ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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22 夏休み side 命

2

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「いやー、もぉ、みこちゃんすごいっっ」


下駄箱の並んだ玄関から外に出たら、階段の下から感極まった三枝君が走ってきてそのままの勢いで抱き締められた。
顔だけ離して、身体を密着させたまま興奮しながらさっきの舞について熱く語ってくれる三枝君。
三枝君こそ凄い。
三枝君の側にいると、自然と笑顔になれる。
甚平姿の三枝君の後ろには、浴衣姿のかなちゃんと菊川君。
普段と変わらない洋服のけぇちゃんと竹居くんもいた。


「フフフ、皆来てくれたんだねぇ」

「松野君も来てんねんけど、さっき一緒に来てた麻野君が迷子になってもーて探しに行っててな。
笹部君は、バイトで来れへんかってん。
あと、芝浦君も!
仕事らしぃけど、芝浦君こそ来なあかんやんなぁっ
番のみこちゃんの晴れ舞台やでっっ」


プリプリ怒る三枝君。
番をβ同士の恋人よりも、もっともっと強くて甘い関係だと誤解したままなんだなぁ。
夏休み直前に自分が変異種Ωだと分かったばかりなのに、そのことに傷付いた素振りも見せないし僕達の前だと全然変わらない。

強いなぁ。


「たぁちゃんは、忙しいからねぇ」


たぁちゃんは、忙しい。
忙しいし、忙しくなくても来れない理由がある。
最後の神子だった僕が、もうそのお役目から解放されていること。
これは、祖神様の直属臣下の末裔である御三家にも承認されていたことだったんだけどね。

番を得るまでは諦めず、最後まで僕を神子として終わらせたかった一派。
あわよくば、僕を代わりに得ようとしていた一派。

反目するαの共通の標的だからね。
関係者が紛れ込んでいる御珠神社には来れないよ。
難癖をつけられるかもしれないし、イヤミなら山程言いそうな人ばかりだからね。

たぁちゃんには、本当に・・・本当に悪いことをしてしまった。
そんな僕の翳った表情を、けぇちゃんは見逃してくれない。
皆で屋台が並ぶ参道に向かって歩き始めたら、「大丈夫ですか」と心配されてしまった。


「フフフ、大丈夫だよぉ」


絶対に作り笑いってバレてしまうけど。
作り笑いでも、笑っていれば楽しくなるんだよ?
だから僕は、大丈夫だよ。
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