の間では、脅威の双璧としてすっかり有名になっていた。

この双子、フレンドリーな分本当に手に終えない。
好意のごり押しがすごいからな。
今回の体育祭も、「やるからには、皆で頑張ろうねっ」と言い出した教師の言葉を引き継ぎ、クラスをまとめて動かしている。
本人には、全く悪気はないが、体育の苦手なβは負けたら何かされるのではないかと当日まで怯えていたしな。

来月から生徒会役員にもなるようだし、次期副生徒会長の田栗 誉や、芸能活動をしている芝浦 凛に並んで学園全体で有名にはなるのは間違いない。
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