ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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22 夏休み side 命

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参道を歩いて鳥居の外に出ると、人波がわっと押し寄せて見えるくらいに賑わっていた。
最寄り駅まで道の両側にはずらっと屋台が並んでいて、交通規制で今夜は歩行者天国になっているんだ。

近隣の皆さんは、今年も快く御珠神社の夏祭りに協力して下さっている。
この辺りは景観保護区でもあるから、木造の家屋が並んでいて、軒先には灯りの点った提灯が下がっている。
今は電気に変わったけど、昔は蝋燭の灯りがゆらゆらと足下を照らしていた。

舞殿で踊っていたときも、周りを何重にも囲まれて凄い人だなぁと思っていたけど。
家族連れで楽しそうに話をしていたり、仲良く綿菓子を分けて食べてるデート中のカップルもいる。
α限定参加のお祭りだったときは、屋台も出なくて、灯りが点った道はただただ静まり返っていたんだ。

去年まで、境内をけぇちゃんと回っていただけだったからここまで出てきたのは初めて。
キョロキョロ見すぎて、後ろにひっくり返りそうになっちゃったよ。


「みこ、気を付けてください」

「フフフ、ありがとぅ」


けぇちゃんが背中を支えてくれたから、頭をぶつけなくて済んだよ。
お礼を言いながら、でも、目はどうしてもキョロキョロしてしまう。

嬉しいなぁ。

ずっとαの参拝に限定していた閉ざされた御珠神社が、こんなに開けた場所になるなんて。
この国をひとつの群れとしてまとめたαの始祖である祖神様もビックリだよね。


「みこちゃん、みこちゃん、なんか食べへん?」

「食べたぃ」


前を歩いていた三枝君に頷くと、隣に来て当たり前のように手を引いてくれる。
今夜は友達と回りたいって話したら、孕上からお小遣いまで貰えたんだ。
けぇちゃんもいるし、それに菊川君もいるから大丈夫だろうって。

勿論、警備員の人には、僕が誰かに絡まれるようなことがあれば最優先でその場から安全な社務所まで逃がすように通達されてる。
今日は御祈祷もお休みだから、父上が社務所に待機してるし。
受験勉強中の忙しい姉上も、巫女姿で今夜は授与所にいる。
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