ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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26 体育祭 side 翔

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体育祭二日目の種目で割り振られる人数は、クラス解体を見越し最初のクラス単位より10人ほど多い設定になっている。
その中には、学年別クラス代表リレーがあり、これだけバース性の区別がつけられ選抜される5名の内2名までα枠があった。
一人1種目出ていれば、残りは一人2種目までの重複で補うことになるけれど、昨日の球技と違ってクラス代表リレー以外はポイント加算されない。
どのクラスも、ついつい熱くなって応援にも力が入る体育祭最後のプログラムだ。

足に自信がある生徒は、自薦他薦でそこに入ろうとする注目種目、のはずが。
俺のクラスは、やる気満々な海が取り仕切っていたから一番時間がかかった。
万一最下位とか、海の機嫌を損ねる結果になったら何かされるかもしれないと勝手に怯え、譲り合いというか擦り付けあい。
「野球部だし早かったよな」「体力測定のタイムならお前だろう」「いやいや、俺なんて・・・」

結果、困った担任が足が早くてバトンのタイミングが合いそうなメンバーを抽出。
この種目に出る生徒は、専属で他は出なくて良いし、負けても全力で取り組む過程が大事なんだと主に海に言い聞かせるように説明していた。
俺は、アンカーの海に繋げる四番走者。
すっかり、担任にまで俺は海のお守り係にされている気がするなぁ・・・ゲフッ


「聞いてぇっ、海ちゃーーーん!」


突如、後方から俺と海の間に頭が突っ込んで来た。
勢いよく身体を押され、上半身が折れる。


「うぐっ、ちょっ、空ちゃん、どうしたの???」

「兄ぃが、兄ぃが、また怒ってるよぉぉぉ」


俺と海の肩に腕を回し、肺の空気を絞り出すような溜め息をついたのは海と胸以外そっくりな空だった。
いつも余裕たっぷりな笑顔は欠片もない。
虚ろな目で海を見上げ、もう一度溜め息。
クラスメートは、この異常事態を見ないふり。
そーっと席を立ち、どこかへ去っていく。

完全に、出遅れた・・・


「え、またぁ・・・最近、ご機嫌悪いなぁ」

「なんかね、なんかね、見付けたから挨拶しようとしたのにさぁ~
睨んで寄せ付けないんだもーん」


海は、よしよしと落ち込んでいる空の頭を撫でて慰める。
笹部先輩はどうかわからないけれど、この勇ましく逞しく周りを巻き込む脅威の双璧がブラコンであることは間違いない。
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